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 東京地裁平成13年10月03日判決

   〔小田急線連続立体交差(高架化)事業認可取消訴訟/第一審〕


 平成6年(行ウ)第208号・第288号、小田急線連続立体交差事業認可処分取消請求事件(208号)・事業認可処分取消請求事件(288号)
 一部認容、一部却下(控訴)
   
控訴審→東京高等裁判所平成15年12月18日判決
   
上告審→最高裁判所(大)平成17年12月07日判決(平成16年(行ヒ)第114号)
  
原告 甲事件原告 《甲1》ほか8名・甲事件原告 《甲2》ほか107名、乙事件原告 《甲3》ほか5名 原告ら訴訟代理人弁護士 斉藤驍 ほか13名
  被告 建設大臣訴訟承継人甲事件及び乙事件被告 関東地方整備局長《乙1》  同指定代理人 畠山稔 ほか21名
  参加人 東京都知事《乙2》  同指定代理人 中村次良 ほか5名

 訟務月報48巻10号2437頁、判例タイムズ1074号91頁、判例地方自治219号13頁


 主 文
 1 別紙原告目録1記載の各原告の訴えに基づき、建設大臣が平成6年6月3日付けで施行者である東京都に対してした別紙事業目録1ないし7記載の各事業の認可をいずれも取り消す。
 2 別紙原告目録2記載の各原告の訴えをいずれも却下する。
 3 訴訟費用のうち、別紙原告目録1記載の原告らと被告及び参加人との間に生じた部分は、参加によって生じた部分を参加人の負担とし、その余を被告の負担とし、別紙原告目録2記載の原告らと被告及び参加人との間に生じた部分は同原告らの負担とする。


 事実及び理由
 (略称)以下においては、次のとおり、各事項につき略称を用いる。<略>
 第1 申立て
 1 原告ら
 (1)建設大臣が平成6年6月3日付けで施行者である東京都に対してした別紙事業目録1ないし7記載の各事業の認可をいずれも取り消す。
 (2)訴訟費用は被告の負担とする。
 2 被告
 (1)本案前の答弁
 ア 原告らの本件鉄道事業認可の取消請求に係る訴えをいずれも却下する。
 イ 原告らの本件付属街路第3号線事業認可、本件付属街路第4号線事業認可及び本件付属街路第6号線事業認可の各取消請求に係る訴えをいずれも却下する。
 ウ 原告《甲4》を除く原告らの、本件付属街路第5号線事業認可の取消請求に係る訴えをいずれも却下する。
 エ 原告《甲5》を除く原告らの、本件付属街路第9号線事業認可の取消請求に係る訴えをいずれも却下する。
 オ 原告《甲6》、同《甲7》、同《甲8》、同《甲9》及び同《甲10》を除く原告らの本件付属街路第10号線事業認可の取消請求に係る訴えをいずれも却下する。
 カ 訴訟費用のうち上記訴えの却下にかかる部分については、原告らの負担とする。
 (2)本案の答弁
 ア 原告らの請求をいずれも棄却する。
 イ 訴訟費用は原告らの負担とする。

 第2 事案の概要
 本件は、小田急小田原線の喜多見駅付近から梅ヶ丘駅付近までの線増連続立体交差事業に関し、沿線住民である原告らが、事業の方式につき優れた代替案である地下式を理由もなく不採用とし、その結果原告らに甚大な被害を与える高架式で同事業を実施しようとする点で、同事業の前提となる都市計画決定の事業方式の選定には違法がある等と主張し、被告に対し、当時の建設大臣が都市計画法59条2項に基づいて都市計画事業の施行者である東京都に対してした本件各認可の取消しを求めた事案である。
 1 都市計画法の変遷
 (1)昭和43年に廃止される前の旧都市計画法(大正8年法律第36号。以下「旧法」という。)1条は、都市計画の定義として、「本法ニ於テ都市計画ト称スルハ交通、衛生、保安、防空、経済等ニ関シ永久ニ公共ノ安寧ヲ維持シ又ハ福利ヲ増進スル為ノ重要施設ノ計画ニシテ市若ハ主務大臣ノ指定スル町内ノ区域内ニ於テ又ハ其ノ区域外ニ亙リ施行スヘキモノヲ謂ウ」と定め、3条は、「都市計画、都市計画事業及毎年度執行スヘキ都市計画事業ハ都市計画審議会ノ議ヲ経テ主務大臣之ヲ決定シ内閣ノ認可ヲ受クヘシ」と規定し、都市計画決定の手続的要件を定めていた。
 (2)昭和43年6月15日、新たに都市計画法(昭和43年法律第100号。ただし、以下においては、特に断らない限り、本件各認可当時に施行されていた、平成5年11月12日法律第89号による改正前のものをいい、これを、単に「法」と略称する。)が制定され、附則2項により旧法が廃止されるとともに、法附則10項により必要な経過措置について定めた都市計画法施行法(昭和43年法律第101号)2条は、法の施行の際、現に旧法の規定により決定されている都市計画区域及び都市計画は、それぞれ法の規定による都市計画区域又は法の規定による相当の都市計画とみなす旨規定している。
 2 前提事実
 (以下の事実は、括弧内に認定根拠を掲げたもののほかは、相手方が明らかに争わない事実を含め、当事者間に争いのない事実である。)
 (1)本件に関する都市計画決定の変遷等
 ア 昭和39年の都市計画決定
 建設大臣は、旧法3条の規定に基づき、次の内容の都市計画決定(以下「昭和39年決定」という。)をし、これを昭和39年12月16日付け建設省告示第3379号により告示した(〔証拠略〕)。
 (ア)都市計画名称 東京都市計画高速鉄道第9号線(なお、同名称は、昭和45年の計画変更以降「東京都市計画都市高速鉄道第9号線」とされた。以下、名称変更又は都市計画変更の前後を問わず「9号線都市計画」といい、同都市計画に係る路線を「9号線」という。)
 (イ)起点 世田谷区喜多見町(喜多見駅付近)
 (ウ)終点 葛飾区上千葉町(綾瀬駅付近)
 (エ)主な経過地 経堂駅、下北沢駅、原宿駅、神宮前、赤坂田町四丁目、国会議事堂前駅、霞ヶ関、丸ノ内三丁目、神田小川町一丁目、池の端七軒町、日暮里九丁目、町屋六丁目及び北千住駅各付近
 (オ)延長  32.5キロメートル
 イ 9号線都市計画の変更
 参加人は、法21条2項において準用する法18条1項に基づき、9号線都市計画を、昭和45年、昭和60年、平成2年に順次変更し、さらに、平成5年には、9号線都市計画を次のとおり変更し(以下「平成5年決定」という。)、これを平成5年2月1日付け東京都告示第105号により告示した(〔証拠略〕)。
 平成5年決定は、成城学園前駅付近の構造の変更を含むもので、同変更により、本件鉄道事業の対象である喜多見駅付近から梅ヶ丘駅付近(以下「本件事業区間」という。)の構造は次のとおりとなった。
 (ア)世田谷区喜多見九丁目から成城四丁目  約620メートル 嵩上式
 (イ)世田谷区成城四丁目から成城六丁目   約870メートル 掘割式
 (ウ)世田谷区成城六丁目から代田三丁目  約5520メートル 嵩上式
 (2)本件鉄道事業認可
 東京都は、建設大臣に対し、平成6年4月19日付けで、本件鉄道事業認可の申請をし、建設大臣は、同年5月19日付けでこれを認可し、同年6月3日付けでこれを告示した。
 (3)本件各付属街路事業にかかる都市計画
 ア 世田谷区長は、本件各付属街路事業の前提となる別紙本件各付属街路都市計画目録(1)ないし(6)記載の各都市計画(以下「本件各付属街路都市計画」という。)につき、平成4年1月13日付けで都市計画案を公告し、当該都市計画案を同日から同月27日までの期間、公衆の縦覧に供した(〔証拠略〕。法17条1項)。
 イ 世田谷区は、参加人の承認を受けて、東京都市計画道路に追加する方法により本件各付属街路都市計画を決定した。
 参加人は、上記承認をするに当たり、東京都都市計画地方審議会の議を経た(〔証拠略〕。法19条1項)。
 ウ 世田谷区は、平成5年2月1日、本件各付属街路都市計画を告示するとともに(〔証拠略〕)、建設大臣及び参加人に対し、法14条1項に規定する総括図、計画図及び計画書をそれぞれ送付し(〔証拠略〕)、世田谷区長は世田谷区役所においてこれらを縦覧に供した(〔証拠略〕。法20条1項、2項)。
 (4)本件各付属街路事業認可
 東京都は、建設大臣に対し、平成6年4月19日付けで、本件各付属街路事業認可の各申請をし、建設大臣は、同年5月19日付けでこれをいずれも認可し、同年6月3日付けでこれをそれぞれ告示した(〔証拠略〕)。
 (5)被告の地位の承継
 建設大臣がした本件各認可は、平成13年1月6日、中央省庁等改革関係法施行法(平成11年法律第160号)が施行されたことに伴い、同法1301条により、同法1172条による改正後の都市計画法85条の2及び中央省庁等改革のための国土交通省関係政令等の整備に関する政令(平成12年政令第312号)119条による改正後の都市計画法施行令43条の2並びに中央省庁等改革のための関係建設省令の整備に関する省令(平成12年省令第41号)47条による改正後の都市計画法施行規則59条の3に基づき、国土交通大臣から権限を委任された関東地方整備局長がした処分とみなされることとなった。
 3 争点及び争点に対する当事者の主張
 本件の争点は、大きく分けると、(1)各原告の原告適格の有無、(2)本件各認可の適法性であって、後者の争点では、本件各認可自体の適法性のほか、本件各認可の前提となる都市計画決定の適法性が争われ、これらの争点に関する各当事者の主張は次のとおりである。
 (1)原告適格
 (被告の主張)
 ア 都市計画事業認可取消訴訟における原告適格
 都市計画事業認可取消訴訟における事業地の権利者ないし周辺住民の原告適格について検討するに、行政事件訴訟法9条の定め並びに都市計画事業の認可につき、法が事業地内における建築等の制限(法65条1項)、事業地内の土地建物等の先買い(法67条)、土地収用法20条の規定による事業の認定に代える(法69条以下)などの効果を付与していることからすると、事業地内の不動産につき権利を有する者は、認可の取消しを求める原告適格を有するものと解される。
 これに対し、事業地の周辺地域に居住し又は通勤、通学するにとどまる者については、認可によりその権利若しくは法律上保護された利益が侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあると解すべき根拠はない。したがって、事業地の周辺地域に居住し又は通勤、通学しているが事業地内の不動産につき権利を有しない者は、認可の取消しを求める原告適格を有しないというべきである(最高裁平成11年11月25日第一小法廷判決・判例時報1698号66頁)。
 イ 原告らの本件鉄道事業認可の取消請求に係る訴えの不適法性
 (ア)本件鉄道事業認可の取消請求については、同事業の事業地内の不動産につき権利を有している原告は1名も存在しない。したがって、原告らは本件鉄道事業認可の取消しを求める原告適格を有しないから、その訴えはいずれも不適法であって、却下されるべきである。
 なお、原告《甲11》は、かつて、別紙物件目録1(1)記載の土地(以下「本件土地(1)」という。)を所有し(〔証拠略〕)、かつ、本件土地(1)上に同目録2記載の建物(以下「本件建物」という。)を所有していたところ(〔証拠略〕)、本件土地(1)のうち後に分筆された同目録1(2)記載の土地(以下「本件土地(2)」という。)相当部分が本件鉄道事業の事業地内にあり、かつ、本件建物のうち一部が同事業地内にあった。しかし、同原告は、平成12年11月24日、本件土地(2)を東京都に売却するとともに、同地上に存する建物部分につき東京都と移転補償契約を締結し、平成13年3月31日までに、同建物部分を収去した上、その地上土地部分を東京都に明け渡したから、本件鉄道事業の事業地内の不動産についての権利を喪失した。したがって、同原告は、上記訴えにつき原告適格を有しないというべきである。
 (イ)本件各付属街路事業の取消訴訟においては、付属街路第5号線事業について原告《甲4》が、同第9号線事業について原告《甲5》が、同第10号線事業について原告《甲6》、同《甲7》、同《甲8》、同《甲9》及び同《甲10》がそれぞれ原告適格を有していることは認めるが、本件各付属街路事業認可は、本件鉄道事業認可とは法的には全く別個の事業認可であるから、これらの原告らは、それぞれの有する不動産を事業地に含む各付属街路事業認可の取消訴訟について原告適格を有しているだけであって、本件鉄道事業認可の取消訴訟の原告適格を有しているものではないことはいうまでもない。
 ウ 原告らの付属街路第3号線事業、同4号線事業、同6号線事業の各事業認可の取消請求に係る訴えの不適法性
 付属街路第3号線事業、同4号線事業、同6号線事業の各認可取消訴訟については、原告適格を有する者が1名も存在しない。したがって、原告らの上記訴えはいずれも不適法であり、却下されるべきである。
 エ 原告《甲4》を除く原告らの付属街路第5号線事業認可の取消請求に係る訴えの不適法性
 原告《甲4》を除く原告らは、付属街路第5号線事業認可の取消訴訟について原告適格を有しないから、上記訴えはいずれも不適法であり、却下されるべきである。
 オ 原告《甲5》を除く原告らの付属街路第9号線事業認可の取消請求に係る訴えの不適法性
 原告《甲5》を除く原告らは、付属街路第9号線事業認可の取消訴訟について原告適格を有しないから、上記訴えはいずれも不適法であり、却下されるべきである。
 カ 原告《甲6》、同《甲7》、同《甲8》、同《甲9》及び同《甲10》を除く原告らの付属街路第10号線事業認可の取消請求に係る訴えの不適法性
 原告《甲6》、同《甲7》、同《甲8》、同《甲9》及び同《甲10》を除く原告らは、付属街路第10号線事業認可の取消訴訟について原告適格を有しないから、上記訴えはいずれも不適法であり、却下されるべきである。
 (原告らの主張)
 ア 不動産につき権利を有する原告ら
 (ア)原告《甲4》は、付属街路第5号線事業の事業地内に建物を所有しており、原告《甲5》は、付属街路第9号線事業の事業地内に土地を所有しており、原告《甲6》、同《甲7》、同《甲8》、同《甲9》及び同《甲10》は、それぞれ付属街路第10号線事業の事業地内に土地を所有しており、これらの原告らの各不動産所有権については被告も争っていない。
 (イ)原告《甲12》は、本件事業区間にある祖師ヶ谷大蔵駅のいわゆる線増部分のプラットフォームにあたるところに別紙物件目録3(1)記載の建物(〔証拠略〕)と同目録3(2)記載の土地(〔証拠略〕)を所有してブティック等に賃貸していたのであるが、平成9年7月6日、日本鉄道建設公団とその代理人と称する《A》株式会社(以下「《A》」という。)の職員から、当該土地に建設大臣の事業認可が下りており「買収に協力しなければ強制収用される」等と騙されて、いったん買収に協力して、日本鉄道建設公団に対して上記土地の一部である同目録3(3)記載の土地(〔証拠略〕)の所有権移転登記手続をしたものの、後に真実を知るに及んで、このような買収には協力できないと拒否したため、東京地方裁判所において、日本鉄道建設公団との間で訴訟となっている(〔証拠略〕)。したがって、現在、同原告が本件鉄道事業地内の不動産の権利者であることは明白である。
 (ウ)原告《甲1》は、同人の父親の代(昭和35年ころ)から、付属街路第5号線事業の事業地内にある別紙物件目録4(1)記載の土地(〔証拠略〕)を、その所有者《B》より普通建物所有の目的で夫とともに借り受け、夫《甲13》名義の同目録4(2)記載の建物(〔証拠略〕)を所有してこれに居住し、文房具店を経営している(〔証拠略〕)。(エ)原告《甲14》は、付属街路第9号線事業の事業地内に存する別紙物件目録5(1)記載の区分所有建物(〔証拠略〕)の共有持分権を有しており、同建物の敷地である同目録5(2)記載の土地は、同原告の妻《甲15》が6分の1の共有持分を有し(〔証拠略〕)、同人は同じく3分の1の共有持分を有する原告《甲5》の親族であることから、原告《甲14》は、同敷地に対し地上権を有している。
 (オ)さらに、別紙原告目録2記載の番号2、21、26、35、54、55、79及び80の各原告並びに別紙原告目録1記載の番号〔1〕ないし〔3〕、〔5〕ないし〔9〕の各原告は、本件各事業の事業地内に土地・建物を所有しており、別紙原告目録2記載の番号15、38、48及び58の各原告並びに別紙原告目録1記載の番号〔4〕の原告は、本件各事業の事業地内に建物を所有しており、さらに、別紙原告目録2記載の番号45及び73の各原告は本件事業区間における9号線との交差道路用地に土地・建物を所有している。
 (カ)よって、上記の各原告は、本件各認可の取消しを求める原告適格を有している。
 (キ)被告の主張に対する反論
 被告は、別紙原告目録1記載の各原告は、それぞれの有する不動産を事業地に含む各付属街路の事業認可の取消訴訟について原告適格を有しているだけであって、本件鉄道事業認可の取消訴訟の原告適格を有しているものではない旨主張する。
 しかしながら、本件の事業(以下、本件各事業と本件線増事業を併せて「本件事業」ともいう。)のような連続立体交差事業については、道路法、鉄道事業法等に基づき、建設省(当時)と運輸省(当時)との間で「都市における道路と鉄道との連続立体交差化に関する協定」(以下、改正の前後を問わず「建運協定」という。)が結ばれており、本件の線増連続立体交差事業が、実質的にも形式的にも、鉄道と道路が一体となって連続立体化される一つの都市計画事業であることは、建運協定、建運協定に基づく連続立体交差事業調査要綱(以下「本件要綱」という。)、都市計画法等から極めて明確である。本件の事業の事業地は、少なくとも、鉄道、これと交差する既設・新設の道路及び付属街路(側道)の3つから構成され、これらが不可分一体のものであり、9号線都市計画にかかる平成5年決定の際の都市計画案の計画図、平面図、縦断図を一見すれば、鉄道と都市計画道路補助52号線等二十数本の道路がどのように交差するのかがすぐ分かり、本件の事業が鉄道と道路が一体となった事業であることは明らかで、そのようなものとして手続が進められ都市計画決定に至っている。したがって、被告の主張する事業分断論は失当である。
 イ 事業地周辺住民の原告適格
 (ア)さらに、本件においては、原告らは、各原告目録の各原告の肩書住所地のとおり、いずれも世田谷区に居住する者であり、本件各事業の各事業地の周辺住民として、本件各認可の取消しを求める原告適格が認められるべきである。
 周辺住民の原告適格を考えるためには、本件で問題となる法の目的・趣旨を検討すべきところ、法1条ないし3条においては、「公共の福祉」、「健康で文化的な都市生活」、「適正な制限」、「土地の合理的な利用」といった文言が用いられており、これらの文言からだけでも分かるとおり、法が、憲法25条、29条等の民主制福祉国家の理念から、住民参加による都市の秩序と発展を考えていることは明確である。法2条にいう「健康で文化的な都市生活」をするべき者は、何よりも都市に居住する住民であることはいうまでもなく、「健康で文化的な都市生活」ができることは住民の利益である。「健康で文化的な都市生活」は、それに社会性があるとはいえ、住民が個人としてするものであって、「公衆」という抽象的な存在としてするものではない。そうだとすれば、住民の「健康で文化的な都市生活」を確保することを目的とする法の保護法益は、文字どおり住民の個別的利益であるといわざるを得ない。
 また、注目すべきは、法の目的が住民の健康と文化に向けられていて、財産権ではないということである。むしろ、法は、住民の健康と文化を確保するためには土地に代表される財産権について「適正な制限」をしなければならないと明言している(法2条)のである。これは、財産権は公共の福祉に従うという憲法29条等に照らせば、当然至極なことであり、健康と文化が公共の福祉の要の一つとして位置づけられていることが極めて重要なことなのである。したがって、法の目的が、住民一人一人の個別的法益に向けられていることは明らかである。
 (イ)また、行政事件訴訟法9条の当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」の解釈については、近年判例の集積により柔軟な解釈がされてきており、当該行政法規だけでなく、それと目的を共通する関連法規の関係規定によって形成される法体系の中において、当該処分の根拠規定が当該処分を通して個々人の個別的利益をも保護すべきものとして位置づけられているとみることができるかどうかをも検討しなければならない。
 本件各認可は、法59条に基づくものであるが、鉄道と道路を軸とした巨大な都市再開発事業であり、環境に著しい影響を与えるおそれがあるものである。鉄道事業法等関係事業法令が主として安全確保の観点から、環境実定法令が公害防止、人格権と環境保全の観点から多くの規制を設けていることは多言を要しない。これは再開発についても同様である。
 また、法61条1項は「事業の内容が都市計画に適合し、かつ、事業施行期間が適切であること」と規定しており、法13条は、「当該都市について公害防止計画が定められているときは、都市計画は、当該公害防止計画に適合したものでなければならない」と規定している。さらに、環境基本法36条に照らすと、法61条の事業認可を許可するに当たって、当該都市計画(本件においては鉄道建設)が騒音又は振動の発生等に関する環境基準に適合しているか否かを判断しなければならないと考えられる。このほか、本件各事業に直接関連する本件要綱が、比較設計とアセスメント及び住民参加の必要性を規定していることだけでも、本件各事業及びその認可に係る都市計画法59条等の関連条項に限定して考えた場合、本件各事業により影響を受ける住民の健康と文化という個別的利益は、同項が保護の対象としていることは明らかである。
 (ウ)さらに、法は、住民の意見を都市計画に反映する制度として、法16条で公聴会制度を、法17条で都市計画案の公告縦覧・意見書の提出制度を設け、法66条で、事業の施行者は「自己が施行する都市計画事業の概要について、事業地及びその附近地の住民に説明し、これらの者から意見を聴取する等の措置を講ずることにより、事業の施行についてこれらの者の協力が得られるように努めなければならない。」と規定している。
 このように近隣住民の都市計画決定への参加を実質化する手続規定が詳細に定められていることからも、本件各認可の根拠規定である法59条及び61条1項は、当該事業認可処分を通して近隣住民の平穏な環境を享受する権利等の個々人の個別的利益をも保護すべきものとして位置づけられていると見ることができる。
 (エ)本件事業が高架式により実施されれば、周辺住民である原告らの日常生活は、騒音、振動等により生活及び健康に甚大な被害を被ることが明らかであり、さらに、原告らの居住する環境に回復し難い侵害を与えることとなって、世田谷区の都市と文化の崩壊につながるものである。
 本件事業が予定されている地域は、一部商業地区を含め東京の代表的住宅地であり、そこへ高架式の鉄道ができれば、長大な高架施設が連続して視界を奪い、町を分断し、町の景観を損ない、通過する電車による騒音、振動、粉塵などが環境全体を破壊することとなり、本件事業全体が完成されたときには、運行される電車の本数は大量に増加し、その速度も大幅に加速されることとなって、その際に原告ら地域住民の受ける被害は、回復不可能なほど甚大である。また、本件事業に連動して、新たな道路計画が実施されることになっており、自動車の通行量の増大による大気汚染等の様々な公害が相乗されることになるのである。
 小田急線を地下化すれば、広大な新たな環境空間が生まれ、「緑と調和した町づくり」の重要なスペースとなり、都市災害の際の安全性も高くなるのに対し、高架化によっては、地域住民は不利益を被るだけである。以上のように、本件事業の実施により、原告らには回復し難い損害が発生するのであり、原告らは、本件各認可により、自己の権利若しくは保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者に該当する。
 (オ)したがって、本件の原告らのうち、本件事業の事業地内の不動産につき権利を有する者はもちろん、同事業地の周辺住民にも本件各認可の取消しを求める原告適格が認められる。
 (2)本件各認可の適法性
 (被告の主張)
 ア 本件鉄道事業認可の前提となる都市計画
 (ア)a 本件鉄道事業認可の前提となる都市計画は、9号線都市計画である。9号線都市計画は、建設大臣が旧法3条に基づき追加決定し、昭和39年12月16日付け建設省告示第3379号でその告示をしたものであり、その後、昭和45年、昭和60年、平成2年及び平成5年の4回にわたる変更を経て、本件事業区間については、前記前提事実(1)イのとおりとなった(〔証拠略〕)。
 b 建設大臣のした昭和39年決定の内容は、下記のとおりであった(〔証拠略〕)。
       記
 起点 世田谷区喜多見町(喜多見駅付近)
 終点 葛飾区上千葉町(綾瀬駅付近)
 主な経過地 経堂駅、下北沢駅、原宿駅、神宮前、赤坂田町西丁目、国会議事堂前駅、霞ヶ関、丸ノ内三丁目、神田小川町一丁目、池の端七軒町、日暮里九丁目、町屋六丁目及び北千住駅付近
 延長    32.5キロメートル
 構造 地表式、掘割式及び嵩上式の併用
 本件事業区間は、上記で定められた区間の一部であり、本件事業区間の構造については、成城学園前駅付近のみ地表式とし、その他の部分については嵩上式とするものであった。
 c このように、9号線都市計画のうち本件事業区間の構造を嵩上式と地表式と定めたのは、昭和39年決定である。昭和45年、昭和60年及び平成2年の各変更は、昭和39年決定で定めた本件事業区間の構造を変更するものではなかった。
 d これに対し、平成5年決定は、既定の9号線都市計画を、
 〔1〕世田谷区成城四丁目(変更概要では成城二丁目となっているが、成城四丁目の誤りである。)から世田谷区成城六丁目までの区間につき、構造を地表式から掘割式に変更したこと
 〔2〕世田谷区祖師谷三丁目から世田谷区梅丘一丁目までの区間につき、一部区域の変更を行ったこと
 〔3〕成城学園前駅、祖師谷大蔵駅、千歳船橋駅、経堂駅、豪徳寺駅及び梅ヶ丘駅について、エスカレーターを設置するなどのため、幅員を拡幅し、都市計画施設の区域の追加を行ったこと
の3点で変更するものであり、かつ、これに限られていた。
 e このように、平成5年決定は、既定の計画のうち上記3点を変更したものであり、これを本件事業区間の構造についてみると、昭和39年決定での一部を地表式としたものを掘割式に変更したにとどまり、その余の区間の構造は昭和39年決定で定めた高架式を何ら変更していないのであって、この区間の構造は高架式でよいとしたものではない。
 以上のとおり、本件事業区間のうち成城学園前駅付近の区間を除くその余の区間(以下「本件高架式事業区間」という。)の構造を嵩上式に決定したのは昭和39年決定であり、成城学園前駅付近の区間の構造を掘割式に定めたのは平成5年決定である。
 (イ)計画変更の効力の及ぶ範囲
 a 都市計画の変更について定める法21条1項は、変更決定の効力が及ぶ範囲につき明示的に定めていない。しかし、変更決定の効力は当該変更に係る部分にのみ及び、変更されない部分は既定の決定の効力が維持されると解すべきである。その理由は、次のとおりである。
 b 変更決定の効力は、特段の規定がない限り、変更した部分にのみ及び、変更しない部分には及ばないのが原則であり、法21条2項は、このことを当然の前提とするものである。
 すなわち、同項は、計画変更について都市計画の決定の手続を準用することを原則としつつ、政令で定める軽易な変更については、法17条、18条2項及び3項並びに19条2項及び3項の規定の準用を除外しており、名称の変更の場合には、都市計画の縦覧(法17条1項)等の手続を省略している。この規定は、計画変更がされた場合には、その効力が変更された部分にのみ及ぶとの前提に立った上で、軽易な変更は既定の都市計画の効力を維持する部分がほとんどであることから、手続を省略し得ることにしたものである。このような法21条2項の規定からみて、法21条1項は、計画変更がされた場合には、その効力が変更された部分についてのみ及び、変更されなかった部分については既定の都市計画がそのまま効力を有することを当然の前提としていると解される。
 イ 原告らの主張のうち審理の対象外のもの
 本件鉄道事業認可の違法事由となり得るものは、事業認可自体の手続的及び実体的各要件違反と、事業認可の前提となっている都市計画決定の要件違反に限られる。したがって、原告らの違法主張のうち以下のものは、審理の対象外であって、主張自体失当である。
 (ア)平成5年決定の際の見直しに関する主張
 原告らは、平成5年決定時に地下式を採用せずに高架式(嵩上式)を容認したことが違法であると主張するが、これが、本件高架式事業区間の構造を嵩上式と定めた昭和39年決定は法に適合しておらず、これに適合するように地下式に変更すべきであるのにこれをしないという不作為について、その違法を主張するものならば、原告らの上記主張は、昭和39年決定の違法判断の基準時を当該決定時よりも後に移すものにほかならないが、都市計画決定の違法性判断の基準時は当該決定時であるから、一度適法に行われた都市計画決定が、その後の事情によって遡って違法となることはあり得ないというべきである。したがって、原告が昭和39年決定後の事情をもって昭和39年決定を違法と主張するのであれば、このような主張は主張自体失当である。
 (イ)《乙3》建設大臣の話に関する主張
 原告らは、平成5年11月2日、当時の《乙3》建設大臣が、東京都ほかの関係部局に対し本件事業の実施をいったん凍結するよう指示し、その後東京都と住民の間で協議が開始されたのであるから、参加人は、上記協議の継続中は本件各事業認可の申請を留保すべき義務があるにもかかわらず、これに違反して平成6年4月19日に上記申請をしたのであるから、上記申請及び本件各事業認可は信義則に反し違法であると主張する。
 しかし、原告らの指摘する申請を留保すべき信義則上の義務は、事業認可の要件と何ら関係のないものであって、主張自体失当である。
 a すなわち、仮に、建設大臣が原告らの主張するような指示を参加人にしたとしても、そもそも参加人に認可の申請を留保すべき義務が生ずるとする明文上の根拠がない。しかも、原告らは、認可の申請を留保すべき信義則上の義務が生ずるとする理由を述べることすらしておらず、原告らの上記主張は、失当というほかない。
 b なお、この点をおくとしても、以下のとおり、原告らの上記主張の前提となる事実が存しないのであるから、原告らの上記主張は失当である。
 《乙3》建設大臣と住民との上記話合いにおいて、同大臣は、地下式、高架式の各事業費の積算に問題があるとするならば、お互いに出せる資料を出して話合いをすれば理解を得られるのではないかと示唆したにすぎないのであり(〔証拠略〕)、原告らが主張するような本件事業を凍結するよう指示したものでないことは明らかである(〔証拠略〕)。
 また、東京都では、《乙3》建設大臣からの示唆を受けて、平成5年12月27日以降平成6年4月6日までの間に住民との間で合計5回の話合いを持ち、東京都による事業費算定の根拠と《C》教授提案の事業費算定の根拠の突合せを行い、その結果、両者で事業費算定の際に差が生じた根拠や工事の積算単価等は同じであること等について共通認識ができ、おおむね住民の理解が得られた(〔証拠略〕)。以上のとおり、参加人が住民との話合いを途中で打ち切って上記申請を行ったという事情も存しない。
 (ウ)《D》株式会社に関する主張
 a 原告らは、本件鉄道事業認可の施行者が《D》株式会社(以下「本件第三セクター」という。)であるとの前提に立って、本件第三セクターが施行者となることが違法であると主張するようである。
 しかし、本件鉄道事業認可は、東京都からの認可申請に基づき東京都に対してされたものであり、上記事業の施行者は東京都であって、本件第三セクターではない。したがって、原告らの上記主張は、その前提において既に失当である。
 b また、原告らは、施行者が東京都であることを認めた上で、〔1〕本件第三セクターの設立自体が違法である、〔2〕建設省担当者が、第三セクターも連続立体交差事業の事業主体になることができるように建運協定を改正すると行政指導をしたため、東京都では同事業を第三セクターを主体として進めることにした、〔3〕本件第三セクターによるいわゆるNTT―A資金の利用が日本電信電話株式会社の株式の売払収入の活用による社会資本の整備の促進に関する特別措置法に違反するといったことを挙げて、このような本件第三セクターが本件鉄道事業に関与することにより、本件鉄道事業認可が法59条6号、61条1号に違反すると主張するようである。
 しかし、施行者が上記事業を施行するに際し、他者にその工事等を委託する等の関与を求めるか否かなどという点は、事業認可の処分要件とは全く無関係であるから、原告らの上記主張は、審理の対象外であって、主張自体失当である。
 なお、〔1〕について、本件第三セクターの設立は、本件鉄道事業認可の処分要件と何ら関係がないから、この点についての違法は本件鉄道事業認可の違法事由とはなり得ず、原告らの主張は、この点からも失当である。
 〔2〕についても、本件鉄道事業認可当時、上記のような観点から建運協定を改正することが検討されたことはなく、上記主張の行政指導が行われた事実も存しない(〔証拠略〕)から、この点に関する原告らの主張は、その前提事実を欠くものであって失当である。
 (エ)本件線増事業に関する主張
 原告らは、本件鉄道事業認可の取消事由として本件線増事業の違法をるる主張する。
 しかし、本件鉄道事業認可の取消訴訟の対象は、建設大臣のした都市計画事業認可であって、かつ、これに限られる。本件線増事業は鉄道事業法に基づく別個の事業であって、建設大臣は、本件線増事業について都市計画事業の認可をしておらず、本件線増事業の違法は本件鉄道事業認可の適法性とは何ら関係がない。したがって、この点に関する原告らの主張は、主張自体失当である。
 (オ)鉄道と交差する道路に関する主張
 原告らは、本件鉄道事業認可が鉄道と交差する道路部分をその対象としていないことは、1つの事業を細切れにし本来の総合的な評価を困難にするものであり、建運協定及びそれに基づく調査要綱、法1条等及び東京都環境影響評価条例に違反すると主張する。
 しかし、本件鉄道事業認可の取消訴訟の対象は、建設大臣のした都市計画事業認可であって、かつ、これに限られる。交差する道路については、別途都市計画決定がされているものである上、鉄道と道路とを一体として事業認可をしなければならないという規定も存しない。したがって、交差する道路の都市計画は、本件鉄道事業認可の前提となる都市計画でないことは明らかであって、この点の違法主張は、審理の対象外であり、主張自体失当である。
 なお、原告らは、法1条を都市計画事業認可の効力規定であるかのごとき主張をするようであるが、前述したとおり、法1条は法の目的を示した規定であって、法の解釈及び運用についての一般的指針となり得るものではあるが、それ以上に法に基づいて行われる個々の行政処分の効力に直接影響を及ぼすような要件を定めた規定であるということはできないから、この点に関する原告らの主張も、失当である。
 また、原告らの指摘する建運協定等や東京都環境影響評価条例は、本件鉄道事業及びその前提となった都市計画の要件ではないから、この点に関する原告らの主張も審理の対象外であって、主張自体失当である。
 (カ)法66条に関する主張
 a 原告らは、事業及び工事説明会における民意の無視、蹂躙を主張し、これをもって本件鉄道事業認可が違法であると主張するようである。
 しかし、原告らの指摘する事業及び工事説明会は、法66条に基づく措置として実施されたものである。法66条は、事業認可の告示があったときは、施行者は、すみやかに、都市計画事業の概要について事業地及びその付近地の住民に説明する等の措置を講ずべきことを規定したものであって、事業認可後における施行者の義務を規定したにとどまり、事業認可の要件を定めたものではない。したがって、この点に関する原告らの主張は、主張自体失当である。
 なお、本件鉄道事業については、法66条に基づく措置として、事業及び工事説明会を平成6年10月18日から同日27日までの間に計6回開催しており、さらに、同年12月1日には事業内容及び工事方法等を世田谷区報に掲載し、同月13日には事業説明用の資料及びパンフレットを各戸に配布するなど、十分な対応を行っているところである。
 b また、原告らは、本件事業の高架反対は区民の総意であると主張するようである。
 原告らの上記主張が事業認可に当たっては区民の総意を要するとの趣旨であるとすれば、そのような区民の総意を要件とするような規定は存せず、かかる主張は失当である。
 なお、本件については、世田谷区長を始め、経堂地区町会、経堂商店街振興組合、千歳船橋商店街振興組合、砧町自治会、祖師谷商店街振興組合の有志の人々から、早期事業化について要望書が提出されている(〔証拠略〕)。したがって、原告らの上記主張は、その前提を欠くものであって、この点からも失当である。
 (キ)連続立体交差事業調査要綱に関する主張
 原告らは、本件要綱に基づく連続立体交差事業(以下「連立事業」ともいう。)調査手続の違法をるる主張し、これをもって都市計画の違法事由とするようである。
 しかし、連立事業調査は、本件要綱に基づいて行われるものであって、法に基づくものではなく、都市計画及び都市計画事業認可の要件とは無関係であるから、原告らの上記主張は失当である。
 (ク)東京都環境影響評価条例に関する主張
 原告らは、東京都環境影響評価条例に基づく環境影響評価の手続の違法をるる主張し、これをもって都市計画の違法事由とするようである。
 しかし、環境影響評価も、上記条例に基づいて行われるものであって、法に基づくものではなく、都市計画及び都市計画事業認可の要件とは無関係であるから、原告らの上記主張は失当である。
 (ケ)事業計画の非公開に関する主張
 原告らは、本件鉄道事業に関する情報等を公開しなかったことは、東京都環境影響評価条例5条に違反すると主張するようである。
 しかし、上記条例5条は、環境影響評価手続に関し、「知事は、都民、事業者等に対し、都条例に定める手続の実施に関し必要な資料を公開し、又は提供するように努めなければならない。」と規定するものであって、都市計画及び都市計画事業認可の要件ではないことは明らかである。したがって、原告らの上記主張は失当である。
 (コ)高架施設の耐震設計に関する主張
 原告らは、兵庫県南部地震後に都市施設の耐震設計基準の見直しが行われたが、本件鉄道事業において見直しの作業の成果がどこに反映されたのか、あるいは反映される予定があるのか不明であり、問題であると主張するようである。
 原告らの上記主張は、それ自体趣旨があいまいであり、失当である。仮に、耐震性が都市計画ないし事業認可の要件であるとの前提に立った上での主張であるとしても、法は都市計画及びこれに基づく事業認可の段階で都市施設の耐震性につき要件として規定しておらず、主張自体失当である。
 ウ 昭和39年決定の適法性
 (ア)旧法の下における昭和39年決定の適法性
 a 手続的要件充足性
 建設大臣は、9号線都市計画につき、都市計画審議会の議を経た(〔証拠略〕)上でこれを決定して、昭和39年12月16日付けで告示し(〔証拠略〕)、内閣の認可を受けた(旧法3条)。
 したがって、昭和39年決定は手続的要件を充足している。
 b 実体的要件充足性
 昭和39年決定は、首都における人口分布が変化し、郊外において交通量が激増したため、これまで平面鉄道であった小田急線を高架化することにより、交通渋滞の原因となっている踏切を除却し、また、小田急線を複々線化(線増)することにより輸送力の増強を図り、もって、首都機能の維持及び推進に資することを目的とするものである(〔証拠略〕)。したがって、同都市計画は、旧法1条が定める「交通……ニ関シ永久ニ公共ノ安寧ヲ維持シ又ハ福利ヲ増進スル為ノ重要施設ノ計画」に当たる。
 したがって、昭和39年決定は実体的要件も充足している。
 (イ)現行法の下における昭和39年決定の適法性
 以上のとおり、昭和39年決定は、旧法の下で適法、有効に決定されたものであるから、都市計画法施行法2条により、現行法の下においても適法、有効な都市計画とみなされる。
 エ 平成5年決定の適法性
 (ア)手続的要件充足性
 平成5年決定は、以下に述べるとおり手続的要件を充足している。
 a 参加人は、都市計画の案の縦覧について、平成4年1月13日必要な事項を東京都公報において公告し、同日から同月27日までの期間、東京都都市計画局総務部、世田谷区役所で、法14条1項に規定する総括図、計画図及び計画書を縦覧に供した(法17条)。なお、世田谷区の出張所等においても関係書類を閲覧できるよう措置した。
 b 参加人は、関係市町村である世田谷区の意見を聴き、平成4年12月18日東京都都市計画地方審議会に付議した(法18条1項)。
 c 参加人は、平成5年1月5日建設大臣に都市計画変更の認可の申請を行い、同月11日建設大臣の認可を受けた(法18条3項)。
 d 参加人は、平成5年決定をし(法18条1項)、平成5年2月1日東京都公報においてこれを告示するとともに、同日付けで建設大臣に対し、法14条1項に規定する総括図、計画図及び計画書をそれぞれ送付し、東京都都市計画局総務部において縦覧に供した(法20条1項、2項)。なお、世田谷区長は、世田谷区都市計画課においてこれらを縦覧に供している。
 (イ)実体的要件充足性
 平成5年決定は、法13条1項に適合し、実体的要件を充足している。
 a 国の計画との適合性
 9号線都市計画に係る国土計画としては国土総合開発法(昭和25年5月26日法律第205号)に基づく第四次全国総合開発計画(昭和62年6月30日閣議決定)、地方計画としては首都圏整備法(昭和31年4月26日法律第83号)に基づく首都圏基本計画(昭和61年6月24日総理府告示第12号公表)及び首都圏整備計画(平成3年11月30日総理府告示第23号公表)が存するところ、平成5年決定は上記各計画に適合している。
 b 公害防止計画との適合性
 東京都は、公害対策基本法(昭和42年法律第132号)19条に基づき「東京地域公害防止計画(昭和63年ないし平成4年度、昭和63年3月14日環企管第37号内閣総理大臣承認)」を定めているところ、平成5年決定は上記東京地域公害防止計画に適合している。
 c 都市計画基準との適合性
 平成5年決定は、本件事業区間について鉄道境域の一部変更及び成城学園前駅付近の構造の変更を内容とし、都市高速鉄道の利便性の向上、混雑の緩和、踏切における渋滞の解消、一体的な街づくりの実現を図ることを目的とするものである。したがって、平成5年決定は、法13条1項柱書き前段、同項5号に適合する。
 (ウ)原告らの主張に対する反論
 a 都市計画地方審議会の実質的審議の不存在に関する主張
 原告らは、都市計画地方審議会において実質的審議が存在せず、法18条1項に違反すると主張する。
 しかし、原告らの上記主張は、都市計画地方審議会における審議があったことを承認した上で、それが自己の期待する審議がされなかったことを非難するものにほかならない。しかし、このような主張は、その前提において失当である。
 なお、平成5年決定に際しての同審議会の審議の実際は、以下のとおりであり、実質的な審理をしたことはいうまでもない。すなわち、同審議会は、平成4年12月18日に審議を行ったが、本件を最初の付議議案として審議したのであって時間の制約がなかった。その上、議案の説明に必要な資料及び「環境影響評価書の概要」の資料の配付を受け、計画の概要や意見等について説明を聴き、かつ、同審議会の意思により沿線住民3名から意見陳述を受けている。以上のとおり、同審議会は、十分な審議を行った結果、原案どおり議決したものである。
 また、原告らは、都市計画地方審議会では、東京都環境影響評価条例に基づく環境影響評価手続について議論がなく、本件要綱に基づく調査報告書も審議の資料とされていないことが違法であるとも主張する。
 しかし、環境影響評価手続及び本件要綱に基づく手続は、いずれも都市計画決定の手続的要件とは関係がないから、原告らの主張は、それ自体失当である。
 b 公聴会の不開催等に関する主張
 原告らは、公聴会を開催することが義務であるとの前提に立って、これを開催しなかったことが法16条1項に違反すると主張する。
 しかし、法16条1項の「都道府県知事……は、……都市計画の案を作成しようとする場合において必要があると認めるときは、公聴会の開催等住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。」という規定から明らかなとおり、公聴会の開催は住民の意見を反映させるために必要な措置をとる場合の例示にすぎず、公聴会の開催をするか否かは自由な裁量にゆだねられており、開催義務はない。したがって、原告らの上記主張は、その前提において失当である。
 また、原告らは、住民説明会についてもこれを開催することが義務であるとの前提に立って、参加人が開催した住民説明会の運営方法に問題があり、《A》の従業員の大量動員をしたものであるとして、これらが住民参加を妨害するものであって、法16条に違反するとも主張する。
 しかし、法16条の規定上、住民説明会も開催が義務づけられたものではないから、原告らの上記主張は、その前提において失当である。
 なお、参加人は、住民説明会を延べ18回開催するなどして住民に十分説明を行っているから、原告らの上記主張は、その前提事実を誤るものである。
 オ 本件鉄道事業認可の法61条の要件充足性
 本件鉄道事業認可は、法61条の要件を充足するものであって、適法である。
 (ア)認可の申請手続
 東京都は、建設大臣に対し、平成6年4月19日、法59条2項に基づき、本件鉄道事業認可の申請をした。その際、申請書に法60条1項各号が規定する必要事項を記載し、同条2項各号に規定する事項を事業計画に定め、同条3項が規定する書類を添付した上でこれを提出した(〔証拠略〕)。
 (イ)都市計画との適合及び事業施行期間の適切性
 a 都市計画との適合性
 本件鉄道事業の都市計画決定の内容は、総括図、計画図及び計画書によって表示され、計画書には都市施設の種類、名称、位置及び区域その他政令で定める事項として構造が定められ、決定の理由が記載されていた。
 建設大臣は、事業の内容として、都市計画に適合すべきもののうち、位置及び区域については、「事業地を表示する図面」(法60条3項1号)として申請書に添付された位置図及び平面図と計画図を照合し、また、構造については、「設計の概要を表示する図書」(同項2号)として申請書に添付された標準断面図と計画書を照合して、事業の内容が9号線都市計画に適合することを確認した(〔証拠略〕)。
 なお、本件鉄道事業は、現在在来線が存在する土地部分(在来線相当部分)を立体化し、踏切の解消を図ることにあるから、事業地の範囲は在来線相当部分に限られ、本件線増事業に要する部分は含まれない。
 b 事業施行期間の適切性
 本件鉄道事業の事業施行期間については、建設大臣は、
 〔1〕本件鉄道事業と同程度の規模の事業における事業期間に照らして、均衡を失するものではないこと
 〔2〕在来線を存置したまま高架橋を建設するための用地の買収が相当程度進んでおり、事業認可後速やかに高架橋本体工事に着手することが可能であること
 〔3〕本件事業区間6.4キロメートル(環状8号線の既設区間約700メートルを含む。)を工区分け施行することにしており、認可申請期間内の施行が可能であること
などを勘案して、適切であると判断した(〔証拠略〕)。
 (ウ)行政機関の免許等
 本件鉄道事業の場合、都市計画事業者である東京都は、事業の施行に関して行政機関の免許、許可、認可等の処分を特に必要としない(〔証拠略〕)。
 (エ)原告らの主張に対する反論
 a 事業地表示図面の不添付に関する主張
 原告らは、法施行規則47条1号ロに規定する図書は、測量法に規定する方式によって現地測量して作成された実測平面図でなければならないとの前提に立って、これに該当する文書が事業認可申請書類に添付されておらず、本件事業認可は法60条3項1号に違反すると主張する。
 しかし、都市計画事業認可の申請書類に添付すべき図面については、単に「実測平面図」と規定されているにとどまり(法施行規則60条1号ロ)、現実に現地測量をして作成された図面でなければならないとする法令上の根拠は存せず、原告らの上記主張は、その前提において失当である。
 なお、本件鉄道事業認可に際して「事業地を表示する図面」(法60条3項1号)として申請書に添付した平面図(〔証拠略〕)は、適法な図面であることはいうまでもない。すなわち、上記平面図は、まず、測量法34条の規定により定められた「建設省公共測量作業規程」(〔証拠略〕)に準じて空中写真測量を行い、これに基づき平面図を作成した上で、これに必要な補正を行って作成されたものであり、法令の予定する図面に当たる。したがって、原告らの上記主張はこの点からも失当である。
 b 告知等の機会不付与に関する主張
 原告らは、行政処分は、緊急の必要性がない限り、必ず事前に関係住民等に告知、弁解、防御の機会を与えなければならないとの前提に立って、本件鉄道事業認可は、緊急の必要がないのに、原告らに告知、弁解、防御の機会を与えることなしにされたものであって、憲法31条に違反し、違法なものであると主張する。
 しかし、法は、都市計画事業認可の要件として法59条、61条を規定しており、事業認可の際に関係住民等に対し告知、弁解、防御の機会を与えなければならない旨の規定を設けていない。また、原告らの指摘する最高裁平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁は、原告らの前提の主張を基礎づけるものではなく、憲法31条違反をいう点は理由がない。したがって、原告らの上記主張は、その前提において失当である。
 カ まとめ
 以上のとおり、9号線都市計画決定のうち本件事業区間部分(昭和39年決定と平成5年決定から成る。)はいずれも適法、有効であり、同都市計画に基づく本件鉄道事業認可も法61条の要件を充足するものであって、適法である。
 キ 平成5年決定の際の都市計画の見直しについて
 前記のとおり、本件高架式事業区間の構造を決定したのは、昭和39年の都市計画決定であって、平成5年決定時にその構造を変更していないから、平成5年決定時に地下式を採用しなかったことは、昭和39年決定の違法性を何ら基礎づけるものではないが、平成5年決定のみに着目しても、同決定時に本件事業区間全体の構造の見直しをした上で本件高架式事業区間の構造を高架式(嵩上式)のまま維持した経過並びにその調査・検討基準及び検討結果は以下のとおりであって、その判断は参加人の裁量権の行使として適切であり、何ら違法でない。
 (ア)平成5年決定の際の都市計画の見直しに至る経緯
 a 昭和39年決定は、当時、首都における人口分布が変化し、郊外において交通量が激増したため、これまで平面鉄道であった小田急線を高架化することにより、交通渋滞の原因となっている踏切を除却し、また、小田急線を複々線化(線増)することにより輸送力の増強を図り、もって、首都機能の維持及び増進に資することを目的としたものである。
 建設大臣は、昭和39年決定において、本件高架式事業区間の構造を嵩上式と定めた。これは、当時、嵩上式が地下式と比べ技術面、経済面等からみて実現可能性が高く、連立事業の代表的な構造形式であったことから、建設大臣は嵩上式を採用したものである。
 b その後、首都圏の都市化の一層の進展に伴い、踏切の存在に伴う諸問題は更に深刻化し、連続立体交差化(嵩上式)の必要性は昭和39年当時よりも一層高まってきた。連続立体交差化の意義は、〔1〕多数の踏切を同時に除却できるため、踏切事故、騒音、排気ガス等の交通公害、踏切遮断による交通渋滞が大幅に解消されること、〔2〕鉄道により分断されている市街地の一体化を図ることができること、〔3〕周辺の土地利用計画に合わせて、高架下等を駅施設、駐車場、公園等多目的に利用できること、〔4〕鉄道にとっても、安全性の増大、踏切経費の節減、輸送力の増大等の改善がもたらされること等にある(〔証拠略〕)。
 ところで、参加人は、構造形式の比較検討をすべき法的根拠はないものの、本件要綱に基づき昭和62年及び昭和63年度に調査を実施した調査結果を踏まえ、本件事業区間の構造形式として地下式を含む複数の形式を想定して比較検討を行い、その結果、嵩上式(一部掘割式)の形式が最適であると判断した。
 (イ)平成5年決定の際の調査検討と比較検討基準
 a 調査検討
 連続立体交差事業は、道路と鉄道との立体交差という交通の面のみならず、駅周辺の市街地の再生、活性化など街づくりの面においても影響を及ぼす事業である。本件要綱は、都道府県又は指定市が連立事業に関する国庫補助調査を行う場合の調査内容を定めている(ただし、これは、都市高速鉄道の都市計画決定に当たり調査すべき内容を直接規定したものではない。)。
 そこで、東京都は、9号線都市計画の変更決定に先立ち、本件要綱に基づき、昭和62年及び昭和63年度の2か年にわたり、〔1〕周辺市街地、道路整備状況、鉄道状況等の現況調査、〔2〕都市計画の総合的検討、〔3〕鉄道・側道等の設計といった、都市計画の直接の前提となる事項だけでなく、〔4〕関連事業計画、〔5〕総合アセスメント調査といった地域の街づくりにかかわる事項についても総合的に調査を行った(〔証拠略〕)。 平成5年決定は、昭和62年及び昭和63年度の連立事業調査を踏まえ、関係者と協議、調整をし住民説明会を経て行われたものである。
 b 比較検討基準
 比較検討の基準についても明文で定めたものはないが、参加人は、従来からの都市計画に関する行政実務経験に照らし、鉄道の構造につき地下式を含む複数の方式を想定し、総合的に比較検討を行ったものである。
 参加人が鉄道の構造につき複数の構造を比較検討するに当たり考慮した要素は多岐にわたるが、以下のとおり、計画的条件、地形的条件及び事業的条件という代表的な3条件を設定し、その総合評価を行うこととした。
 そして、上記3条件による総合評価で選定された嵩上式について、環境への影響等の諸要素の検討を加え、敷地の空間利用の点も考慮して、嵩上式を採用しても特段問題がないか否かも確認した。
 (a)計画的条件
 連立事業の主たる目的は踏切の除却にあることから、踏切の除却が可能か否かを検討する必要がある。
 また、鉄道駅は、土地利用や交通施設(バス等の交通体系等)に大きな影響を及ぼすものであって、駅の移動は、周辺住民等の経済活動や生活に大きな変化を与え、従前の街の形態を破壊してしまう可能性があることから、駅の移動の有無も検討する必要がある。
 (b)地形的条件
 鉄道の線形は、自然の地形や横断する河川の有無等によって決せられるため、これらの条件について検討する必要がある。
 (c)事業的条件
 限られた予算の範囲内で最大の効果を出す必要があることから、事業費の額を検討する必要がある。
 (d)その他の要素
 そして、上記3条件による総合評価で選定された嵩上式につき、〔1〕環境への影響及び〔2〕敷地の空間利用の検討を加え、嵩上式を採用することに特段問題がないか否かも確認した。
 (ウ)検討結果
 参加人は、平成5年決定に際して、以下に述べるとおり、本件事業区間の構造形式として、本件高架式事業区間は嵩上式を維持し、成城学園前駅付近は地表式から掘割式に変更するのが相当と判断した(〔証拠略〕)。
 a 3条件による総合検討結果
 (a)嵩上式(一部掘割式)
 これは、平成5年決定と同じ内容のものである。
 〔1〕計画的条件
 すべての踏切を除却することができる。また、既存の駅の位置を変更する必要がない。さらに、既に高架化されている環状8号線付近の部分との整合性が保たれる。
 〔2〕地形的条件
 成城学園前駅から喜多見駅までの地形には相当の勾配があることから、当該区間を掘割式又は地下式にすることにより、当該区間の鉄道の縦断勾配を緩和することが可能となる。
 〔3〕事業的条件
 事業費は約1900億円である。
 (b)嵩上式(一部掘割式)と地下式の併用
 これは、世田谷代田駅付近から環状8号線付近の間を地下式とし、環状8号線付近から成城学園前駅付近の間を嵩上式(一部掘割式)とするものである。
 〔1〕計画的条件
 千歳船橋駅と経堂駅との間に存する2箇所の踏切及び梅ヶ丘駅と世田谷代田駅との間に存する踏切が解消できないが、既に高架化されている環状8号線付近の部分との整合性は保たれる。
 〔2〕地形的条件
 成城学園前付近の地形を利用できる。
 しかし、この場合、鉄道は、現在の千歳船橋駅をはさんで地下と高架に分かれ、地下となってすぐに烏山川(千歳船橋駅と経堂駅間)の下部を通過するため、地上から地下への移行区間の勾配が大きなものとなる。
 既存駅を前提とすると、地上から地下への移行区間における勾配が大きくなり、線路の勾配について規定した普通鉄道構造規則17条に反することから、既存駅のうち千歳船橋駅及び梅ヶ丘駅を小田原方面に移設する必要がある。
 〔3〕事業的条件
 事業費は約2600億円となる。
 (c)地下式
 地下式には、四線並列開削工法と二層二線シールド工法による場合がある。
 〔1〕計画的条件
 梅ヶ丘駅と世田谷代田駅との間に存する踏切が解消できない。また、梅ヶ丘駅を小田原方面に移設する必要がある。さらに、既に高架化されている環状8号線付近の部分との整合性が保たれず、既設高架部分を撤去したうえ地下化する必要がある。
 〔2〕地形的条件
 成城学園前付近の地形を利用できる。
 しかし、この場合、鉄道は、仙川(成城学園駅前駅と祖師谷大蔵駅間)と烏山川(千歳船橋駅と経堂駅間)の両河川の下部を通過することになるため深度が深くなり、二層二線シールド工法の場合の急行線は、これよりさらに深度が深くなる。
 〔3〕事業的条件
 事業費は約3000億円から3600億円となる。
 (d)小括
 以上のとおり、嵩上式(一部掘割式)は、上記の3条件すべてにおいて、他の構造形式よりも優れている。したがって、本件事業区間の構造形式として、嵩上式(一部掘割式)を採用することとした。
 b その他の要素の検討結果
 参加人は、上記の総合検討の結果採用することとした嵩上式について、さらに環境への影響や敷地の空間利用等の諸要素を検討し、その結果、特段問題がないことを確認した。
 (a)環境への影響
 上記3条件により選定された嵩上式の環境面への影響については、東京都環境影響評価条例(〔証拠略〕)に基づき調査・予測し、その結果、工事中の大気汚染、工事中の建設作業騒音及び工事完了後の鉄道騒音、建設作業振動及び鉄道振動、地盤沈下及び地形・地質、日照阻害、電波障害、景観、史跡・文化財のいずれの点においても、嵩上式は環境に対する影響が少ないと評価した(〔証拠略〕)。
 このうち、工事完了後の鉄道騒音の予測値は、1.2メートルの高さの場合、高架橋端から6.25メートル離れた位置では75から77ホン、12.5メートル離れた位置では74から75ホン、25メートル離れた位置では71から73ホン、50メートル離れた位置では67から69ホンであり、予測値は現況値を上回る箇所も見られるが、おおむね現況とほぼ同程度かこれを下回っている。また、中高層建築物への影響については、音源が近づくこと、防音壁の効果が減少することなどから騒音が大きくなるものの、事業実施の段階では、構造物の重量化、バラストマット、60キログラム毎メートルレール、吸音効果のある防音壁等の対策を講じ、騒音の低減に努める。
 また、大気汚染につき、原告らは、鉄道と交差する都市計画道路の都市計画事業が実施された場合、大気汚染等の複合的被害が生ずると主張するが、本件鉄道事業の実施により、17箇所の踏切が一挙に除去され、将来築造される都市計画道路その他の道路も鉄道の高架化によって、当然に立体交差となるのであるから、むしろ自動車の流れがスムーズになり、交通渋滞による交通公害は改善される。
 (b)敷地の空間利用
 〔1〕高架下部分及び地上部分の利用の流動性
 高架下部分及び地上部分の具体的な利用形態については、当該部分の利用を実現する段階において、十分な検討を踏まえた上で決定されるべきものであって、都市高速鉄道に関する都市計画決定の段階では鉄道敷地の空間利用の比較検討は、抽象的、概括的に行うにとどめるべきである。
 すなわち、鉄道の都市計画決定の段階から高架下部分及び地上部分の利用の実現までには、長期間を必要とするのが通例である。そして、高架下部分及び地上部分の具体的な利用の在り方は、その時々の社会状況、地域の状況、価値観等の変化、住民の移動等によって、流動性を有するものである。例えば、計画当初は駐車場が必要と判断された場合であっても、その後、計画を実行する段階に至って、高齢化の進行に伴い、老人福祉施設、公民館等が必要と判断される場合も十分考えられる。また、現にある方法により利用を開始したとしても、必ずしも長期間にわたり当該利用方法を維持しなければならないわけではなく、その後の状況の変化に対応して、利用形態を変更することもあり得るのである。
 そして、このような高架下部分及び地上部分の具体的な利用の在り方は、地域の実情を十分に把握している地元自治体が中心となり、周辺住民からの意見も踏まえ、土地所有者である鉄道事業者等と協議しながら、きめ細かな対応により決定されるべきものである。
 以上のとおり、当該部分の具体的な利用の在り方は流動的であるから、都市計画の段階では、鉄道敷地の空間利用の比較検討は抽象的、概括的に行うべきである。
 〔2〕高架下部分の利用と地上部分の利用との等価性
 以上の見地から、鉄道敷地の空間利用につき、嵩上式を選択した場合の高架下部分の利用と、地下式を選択した場合の地上部分の利用とを比較検討すると、両者は等価である。
 すなわち、嵩上式を採用した場合の高架下部分利用及び地下式を採用した場合の地上部分利用には、公共的に利用される場合と、ビル等の構造物に利用される場合とがある。
 まず、公共的に利用される場合についてみると、この具体的形態としては、駐車場、駐輪場、集会施設、公園、通路、緑道等が挙げられる。このうち、緑道等については地上部分の方が利用に適しているが、駐車場、駐輪場等については高架下部分の方が利用に適している。公園、通路等については高架下部分であっても地上部分であっても、いずれもそれに応じた利用が可能である。以上のとおり、高架下部分であっても地上部分であっても、それぞれに応じた利用が可能であり、また、いずれかでなければ実現不可能というものもない(〔証拠略〕)。したがって、公共利用の観点からは、高架下部分と地上部分とは利用上等価である。
 また、ビル等の構造物に利用する場合についても、嵩上式では高架下部分や高架の上部に構造物を建築することも十分可能である(〔証拠略〕)。したがって、構造物建築という利用の観点からみても、高架下部分と地上部分とは利用上等価である。
 〔3〕小括
 以上のとおりであるから、敷地の空間利用の点は、上記3条件による総合評価で選定された嵩上式(一部掘割式)の合理性を何ら左右しない。
 (c)まとめ
 以上の総合的な検討の結果、参加人は、本件高架式事業区間の構造として、嵩上式が上記の3条件すべてにおいて他の構造形式よりも優れていることから、昭和39年決定で定めた嵩上式を維持し、成城学園前駅付近は掘割式にすることとし、その上で、構造形式を嵩上式とすることは、環境への影響、鉄道敷地の空間利用等の要素を考慮しても特段問題がないことを確認した。
 (エ)本件事業区間の構造を地下式に変更しない点の適切性及び適法性
 a 平成5年決定の際の見直し結果と法21条1項
 (a)以上のとおり、平成5年決定の際に構造を変更すべきであったのか否かという点は昭和39年決定後の事情であるから、同決定の違法事由とはならないものであるし、平成5年決定のみをみても、参加人は、本件事業区間全体の構造を見直した結果、本件高架式事業区間は嵩上式を維持することが最も適切であって、地下式に変更する必要を認めないと判断したものであるから、その見直し結果は、参加人の裁量的判断として適切であるというべきである。
 また、後記bのとおり、都市計画を変更しないことの当否は法21条1項違反の問題を生じないと考えるべきであるが、仮に、これが法21条1項違反となり得るとの立場に立ったとしても、平成5年決定の際、本件高架式事業区間の構造を嵩上式から地下式に変更しなかったことは、前記(ア)ないし(ウ)の諸事情からすると、法21条1項にいう「変更する必要」がなく、同項に何ら違反しない。
 b 法21条の意義と性質
 (a)法21条は、その1項で、都道府県知事又は市町村は、〔1〕都市計画区域が変更されたとき、〔2〕都市計画に関する調査(法6条1項)等の結果都市計画を変更する必要が明らかになったとき、〔3〕遊休土地転換利用促進地区に関する都市計画についてその目的が達成されたと認めるとき、〔4〕その他都市計画を変更する必要が生じたときは、遅滞なく、当該都市計画を変更しなければならないと規定し、その2項で、都市計画の変更の手続について規定する。
 そもそも、都市計画決定は決定時における法の規定に基づき決定されるものであるから、決定時において要件を充足する適法な決定であれば、決定後に法令が改廃されたり事情の変更が生じても、これにより事後的に違法となるものではない。法21条は、このことを当然の前提としつつ、同条の規定による変更を認めるものである。
 法21条1項が都市計画の変更を認める趣旨は、都市計画は都市の将来の発展の見通しを適確に把握して定めるべきものではあるが、時代の進展に伴い、社会的、経済的条件の変化などにより、都市計画もこれに応じて変更する必要が生ずる場合があり、このような場合における都市計画の変更の権限と責務を行政庁に認めることにある。
 そこで、同項が行政庁に対して課した責務の性質について検討する。同項の文言は、「変更する必要が生じたとき」に、「遅滞なく」、「変更しなければならない」というものであって、極めて一般的、抽象的である。「変更しなければならない」という文言のみをみると、変更を義務付けているかのように読めないでもないが、「変更する必要が生じたとき」と「変更しなければならない」とは同義語反復に等しい文言であって、「変更する必要が生じたとき」との文言が法律要件を定めた規定とは到底解し得ない。上記〔1〕ないし〔3〕の部分も、都市計画を変更する必要が通常生ずるような典型例を示したにとどまり、これらも要件を定めた規定と解し得ないことに変わりはない。そうすると、同項は、行政庁に対し都市計画を変更すべき場合の一般的な運用指針を示した規定であって、変更すべき法的義務を定めたものではないというべきである。
 しかも、都市計画が変更されない場合は、行政庁が都市計画を変更しないという不作為があるだけであって、変更の要否に関する決定が存しないから、裁判所は、法21条1項の適合性を判断すべき対象を欠き、同項違反の判断をすることができないというべきである。
 このことは、行政庁の第一次判断権の尊重の観点からも根拠づけることができる。すなわち、都市計画が変更されない場合は、行政庁は変更の必要につき決定として判断を示していないから、このような場合に、裁判所が変更すべき都市計画の内容と時期を具体的に想定した上で、法21条1項の変更義務違反なるものを認めるとすれば、変更についての行政庁の第一次判断権を侵すものであって、許されないというべきである。
 (b)以上のとおり、行政庁が都市計画を変更しないことの当否が法21条1項違反となることはあり得ないから、原告らが、参加人が構造を地下式に変更しないことをもって法21条1項に違反するというとすれば、かかる主張は失当というほかない。
 c 構造を地下式に変更しない点の法21条1項要件不該当性
 (a)仮に、行政庁が都市計画を変更しないことが法21条1項違反となり得ると解する立場に立っても、都市計画が長期的視点に立って実現されるべきものであり、その性質上安定性が要求されることにかんがみると、適法に決定された都市計画を変更すべきか否かの判断は、当初の都市計画の決定の場合以上に種々の利益を比較考量した上で、政策的、技術的な裁量判断を要するものであるから、同項の要件該当性の判断につき行政庁にゆだねられた裁量は、当初の都市計画決定の場合以上に極めて広範であるというべきである。
 そうすると、都市計画を変更しないことが法21条違反となり得るとしても、それは、当該都市計画決定後、相当の長期間が経過し、その間、社会的、経済的諸条件が著しく変化し、これに応じて都市計画を変更すべき具体的な内容が明らかとなっており、そのとおりに変更しなければ、当該都市計画が法の定める都市計画基準を満たさないばかりでなく、行政庁において当該都市計画を変更しないでこれを維持することが行政庁に与えられた裁量権の趣旨に反するような、容易には想定し難い、極めて例外的な場合に限られると解するのが相当である(名古屋高裁平成9年4月30日判決・判例時報1631号14頁以下参照。)。そして、この裁量権の逸脱・濫用に当たる具体的事実については、原告らに主張立証責任があると解すべきである。
 (b)そこで、以上の見地から、本件高架式事業区間の構造を地下式に変更しないことが法21条1項違反となり得るか否かを検討すると、前記アないしウで述べた事情に照らせば、構造を地下式に変更すべきことが明らかであるとは到底いい得ないから、その余の点につき検討するまでもなく、法21条1項に違反しない。
 かえって、前記アないしウで述べた事情に照らせば、参加人が、本件高架式事業区間の構造として、昭和39年決定で定めた嵩上式を維持して地下式に変更しなかったことは、裁量権の行使として適切であって、法21条1項にいう「変更する必要」がないことはいうまでもなく、法21条1項に違反しないことは明らかである。
 ク 本件各付属街路事業認可の適法性
 (ア)本件各付属街路都市計画決定の適法性
 a 手続的要件充足性
 本件各付属街路都市計画が手続的要件を充足していることは、前記第2、2の前提事実(3)及び(4)のとおりである。
 b 実体的要件充足性
 本件各付属街路都市計画は、次のとおり法13条1項に適合する。
 (a)国の計画との適合性
 本件各付属街路都市計画に係る国土計画としては国土総合開発法(昭和25年5月26日法律第205号)に基づく第四次全国総合開発計画(昭和62年6月30日閣議決定)、地方計画としては首都圏整備法(昭和31年4月26日法律第83号)に基づく首都圏基本計画(昭和61年6月24日総理府告示第12号公表)及び首都圏整備計画(平成3年11月30日総理府告示第23号公表)が存するところ、本件各付属街路都市計画は上記各計画に適合している。
 (b)公害防止計画との適合性
 世田谷区については、東京都が、公害対策基本法(昭和42年法律第132号)19条に基づき「東京地域公害防止計画(昭和63年ないし平成4年度、昭和63年3月14日環企管第37号内閣総理大臣承認)」を定めているところ、本件各付属街路都市計画は上記東京地域公害防止計画に適合している。
 (c)都市計画基準との適合性
 本件各付属街路都市計画は、本件事業区間における9号線の高架化及び複々線化に伴う関連側道として区画街路を設置し、もって沿線環境の確保及び街づくりなどに資することを目的とし、日影による影響がある範囲に対して、環境上必要な空間を確保するという考え方を基本として、沿線地域内に発生集中する交通の処理や、緊急車両の通行を担うほか、災害時の緊急活動の円滑等を図るために設置されるものであり、地域の街づくりに資するためにも必要なものである。したがって、同計画は法13条1項柱書き前段、同項5号に適合する。
 c 9号線都市計画決定の適法性
 本件各付属街路都市計画は、9号線都市計画とは別個独立の都市計画であるが、前記のとおり、本件事業区間における9号線の高架化及び複々線化に伴う関連側道として区画街路を設置し、もって沿線環境の確保及び街づくりなどに資することを目的として決定されていることからすると、9号線都市計画を前提としてこれに付従する関係にあるものと解される。したがって、本件各付属街路都市計画決定が適法であるというためには、その前提となる9号線都市計画決定が適法であることを要すると解されるが、9号線都市計画決定のうち本件事業区間の部分が適法であることは、前述したとおりである。
 (イ)本件各付属街路事業認可の法61条の要件充足性
 a 認可の申請手続
 東京都は、建設大臣に対し、法59条2項に基づき、本件各付属街路事業認可の申請をした。その際、申請書に施行者の名称、都市計画事業の種類、事業計画等法60条1項各号が規定する必要事項を記載し、同条2項各号に規定する事項を事業計画に定め、同条3項が規定する書類を添付した上でこれを提出した(〔証拠略〕)。
 b 都市計画との適合及び事業施行期間の適切性
 (a)都市計画との適合性
 本件各付属街路事業の都市計画の内容は、総括図、計画図及び計画書によって表示され、計画書には都市施設の種類、名称、位置及び区域その他政令で定める事項として種別及び構造が定められ、決定の理由が記載されていた。
 建設大臣は、事業の内容として、都市計画に適合すべきもののうち、位置及び区域については、「事業地を表示する図面」(法60条3項1号)として申請書に添付された位置図及び平面図と計画図を照合し、また、種別及び構造については、「設計の概要を表示する図書」(同項2号)として申請書に添付された標準断面図と計画書を照合して、事業の内容が本件各付属街路都市計画に適合することを確認した(〔証拠略〕)。
 (b)事業施行期間の適切性
 本件各付属街路事業の事業施行期間については、建設大臣は、〔1〕本件鉄道事業と同時に行われる事業であること、〔2〕事業認可申請期間内の施行が可能であることなどを勘案して、適切であると判断した(〔証拠略〕)。
 c 行政機関の免許等
 本件各付属街路事業の場合、都市計画事業者である東京都は、事業の施行に関して行政機関の免許、許可、認可等の処分を特に必要としない(〔証拠略〕)。
 ケ まとめ
 以上のとおり、9号線都市計画及び本件各付属街路都市計画はいずれも適法、有効であり、本件各付属街路事業認可も法61条の要件を充足するものであって、適法である。
 (原告らの主張)
 ア 違法判断の対象
 被告は、本件鉄道事業認可の前提となる都市計画決定は、実に36年以上前に行われた昭和39年決定であり、平成5年決定はその「変更部分」だけが問題となるにすぎない旨主張する。
 しかし、同主張は、平成5年決定も一つの独立した都市計画決定であることをことさら無視しているばかりか、平成5年決定こそ、本件の連続立体交差事業を定義し規律する建運協定、東京都環境影響評価条例、情報公開条例、環境実定法及び法等の法令に従うべきものとしてなされた本件事業区間における最初の決定であって、そのようなものとして当時建設大臣の決定を受けており、これが本件各認可の前提であることは疑う余地がなく、連続立体交差事業の法的概念すら存在しなかった当時の昭和39年の適否は問題にならない。
 違法判断の基準時につき、処分時を基準とする考え方は、処分後いかなる事情の変更があろうが、何年経とうが、処分の当時適法であれば、行政庁が新たな処分に及ばない限り、現在では違法とされるものであっても「適法」として裁判所は扱わなければならないというまさに戦前の行政裁判所でしか通らない官僚法学の極致というべきものであるが、仮に処分時が違法判断の基準時となるとしても、その処分とは、上記のとおり、平成5年決定であることは明らかである。
 イ 都市計画決定の実体面における違法性
 (ア)事業方式(高架式)選定の違法
 本件各事業は、鉄道の連続立体交差を、原告らに甚大な被害を与える高架式により実施しようとするものであり、次のとおりあらゆる点で優れた代替案である地下式を全く理由もなく不採用とした点で、事業方式の選定として明らかに違法である。
 a 環境面における地下式の優位性(法2条、3条1項、13条1項本文及び2項、61条1号)
 本件の連続立体交差事業では、日照(日影)、通風、騒音、振動、粉塵、景観等のあらゆる環境面において、高架式が地下式に劣ることは常識で明らかであり、東京都においては、高架式の場合は環境アセスメント手続を必要とするのに対し、地下式の場合は環境に悪影響はないとして同手続を不要としているほどである。
 街路、景観の点でも、地下式が優れており、特に、地下式を採用した場合には、その地表面を緑地化するなどの方法により、緑地面積が減少しつつある本件事業の地域において、環境の抜本的改善にも資することが可能となる。
 b 事業費における地下式の優位性(法3条1項、13条1項本文、61条1号)
 少なくとも本件事業区間においては、地下式の方が高架式よりも事業費が安価である。すなわち、従前、東京都は、本件事業区間の事業費の額につき、二層二線シールド工法による地下式の場合約3000億円、一線四層開削工法による地下式の場合約3600億円を要するのに対し、高架式の場合は約1900億円である旨を公表していたところ、別件情報公開請求訴訟の和解成立によりその大部分が開示された連続立体交差事業調査報告書(以下「本件調査報告書」という。)によれば、高架式の用地費には昭和63年以前に買収済みの用地費が全く参入されておらず、同用地費は500億円は下らないので、東京都の主張する高架式による事業費は少なくとも約2400億円を超えることが明らかとなり、さらに、本来当然必要とされるべき高架施設南側の環境側道設置費等の環境コストを含めれば、高架式は地下式よりもはるかに高額な事業費が必要である。
 また、東京都と本件事業区間沿線住民側との協議の中で、東京都がその事業費を約3000万円と公表していた二層二線シールド工法の事業費の積算においては、実はその緩行線部分の約半分に工事費の割高な開削工法を採用していたものであることが明らかとなった。しかしながら、本件事業区間において開削工法を必要とする理由は全くないので、この積算は正に地下式の事業費を水増しするためのものでしかない。
 被告は、地下式の場合に環状8号線との交差部分の高架施設を撤去する費用がかかることを主張するが、同施設は必ずしも撤去しなければならないものではなく、環状8号線の横断遊歩道としての利用も考えられる。
 よって、仮に上記環境コストを除いても、地下式の方が高架式よりも事業費が安価であることは明らかで、高架式は事業費の面においても地下式に対する優位性はない。
 c 地下式のその他の優位性
 さらに、二層二線シールド工法による地下式を採用すれば、原則的に土地買収等は必要なく、周辺住民の被害は必要最小限にとどめられ、土地買収手続の必要がないだけ工期も短くすむことになる。東京都が連続立体交差事業の必要性として主張している地域分断解消の点でも、高架式に比べ地下式の方がより有効である。
 d 被告の主張に対する反論等
 被告は、地形的条件及び計画的条件の検討においても地下式には問題があった旨主張するが、同主張は、世田谷代田駅の高架化を前提とするもので、下北沢駅及び世田谷代田駅が地下化されれば、本件事業区間の地下化に支障はなく、踏切もすべて除却されることとなるのであって、かえって被告の主張する高架式の方が、地下化する世田谷代田駅への接続のために無理な勾配が生じたり、除却できない踏切が生ずるのであり、被告の主張は前提において誤っている。
 地形的条件においては、事業区間の全体を地下化すれば高架式との間で何の優劣もなく、被告の主張は、既存の高架部分は残存させ、成城付近は掘割りにするという「上げたり、下げたり」方式を前提とする点で不自然かつ不相当である。計画的条件についても、高架式では相当広範囲にわたり事業用地を買収することが必要となり、収用等の強権発動に依存しない限り本件各事業の計画的遂行は事実上不可能であるが、地下式では、区分地上権の設定は必要となるものの、土地所有者などの基本的権利を具体的ないし不可逆的に侵害することはなく、したがって住民の同意の下で計画的に、円滑に事業を遂行することができる。
 平成7年1月17日に発生した兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)によって、山陽新幹線や阪神高速道路の高架橋などの交通施設が無惨にも倒壊したように、高架施設には危険性があるのであって、同地震後、運輸省(当時)ほかの関係諸機関において、高架施設を含む都市施設の耐震設計基準(構造)の見直しが実施されたが、本件鉄道事業において見直しの作業の成果がどこに反映されたのか、あるいは反映される予定があるのか不明であり、本件各事業には基本的な問題がある。
 また、被告は、公共利用の観点から、高架式の場合の高架下部分と地下式の場合の地上部分とは利用上等価である旨主張するが、高架下に公園や緑道を作ることを考えること自体がおかしい上、それが地下式の場合の地表の公園や緑道と等価であるはずがない。
 (イ)第三セクターの事業参加及びNTT資金導入の違法性
 a 事業主体性(法59条4項、61条1号)
 建運協定の2条6号により、事業主体は都道府県又は政令指定都市に限定されている。しかしながら、東京都は、平成2年8月、本件事業の実施を目的として、いわゆる第三セクターである本件第三セクターを設立した上、本件第三セクターが本件事業の事業主体となり得ないことが判明するや、道路整備の都市計画事業主体であると称して、本件第三セクターに120億円を支出させて本件事業の高架橋工事を施行させている。このように本来本件事業の主体となり得ない本件第三セクターが本件事業に密接に関与しており、しかもこれを不可欠部分としている点で都市計画決定は違法であるし、これを承知の上でされた本件各認可もまた違法である。
 b NTT資金利用の違法
 また、本件第三セクターの計画する事業はNTT資金の融資対象ではないのに、本件第三セクターは、「道路整備」の名を借りて同資金を導入することを実質的な主目的として設立されたもので、設立自体違法なものであるし、これに本件各事業の環境アセスメント、設計等極めて重要な業務を委託することは、本来許されない業務をさせることになるばかりか、本件第三セクターの関与を前提とし、現に事業費の3分の1にも相当する金額のNTT資金を違法に使用しているのであるから、本件事業にかかる9号線都市計画決定は違法である。
 ウ 本件線増事業における違法
 (ア)《A》は、その路線の一つである小田原線(9号線の一部である。)につき、東京都内において東北沢から和泉多摩川までの区間を複々線化する本件線増事業を計画していたが、その施行については日本鉄道建設公団に委託することとし、公団法に基づき、昭和60年12月3日、運輸大臣(当時)にその旨申し出て、運輸大臣は、昭和61年1月7日、これを認め、同公団が同事業を行うことを指示した。しかし、同公団は、公団法40条により国の行政機関とみなされ、都市計画事業を行う場合には法59条により建設大臣の事前の承認を得なければならないところ、同公団はその承認を受けておらず、しかも、事業主体となるやいなや、同事業をすべて《A》に委託してしまった。《A》ではできない事業だから同公団が同事業を行うこととなったのであるから、これを《A》に全部委託することができないことは公団法1条、19条、22条等から明白である。にもかかわらず、《A》は、同事業につき、あたかも自らが事業主体であるかのように振る舞って同事業を強行し、さらに、同事業の事業費を負担する必要がないにもかかわらず、同事業費に充てるべく、二度にわたって特定都市鉄道整備促進特別措置法認定を受けて運賃の値上げの認可を受けており、これらが違法無効であることは明白である。
 (イ)《A》はもちろん、東京都、世田谷区等は、このような違法を十分承知していたからこそ、これを隠蔽し、あたかも《A》が本件線増事業の事業主体であるかのごとく説明してきたもので、そうした隠蔽と虚偽の説明を都市計画手続等において行ってきたことは、それ自体、住民参加を原則とする法1条以下の規定に著しく反し、本件各認可は取消しを免れない。
 (ウ)また、本件線増事業は、本件各事業と不可分一体をなすものであり、かつ、その半分近い比重を占める不可欠の構成要素であって、これに上記のような公団法違反、特定都市鉄道整備促進特別措置法違反があるとすれば、本件線増事業も本件の都市計画決定の対象となっているのであるから、都市計画決定そのものが違法となるばかりでなく、これを前提とする本件各認可の違法性は極めて高く、かつ明白であって、本件各認可は建設大臣の裁量の範囲を越えた違法なものであり、取消しを免れない。
 エ 都市計画決定手続における違法
 (ア)本件調査報告書の作成上の違法(法2条、3条1項、13条1項本文及び2項、61条1号)
 a 本件のような連続立体交差事業においては、都市計画案策定の適正を期するため、本件要綱によって事前に綿密な調査をすべきことが義務づけられており、本件においても、本件要綱にしたがって、平成元年3月に作成された本件調査報告書(〔証拠略〕)が都市計画案策定の基礎とされているが、調査報告書の作成に当たっては、本件要綱により、地元自治体と十分に協議・調整し、住民参加を基本原則とすることが定められているにもかかわらず、本件調査報告書の作成に当たっては、これに違反し、地元自治体である世田谷区はもちろん住民の意見も全く聴かれていない。
 b また、本件要綱によれば、本件調査報告書は事業主体である東京都が作成すべきであるにもかかわらず、本件においては全面的に《A》が委託を受け、さらに民間会社である《E》がいわゆる孫請けして作成されている点で、本件要綱に違反している。
 c 本件調査報告書の調査区間は、喜多見駅から東北沢駅までの約8.5キロメートルを対象としているが、結論としては、梅ヶ丘駅から東北沢駅までの2.1キロメートルの区間(以下「下北沢区間」という。)を都市計画から外してこれを未定とし、下北沢区間を現状の地表面運行のままと仮定することとしたもので、その場合、地下式では、若干無理をして梅ヶ丘駅の東で地表線路に接続させることとなって、踏切が一部残ることとなり、下北沢区間を含めて全体を地下式にすればこのような問題は全く生じないにもかかわらず、上記のとおり下北沢区間を都市計画から外すことにより梅ヶ丘駅付近における設計を高架式採用に有利になるようにした。しかも、東京都は、既に下北沢区間について地下式をとることを事実上決定しており、上記作為は極めて不当である。
 d 本件要綱によれば、調査報告書においては必ず代替案を検討しなければならないこととされており、本件調査報告書においてもいくつかの代替案らしきものを掲記しているが、そこで採用されている代替案としての地下式は、四線並列一層開削工法で、前記のとおり本来最良の代替案たるべき二線二層シールド工法については、その存在を知りながら全くその検討すらしておらず、本件要綱の要求する代替案の検討をしたものとは到底いえず、違法である。
 e 本件事業完成後の運行速度の基本条件は時速120キロメートルであるにもかかわらず、本件での環境影響評価においては、時速70ないし77キロメートルという低速度運行を前提にしてしか環境への影響を予測しておらず、本件要綱の要求する環境調査手続に明らかに違反していて違法である。
 f 東京都は、本件各事業の立案過程において、昭和62年度から昭和63年度にかけて、本件事業についての連続立体交差事業調査(以下「本件調査」という。)を実施したところ、本件調査の実施自体は公知の事実だった。したがって、沿線住民らは、本件調査の結果を当然に知る権利を有していたし、少なくとも世田谷区は本件調査の結果の公開を住民に約束していた。都市計画が当該地域住民のためのものであり、地方自治体や特定の私企業のためのものではない以上、住民の知る権利は当然かつ自明のものである。
 しかるに、東京都は、原告らの上記知る権利の行使をかたくなに拒否し、平成3年8月に実施された本件各事業の素案説明会においては、本件各事業の前提となる本件調査報告書等の資料を「公表すべき性質のものではない」(〔証拠略〕)としたもので、住民らの現実的かつ具体的な権利の侵害の有無を決する情報と資料を公開せず、密室的に本件各事業を強行しようとするもので、この点でも本件各事業には基本的な問題がある。
 (イ)環境影響評価手続の違法及び環境影響評価審議会審議の違法(法2条、3条1項、13条1項本文及び2項、61条1号)
 a 連続立体交差事業は、都市計画事業であるから、東京都環境影響評価条例に基づき、環境影響評価手続が必要とされる。本件事業について実施された環境アセスメントは、沿線住民らが具体的に提示している地下式の代替案について、何の評価もなされず、見解も示されず、全く記載されていない点で同条例9条1項2号に違反しており、また、同条例5条は環境影響評価の実施に際しての必要な資料の公開を義務づけていると解されるが、上記(ア)fのとおり、東京都は本件で最も重要と思われる本件調査報告書についてかたくなに公開を拒否した点で同条に違反し、大気汚染等の必要なアセスメントを実施していない点で同条例10条に違反している。
 b さらに、実施された環境アセスメントには、違法な細切れアセスメントというべき地域分断評価により、事業完成後の影響(運転増加本数、運転速度等)とかけ離れた予測数値しか提示しないという違法がある。
 すなわち、前記のとおり、本件鉄道事業の都市計画案から下北沢区間を分離したことにより、本件事業区間だけでは複々線の全面開通とならず、したがって電車の運行本数も速度も現状とほとんど変わらないことになり、東京都は、その結果を利用して、本件事業の環境影響評価では事業完成後の環境に対する影響はほとんどないとしたのである。東京都環境影響評価条例9条2項は、相互に関連する二つ以上の事業を実施しようとする場合にこれらを併せて全体事業として環境影響評価を実施すべきことを規定しており、本件各事業は和泉多摩川駅から東北沢駅までの区間を全体事業とすべきところ、喜多見駅から梅ヶ丘駅までの事業として環境影響評価をしており、同条例9条2項に違反する違法なものである(〔証拠略〕)。
 c さらに、東京都環境影響評価条例は、住民の意見を環境影響評価手続に反映させるための公聴会を開催することを定めており(同条例20条)、本件においても、平成4年4月9日に公聴会が開催されたところ、そこでは、27人の公述人のうち26人までが高架式による環境破壊を心配して地下式に変更すべきことを求めていたのであり、同条例からみて、本件事業については、この都民の意見に従って計画が変更されるべきであったにもかかわらず、この意見は全く無視されてしまった。
 d 以上のとおり、東京都は、本件事業につき、環境影響評価手続において東京都環境影響評価条例に違反しており、また、本件調査の内容は専門家から具体的問題点を多数指摘されていて、科学的観点からも問題があり、本件各事業についての都市計画決定手続には違法があるというべきである。
 e 東京都環境影響評価条例は、事業の実施に際し、公害の防止、景観の保持等について適正な配慮がなされるよう定め、その実効を図るため、東京都には、第三者機関として環境影響評価審議会が設置されている。
 本件において、環境影響評価審議会は、平成4年2月3日に諮問を受けてから、わずか4ないし5回の項目別部会審議しかせず、それも、数項目を1日で審議するというようにほとんど実質審議をせず、しかも全体審議は同年10月26日のただ1日のみで、質疑・論議は一切なしという状況で、何ら事実調査を行わず、利害関係人を審尋することもなく、本件の環境影響評価をほぼ全面的に認める答申を行った。
 これは、環境影響評価審議会の手続が実質的に行われなかったものというべきであり、東京都環境影響評価条例違反として本件各事業の都市計画決定手続に違法をもたらすものである。
 (ウ)都市計画地方審議会審議の違法(法18条1項、61条1号)
 法は、都市計画決定に当たり、都市計画地方審議会の議を経なければ都市計画決定はできない旨を定めているところ(法18条)、本件については、同審議会の審議は、平成4年12月18日のわずか1日で審議され、しかも直前の同年11月15日に追加議案として提案され、他の多数の案件の審議と一括して扱われたもので、本件そのものについてはほとんど実質審議はされておらず、上記環境影響評価手続の違法についても議論されず、都市計画の基礎となった本件調査報告書も審議の資料となっていなかったのであるから、審議そのものが不存在というべきであり、法定の前置手続を欠いた違法がある。
 (エ)住民の意思を無視した説明会手続等の違法(法16条、61条1号)
 都市計画事業は、本来当該地域住民の支持を背景としてなされるべきものであるが、本件事業については、住民の支持を全く得ていない。
 本件事業については、沿線住民に対する説明会が合計18回開催されたが、住民の本件事業に対する不支持意見を封殺するため、毎回司会者である東京都職員が発言等を求める住民の声を封じて終了させ、そのような運営のために、事実上の事業主体である《A》の職員等が多数動員され、本件各事業の都市計画の素案説明会(平成3年8月実施)その他の場面に臨場し、住民から強い非難を浴びた。このような対応は、住民の意思を無視するものであり、前提手続として最も重要な住民意思の尊重という点で不公正があったことが明らかである。
 法は、住民の意見を反映させるために公聴会の開催等の必要な措置を義務づけているが(法16)、本件事業については、公聴会も開催されておらず、圧倒的多数の住民の意見である地下化の要求は、都市計画案作成に全く反映されておらず、この点で法に違反している。
 本件事業において高架式を用いることに対しては、歴史的に、個々の住民ないし住民団体においても支持を得られず、また、昭和45年及び昭和48年に高架化に反対して地下式の採用を求める世田谷区議会の意見書又は要望書が提出されたように、区民の総意を代表すべき世田谷区議会の意見においても支持を得られなかったものであり、旧来からの住民の反対意見を無視した点で、都市計画事業として基本的な問題がある。
 オ 事業認可申請手続の違法
 (ア)図書規定違反(法60条3項1号)
 法60条は、本件事業のような都市計画について事業認可の申請を行う場合、必要図書の添付を義務づけ、その中で、「事業地を表示する図面」を添付すべきことを定めているところ(同条3項1号)、都市計画法施行規則によれば、縮尺2500分の1以上の実測平面図が必要とされている(同規則47条1号ロ)。そして、同実測平面図については、本件各事業が東京都を事業主体とするものである以上、測量法に規定する公共測量として、同法に定められた方式に従って実施されなければならない(測量法39条)。しかし、本件においては、住民の圧倒的反対によって、ほとんどの地域で現地測量は実施されておらず、したがって、仮に本件各認可の申請に当たって何らかの実測平面図と称するものが添付されていたとしても、それは法の要求する「事業地を表示する図面」たり得ず、この点で本件各認可の申請に違法がある。
 (イ)認可申請を留保すべき義務の違反(法1条、2条、3条1項及び2項、60条1項、61条1号)
 本件各認可の申請は、住民との協議の継続していた平成6年4月19日に行われており、同協議は、当時の《乙3》建設大臣の指導に基づく公式協議であったにもかかわらず、その継続中に当事者の一方の独断によって、その協議を無意味にするような行動をとることは許されるべきものではなく、本件各認可の申請は、事業の認可権限を有する建設大臣の明示の指示に反するものである上、協議当事者間の信義則に反する背信性が甚だしく、申請権の著しい濫用であって、住民の意思を尊重すべきという都市計画の理念に反し(法1条、2条、3条違反)、申請自体が違法と解すべきである。
 《乙3》氏は、本件各事業を一旦凍結することを指示したが、これは、建設大臣という行政機関の意思を表示したものと解されるから、行政行為の継続性という観点からも大臣の人的変更によって凍結指示が解除されることはなく、凍結されているものを強行することが違法であることは明白である。
 (ウ)実体審理の欠如と適正手続違反
 本件各認可の申請があった当時の建設大臣は、事業認可の申請がされた場合、その事業計画が適正か否か、法に定められているとおり住民の意見が反映されているか等について慎重に検討し、その認可の是非を判断すべき法上の義務を負っていたもので、本件においては、本件調査報告書の開示や住民訴訟等の審理を通じて、都市計画決定の違法性が極めて明白になってきている状況にあって、前任者である《乙3》建設大臣も、本件各認可については凍結とすることを指示し、慎重に検討すべき旨の引継を受けていたにもかかわらず、建設大臣就任後実質10日あまりの短期間で、本件調査報告書を検討することはもちろん、全く住民の意見を聞くこともなく、要するに何らの検討をすることもなく東京都の申請どおり本件各認可をした。このように、認可責任者が何らの検討もせずに行った認可は、認可処分そのものが違法とされるべきである。
 また、本件各認可は、前記のとおり、住民との協議の継続中に、緊急の必要性もないにもかかわらず、住民に告知、弁解、防御の機会を与えることなくされたものであり、憲法31条の要求する適正手続の要請にも違反している。
 (エ)細切れ認可の違法
 前記のとおり、本件各事業と本件線増事業は一体のものであって、本件要綱は、鉄道事業、道路事業、駅前広場等の再開発が三位一体として連立事業調査の段階で同時に一体のものとして計画されなければならないと定めている。とりわけ、鉄道と道路をどのように交差させて連続立体交差化するかということは、本件の連立事業の中核であるから、少なくともこの点については、都市計画的観点からして一体として評価されなければならない。 ところが、本件各認可は、付属街路(側道)は別として、鉄道と道路の交差する道路部分が、本件の連立事業の重要な一部であるにもかかわらず、何ら認可の対象となっておらず、鉄道と付属街路が、他の道路と全く切り離されて本件各認可の対象となっている。交差する鉄道と道路との関係を明らかにさせて、両方を含んだ有機的一体の事業として認可の対象とすることは、法、建運協定等から当然求められているものであり、鉄道と道路とを分離することは、一つの事業を細切れにすることで、本来の総合的な評価は困難になる。にもかかわらず、事業を細切れにするのは、事業が完成した場合の都市に与える影響、沿線住民に対する影響を正しく評価する必要がなくなり、環境影響評価を鉄道だけに限定することができるからである。本件の環境影響評価はこれを示しており、道路については全く環境影響評価をしていない。ましてや、再開発事業については、その存在すら示されておらず、大気汚染は予測項目にすら入っていないのである。
 鉄道と道路が連続的に立体化し、広い道路がたくさんできれば、振動、騒音だけでも鉄道だけのそれとは比較にならない影響が出るし、道路を通る自動車が増えれば、大気汚染が進行するのは見易いことである。鉄道の沿線住民のみならず、新設される都市計画道路に近接して居住する多数の住民らに大気汚染、振動、騒音、日照、風害等の複合的被害が生ずるだけでなく、これらの住民に疾病の発生増悪などの健康被害が生ずることは明らかで、とりわけ、大気汚染の影響は深刻で、慢性気管支炎等の一般呼吸器疾患のみならず、自動車の排気ガス中の発癌物質により癌になる危険性が高くなることは医学界の常識であり、このような被害が受忍限度を超えることは明らかであるから、そのような具体的危険がある事業は、それ自体で違法である。
 事業は、その一部だけでは、都市計画事業の都市計画的適否を判断できず、適正な認可はできないから、その意味で、本件各認可は、建運協定及びそれに基づく本件要綱に違反するのみならず、法1条等に違反し、かつ東京都環境影響評価条例に違反するものであって、この点だけで法の許容する裁量の範囲を著しく逸脱する違法なものである。
 また、都市計画事業の認可に当たっては、最低限、都市計画決定と事業認可申請とが合致しているかどうかを審査しなければならないところ、鉄道と付属街路のみを審査して認可することは、肝心の鉄道と道路の連続立体交差化の適否を審査しないということであるから、単に細切れ認可の違法があるだけでなく、必要不可欠な審査をしていないという意味でも重大な違法がある。本件線増事業は、いわゆる在来線の連続立体交差事業の仮設橋の役割を果たし、在来線を走らせながらこの事業を施行するためには、最初にやらなければならない工事であり、実際、在来線の事業費の工事費のうち約半分に当たる250億円以上が平成11年度までに投入されている(〔証拠略〕)。真っ先にやらなければならない鉄道部分の約半分を占める高架橋工事について、これを事業認可の対象から外したり、申請手続においてこれを外すことは到底許されないことである。被告は、本件線増事業は別の事業であって都市計画事業の認可は必要ないと主張するが、そうであるとすれば、平成6年度以来平成11年度まで、在来線部分の高架橋工事が、経堂部分を除いてほとんど施工されていないにもかかわらず、上記のとおり在来線部分の工事費の約半分が投入されている事実を何と説明するのであろうか。
 さらに、本件鉄道事業において高架化をするためには、在来線の運行を確保しなければならない以上、本件線増事業の線増部分の高架橋工事が終わらなければできないことはいうまでもなく、本件事業区間6.4キロメートルの線増部分の工事が完成するには少なくとも5年以上要することも、建設大臣は十分承知していたもので、実際に、同線増部分の高架橋工事が開始されたのは、本件各認可後の平成7年1月であるが、それから5年以上経過した時点においても用地買収すら一部未了となっており、工事完了時期の目処も立っていない。建設大臣は、このような現実を承知し、承知し得べきだったのであり、本件各認可のされた平成6年6月の時点で、事業認可後速やかに高架橋本体工事に着手することが可能な状況でなかったことは明らかであるから、本件各認可は適法要件を欠いている。

 第3 争点に対する判断
 1 関係法令等の定め
 (1)都市計画法
 本件は、本件各事業を都市計画事業として認可した本件各認可の取消しが求められているところ、法によれば、「都市計画事業」とは、法の定めるところにより法59条の規定による認可又は承認を受けて行われる都市計画施設の整備に関する事業及び市街地開発事業をいう(法4条15項)。そして、「都市計画施設」とは、都市計画において定められた法11条1項各号に掲げる施設をいい(法4条6項)、法11条1項1号では、「都市計画施設」に当たるものとして、「道路」及び「都市高速鉄道」が挙げられている。本件各事業は、「都市高速鉄道」である9号線の本件事業区間につき、「道路」との連続立体交差化をするための事業であり、法の定める「都市計画事業」に当たるものということができる。
 (2)建運協定
 ア 都市における道路と鉄道との連続立体交差化事業については、これを円滑に実施するために、都市計画事業施行者と鉄・軌道事業者との費用負担に関し、昭和44年9月1日、当時の建設省と運輸省との間で建運協定及び「都市における道路と鉄道との連続立体交差化に関する細目協定」(以下、改正の前後を問わず「細目協定」という。)が締結され、これらの各協定は、その後国鉄改革に伴って見直しがされ、平成4年3月31日に一部改正され、改正されたこれらの協定は、同年4月1日から適用されることとなった(〔証拠略〕)。
 イ 建運協定2条によれば、「連続立体交差化」とは、鉄道と幹線道路(道路法による一般国道及び都道府県道並びに都市計画法により都市計画決定された道路をいう。)とが2か所以上において交差し、かつ、その交差する両端の幹線道路の中心間距離が350メートル以上ある鉄道区間について、鉄道と道路とを同時に3か所以上において立体交差させ、かつ、2か所以上の踏切道を除却することを目的として、施工基面を沿線の地表面から隔離して既設線に相応する鉄道を建設することをいい、既設線の連続立体交差化と同時に鉄道線路を増設することを含むものとするとされ、鉄道線路の増設を「線増」、線増を同時に行う連続立体交差化を「線増連続立体交差化」とそれぞれいうものとされており、本件鉄道事業及び本件線増事業は、9号線の本件事業区間における「線増連続立体交差化」を行おうとするものである。
 ウ 建運協定3条は、「建設大臣又は都道府県知事は都市計画法の定めるところにより、連続立体交差化に関する都市計画を定める。」(同条1項)、「第1項の都市計画には、線増連続立体交差化の場合における鉄道施設の増強部分(既設線の鉄道施設の面積が増大する部分及び線増線の部分をいう。以下同じ。)を含めるものとする。ただし、鉄道事業者が自己の負担で、既設線の連続立体交差化に先行して線増工事に着手する必要がある場合においては、線増線の部分を含めないことができる。」(同条3項)と定め、また、建運協定4条は、「前条の規定により都市計画決定された連続立体交差化に関する事業(以下「連続立体交差化事業」という。)のうち、単純連続立体交差化の場合における全ての事業及び線増連続立体交差化の場合における鉄道施設の増強部分以外の部分に係る事業は、都市計画事業として都市計画事業施行者が施行する。」と規定しており、「都市計画事業施行者」とは、連続立体交差化に関する事業を都市計画事業として施行する都道府県又は地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市をいう(建運協定2条(7))とされ、本件においては、本件鉄道事業が、「連続立体交差化事業」のうち「線増連続立体交差化の場合における鉄道施設の増強部分以外の部分に係る事業」として、「都市計画事業施行者」である東京都が施行するものである。
 (3)本件要綱
 ア 連続立体交差事業調査は、連続立体交差事業の必要性が比較的高く、かつ事業の採択基準に合致する事業計画箇所について、その都市における都市計画の総合的検討を行いつつ、事業の緊急性を検討するとともに、都市計画決定に必要な概略の事業計画を作成することを目的とするものであるところ、建設省は、連続立体交差化事業を行おうとする都道府県及び指定市に対し国庫補助調査を行う場合の調査内容等を示すために、本件要綱を定めており、本件各事業及び本件線増事業についての連続立体交差事業調査が行われた際に定められていた本件要綱は次のような内容であった(〔証拠略〕。なお、本件要綱は、平成4年11月に改正されている〔証拠略〕。)。
 イ 連続立体交差事業調査においては、単に鉄道の設計を行うのではなく、広域及び周辺市街地の現状における課題を把握し、連続立体交差事業の必要性を明確にした上で、都市計画の総合的検討を踏まえて関連事業計画、高架下利用計画と一体的に鉄道、側道等の設計を行い、さらに計画の総合的な評価を行うため総合アセスメント調査を行うこと(1項第3段落)。
 ウ 広域的条件調査(5―1―1項)、現地調査(5―1―2項)、周辺市街地現況調査(5―1―3項)、街路整備状況調査(5―1―4項)及び鉄道状況調査(5―1―5項)を行い、これらの調査をふまえて都市機能、都市交通、土地利用、居住環境及び都市活力等の観点から現況の都市計画上の問題点を整理し、このように整理された都市計画上の問題点を基に連続立体交差事業の必要性及びその区間について検討、整理をすること(5―1―6項)。その上で、都市計画の総合的検討として、将来目標を設定し(5―2―1項)、都市整備基本構想を作成することとし(5―2―2項)、周辺市街地整備基本構想を作成する際には、鉄道・側道等の設計並びに高架下空間及び鉄道残地の利用計画に配慮しつつ行うものとし(同項(2))、その要素として、土地利用計画、交通計画等に加え、公園緑地計画として、公園の配置計画の検討をすることのほか、公園、緑地や他の公共施設や良好な植生を加え、緑のネットワークを構成すべきこと(同項(2)〔3〕)。
 エ 鉄道・側道等の設計に当たっては、鉄道と側道は一体的に取り扱われ(5―3の標題、5―5―1〔6〕、図15)、設計は、基本設計と概略設計とした上で、設計に当たっては、5―2項の都市計画の総合的検討及び5―4項の関連事業計画等の検討に配慮しつつ行うものとし、特に、駅周辺の動線計画、街路網計画、駅前広場計画、高架下利用計画、面的整備計画、環境対策等に十分配慮を払いつつ行うものとする(5―3―3項)。基本設計においては、連続立体交差化する区間、経済的かつ合理的な線形、施行方法(仮線方式、別線方式、直上方式等)、おおむねの構造形式を比較検討するものとし、事前検討を行った上で周辺の関連事業計画等と調和のとれた比較案を数案作成し、比較評価を行うものとし(同項(1))、鉄道の縦断線形については特に経済性の観点から十分比較検討を行うこととし(同項(1)〔2〕後段)、比較案の評価に当たっては、経済性、施工の難易度、関連事業との整合性、事業効果、環境への影響等について比較し、総合的に評価して順位を付けるものとする(同項(1)〔3〕)。概略設計に当たっては、比較案から最適な案を選定し、さらに詳細に上記検討を行い、事業費積算のための設計を行うこととする(同項(2))。
 オ 連続立体交差事業の事業効果は、同事業と一体的に整備を図るべき関連事業がいかに実施されるかによって大きく左右されるから、連続立体交差事業の計画に当たり、既に熟度の高まっている関連事業はもちろん、5―2項の都市計画の総合的検討で検討したものを含めて、連続立体交差事業の事業効果を最大にするような計画内容と事業プログラムを検討し、その場合、鉄道残地及び高架化空間の利用にも十分配慮するものとする(5―4―1項)。そして、駅周辺動線計画の検討をするとともに(5―4―2項)、高架下空間を、商業ゾーン、駅業務ゾーン、公共利用ゾーン、通路等に区分するなどして、高架化利用の基本計画を策定し、その場合、周辺市街地の公共施設整備状況、住民の意向等に配慮して、自転車駐車場、小公園、行政サービスコーナー、集会場等公共利用を優先させるものとする(5―4―3項)。
 カ 連続立体交差事業の総合的な判断評価を行うため、連続立体交差事業による事業効果及び環境への影響を調査することとし(5―5項)、環境調査については、騒音、振動、日照、電波障害、その他地域分断、都市景観の阻害等の項目についても必要に応じて検討を行うものとする(5―5―2項)。
 このうち、騒音については、当該地区の鉄道騒音を代表すると認められる地点及び事業後において騒音が問題となる恐れのある箇所について、現況の騒音レベルの測定を行い、事業後の騒音の予測を行うものとする。測定方法は、「新幹線鉄道騒音に係る環境基準について」(昭和50年7月29日環境庁告示第46号)等に準ずるものとする。騒音予測については、周辺の地形、土地利用等の状況から簡略な計算で騒音レベルの予測が可能な場合は計算等を行うとともに、他地区の事例等諸資料を活用して行うものとする。
 (4)騒音に関する環境基準
 ア 本件各事業のような在来線鉄道の騒音については、本件各認可当時、特に公的な基準は定められていなかったが、新幹線鉄道の騒音については、上記告示により、「環境基準」として、〔1〕主として住居の用に供される地域については70ホン、〔2〕商工業の用に供される地域等〔1〕以外の地域であって通常の生活を保全する必要がある地域については75ホンと定められた(騒音レベルの単位については、当時施行されていた旧計量法(昭和27年法律第207号)では「ホン」又は「デシベル」を用いることとされ、両単位は同一の尺度で表されるものとされていた(同法5条44号)。なお、同告示は、新計量法(平成4年法律第51号)の制定の際に改正され、上記環境基準の単位にはデシベルが用いられ、上記〔1〕の地域については70デシベル、上記〔2〕の地域については75デシベルが環境基準となり、同改正による新たな告示は平成5年11月1日から施行された。)。
 また、同告示では、騒音の測定・評価の方法については、上り下りの列車を合わせて原則として連続して通過する20本の列車について、当該通過列車毎の騒音のピークレベルを読み取って行い、測定は、屋外において原則として地上1.2メートルの高さで行うこと等が定められ、さらに、上記環境基準の達成目標期間について、新設新幹線鉄道の場合には開業時に直ちに、そうでない場合最長でも開業時から5年以内に上記環境基準が達成されるべきこと等が定められていた。
 イ 東京都は、昭和46年以降「都民を公害から防衛する計画」を策定して、環境対策の各種目標値を設定していたところ、昭和49年に策定された同計画においては、昭和60年度を目指した計画として、鉄道騒音につき、住居地域では70デシベル以下、その他の地域では75デシベル以下を目標値としていた(〔証拠略〕)。
 ウ なお、本件各認可後、「在来鉄道の新設又は大規模改良に際しての騒音対策の指針について」(平成7年12月20日環大―第174号環境庁大気保全局長から各都道府県知事・政令指定都市市長あて。以下「平成7年指針」という。)が発出され、同指針では、在来鉄道の新設又は大規模改良に際して、生活環境を保全し、騒音問題が生じることを未然に防止する上で目標となる当面の指針として、新線(鉄道事業法8条又は軌道法5条の工事の施行認可を受けて工事を施行する区間をいう。)においては、平成7年指針中で測定及び算出の方法が定められている「等価騒音レベル」として、昼間(7時から22時)について60デシベル以下、夜間(22時から翌日7時)について55デシベル以下とし、住居専用地域等住居環境を保護すべき地域にあっては一層の低減に努めることとし、大規模改良線(複線化、複々線化、道路との連続立体交差化又はこれに準ずる立体交差化を行うため、鉄道事業法12条の鉄道施設の変更認可又は軌道法施行規則(大正12年内務・鉄道省令)11条の線路及び工事方法書の記載事項変更認可を受けて工事を施行する区間をいう。)においては、騒音レベルの状況を改良前より改善することが定められた。
 2 9号線都市計画の推移及び本件各認可に至る事実経過
 (1)本件事業に関する都市計画決定の変遷等
 ア 昭和39年の都市計画決定
 (ア)昭和39年決定に至る経緯
 a 東京都においては、昭和39年11月の第136回東京都市計画地方審議会に、9号線都市計画(当時の名称は「東京都市計画高速鉄道第9号線」であったが、同名称は、昭和45年の計画変更以降「東京都市計画都市高速鉄道第9号線」とされた。)として、従来都市計画決定がなされていた177キロメートルの都市計画高速鉄道に32.5キロメートルの新たな区間を加える形の都市計画案が付議された。
 b 上記の9号線都市計画案の付議は、詳細な設計、費用の分担、事業の執行等については今後検討されるとの前提でされたもので、9号線は、当時の世田谷区喜多見町から葛飾区上千葉町(綾瀬駅付近)を結ぶものであったところ、その構造については、審議会において、構想としては極力複々線化の際に平面踏切を除却するというものであるとした上で、小田急線の喜多見から代々木八幡に至る区間については、地形に応じて高架化を検討することとし、小田急線が国鉄(当時)中央線と比べて複雑な地形の所を通っていることから、高架化に当たっては、地形に応じて鉄道を高架にしたり地表を通したりするものである旨の説明がされた(丙16の2)。また、付議の際に議案に添付された「東京都市計画鉄道網図」(丙18の2)には、喜多見駅付近から代々木上原付近までは「高架または地平区間」との表示がされていた。
 c 9号線都市計画は、第136回東京都市計画地方審議会において、反対意見もなく、原案のとおり可決された(〔証拠略〕)。
 (イ)昭和39年決定
 建設大臣は、旧法3条の規定に基づき、上記の東京都市計画地方審議会の議を経て、東京都市計画都市高速鉄道に9号線を追加する方法により、次の内容の都市計画決定(以下「昭和39年決定」という。)をし、これを昭和39年12月16日付け建設省告示第3379号により告示した(〔証拠略〕)。
 a 都市計画名称 東京都市計画高速鉄道第9号線
 b 起点 世田谷区喜多見町(喜多見駅付近)
 c 終点 葛飾区上千葉町(綾瀬駅付近)
 d 主な経過地 経堂駅、下北沢駅、原宿駅、神宮前、赤坂田町四丁目、国会議事堂前駅、霞ヶ関、丸ノ内三丁目、神田小川町一丁目、池の端七軒町、日暮里九丁目、町屋六丁目及び北千住駅各付近
 e 延長   32.5キロメートル
 (ウ)昭和39年決定時点での構造
 上記のとおり、昭和39年決定自体には、本件事業区間における9号線の構造についての具体的な定めはなく、審議会における口頭での説明及びその議案に添付された図面上の記載があったにすぎない。
 イ 旧法の廃止及び法の制定に伴う移行措置
 昭和43年6月15日、前記のとおり、旧法が廃止され、法が制定されるに至り、都市計画法施行法2条により、昭和39年決定は、法の規定による相当の都市計画とみなされた。
 ウ 昭和45年の9号線都市計画の変更(以下「昭和45年変更」という。)
 (ア)昭和45年変更についての審議
 法施行後昭和39年決定を最初に変更することとなる9号線都市計画の変更案は、法21条2項が準用する法18条1項の規定により、昭和45年7月に、東京都都市計画地方審議会に付議された。
 同審議会においては、既存の9号線都市計画の内容である事業の進捗状況及びその後の予定について説明がなされ、その中で帝都高速度交通営団が施行する綾瀬から代々木上原に至る地下鉄線と《A》が施行するその余の区間である代々木上原から喜多見に至る区間につき、代々木上原駅を下北沢方向に約200メートル移動させた上で、新しい代々木上原駅を相互連絡駅として上記地下鉄線が小田急線に接続するものであることをも説明の上、昭和45年変更は、代々木八幡から代々木上原を経て東北沢に至る間の細部設計についての変更をすることを内容とするものである旨の説明があったが、本件事業区間の構造に関する説明は一切なかった。
 もっとも、付議に当たって作成された議案書(〔証拠略〕)中には、昭和39年の付議の際の議案書(〔証拠略〕)では空欄となっていた摘要欄に「複線」との記載がされていた。
 昭和45年変更案は、同審議会において、賛成多数で可決された(〔証拠略〕)。
 (イ)昭和45年変更
 参加人は、昭和45年8月13日、法21条2項において準用する法18条1項に基づき、9号線都市計画を次のとおり変更し、これを昭和45年8月24日付け東京都告示第900号により告示した。同変更は、上記の東京都都市計画地方審議会での説明のとおり、代々木上原駅付近の一部区域の変更を内容とするものとして決定された(〔証拠略〕)。
 a 追加する部分 渋谷区大山町、西原三丁目、上原一丁目、上原三丁目、元代々木町及び代々木五丁目地内
 b 削除する部分 渋谷区上原一丁目、上原三丁目及び代々木五丁目地内
 (ウ)昭和45年変更時点での構造
 前記のとおり、昭和39年決定の時点では、本件事業区間の構造は、関係図書上明確ではなかったが、昭和45年の都市計画変更の時点では、計画書により9号線全体の構造が明らかにされ、9号線全体としては地下式を基本とした上で、ただし書きにおいて、これと異なる構造の区間及び構造を列挙し、その中で、本件事業区間付近の構造は次のとおりとされた(〔証拠略〕)。
 a 世田谷区喜多見町地内から同町地内510メートル      嵩上式
 b 世田谷区喜多見町地内から成城町870メートル       地表式
 c 世田谷区成城町から代田三丁目5530メートル       嵩上式
 d 世田谷区代田三丁目から渋谷区上原三丁目1740メートル  地表式
 また、摘要欄の記載からすると、全体を複線として新たに建設するものであることが明らかにされた。
 エ 昭和60年の9号線都市計画の変更(以下「昭和60年変更」という。)
 (ア)昭和60年変更についての審議
 この変更については、昭和60年2月22日の第72回東京都都市計画地方審議会に付議された。付議の趣旨として、9号線都市計画のうち代々木上原から喜多見に至る区間は、小田急小田原線の線増計画であるところ、昭和60年変更の案は、これを狛江市内へ延伸しようとするものであり、また、小田急線の野川付近から多摩川までの鉄道沿線について都市化が進展して、この区間の14か所の踏切において、いわゆるラッシュ時の踏切遮断時間が長く、交通渋滞を招いているため、鉄道立体化の要望が強いことから、今回、小田急線の連続立体交差化を行おうとするものであること、鉄道沿線の環境保全と街づくりに資するためとの目的で、鉄道の両側に環境側道を設けることを計画していて、同道路は、区画街路として世田谷区及び狛江市が都市計画決定をするものである旨の説明がされた。
 付議に係る説明においては、東京都環境影響評価条例に基づく環境影響評価の結果、環境保全のための措置を適切に講ずれば周辺の環境保全は図られるものとされ、さらに、環境悪化等の理由で高架化に反対し地下化に変更すべき旨の意見等の意見書による意見に対する東京都の考えが説明され、このうち、地下式ではなく高架式とした点については、地下式にした場合、下水道施設に支障が生ずること、取付部分の踏切が除去できないこと、駅の大幅な移動が生ずることなどの困難な問題がある上、地下式の方が高架式より高額な事業費となると判断されたことから、現行制度上の制約及び財政状況の判断からして高架式以外の方式を採ることは極めて困難である旨の説明がなされた。
 昭和60年変更案は、同審議会において、賛成多数で可決された(〔証拠略〕)。
 (イ)昭和60年変更
 参加人は、昭和60年3月14日、法21条2項において準用する法18条1項に基づき、9号線都市計画を次のとおり一部削除の変更をし、これを昭和60年3月26日付け東京都告示第344号により告示した(〔証拠略〕)。
 削除する部分 世田谷区喜多見八丁目、喜多見九丁目、狛江市岩戸北一丁目、岩戸北二丁目、岩戸北三丁目及び岩戸北四丁目各地内
 もっとも、都市計画変更の告示は上記(イ)の内容にとどまっていたが、変更決定書(〔証拠略〕)自体には、線路部分を表示する一覧表中の備考欄に「線路数2 ただし喜多見〜代々木上原間4」との記載がされ、この点においても、昭和45年変更以前の内容とは異なっていた。
 (ウ)昭和60年変更時点での構造
 昭和60年の都市計画変更の時点では、本件事業区間付近の構造は次のとおりとなっていた。
 a 世田谷区喜多見九丁目から成城四丁目   約570メートル 嵩上式
 b 世田谷区成城四丁目から成城六丁目    約870メートル 地表式
 c 世田谷区成城六丁目から代田三丁目   約5530メートル 嵩上式
 オ 平成2年の9号線都市計画の変更(以下「平成2年変更」という。)
 (ア)平成2年変更に至る経緯
 平成2年変更の案は、平成元年10月13日の第94回東京都都市計画地方審議会に付議された。同案は、《A》が朝夕の混雑緩和を図るために各駅停車列車の8両編成化を推進し、これらを留置する車庫の設置が急務となったことから、喜多見駅付近の鉄道区域の一部変更を行って、その区域に検車機能を備えた車庫を設置しようとするものであった。
 平成2年変更案は、同審議会において、賛成多数で可決された(〔証拠略〕)。
 (イ)平成2年変更
 参加人は、平成元年12月14日、法21条2項において準用する法18条1項に基づき、9号線都市計画を次のとおり一部区域を追加する変更をし、これを平成2年1月12日付け東京都告示第25号により告示した(〔証拠略〕)。同変更は、小田急小田原線の適切な運行を確保する目的で世田谷区喜多見九丁目地内に車庫を設置することに伴う一部区域の追加を内容としたものであり、本件事業区間についての変更を含むものではなかった。
 追加する部分 世田谷区喜多見九丁目地内
 (ウ)平成2年変更時点での構造
 平成2年変更時点での構造は、昭和60年変更による構造と全く同じである。
 (2)平成5年決定に至る経緯等
 ア 本件調査(〔証拠略〕)
 (ア)東京都は、9号線の東北沢と喜多見の間の区間が、住居系と商業系が混在する密集地域内を通過していて、26か所の踏切があり、踏切遮断による交通渋滞や市街地の分断など日常生活の快適性や安全性を阻害していて、さらには南北方向の都市計画道路が未整備であることなどにより事態は深刻化の一途にあり、一方、小田急小田原線においては、朝夕の通勤通学時を中心とする鉄道の車内混雑が深刻化しており、鉄道の輸送力は限界に達しているとして、線増連続立体交差事業の必要性及び緊急性について検討するため、平成5年決定に先立ち、昭和62年及び昭和63年度の2か年にわたり、本件調査を行った。 本件調査は、本件要綱に基づき、広域的条件調査、現地調査、周辺市街地現況調査、街路整備状況調査及び鉄道状況調査を行った上で、都市計画上の問題点整理と連続立体交差事業の必要性の検討を行い、都市計画の総合的検討をし、鉄道・側道等の設計をして、さらに、関連事業計画、総合アセスメント調査といった地域の街づくりにかかわる事項について総合的に調査を行った。
 (イ)上記各調査の上でされた都市計画上の問題点整理においては、〔1〕都市機能の問題、〔2〕都市交通の問題、〔3〕土地利用の問題、〔4〕居住環境の問題、〔5〕都市活力の問題及び〔6〕防災上の問題が指摘され、このうち、都市交通の問題としては、小田急線の各駅では交通結節機能としての駅前広場が乏しく、駐輪場に問題を抱える駅もあること、調査対象区間約8キロメートルの中に25か所の踏切があり、交通量が多いにもかかわらずピーク時等には開かずの踏切となっていて、日常生活等に大きな支障を来たしていることなどが指摘され、対象区間については、昭和39年決定により立体化(嵩上式、一部地表構造形式)及び複々線化の都市計画決定がされているが、諸般の事情の変化により都市計画の見直し等の必要が生じているとされた。
 また、土地利用の問題としては、環状8号線東側の地域では、児童公園等の小規模な遊び場以外オープンスペースがない住宅密集市街地となっており、オープンスペースの確保と住宅地としての土地利用の保全が必要である等の問題が指摘された。
 さらに、防災上の問題としては、細街路や袋小路が多く、消防活動困難区域が広がっていて、環状7号線より東側の沿線では、人口密度が高く老朽建物が多い地域があり、防災上の問題となっている一方で、沿線地域の避難地は、大規模公園を中心に指定されているところ、避難距離が1.5キロメートル以上の遠距離避難地が豪徳寺駅周辺、祖師ヶ谷大蔵駅北部、喜多見駅周辺に広がっており、遠距離避難の解消が必要となっていて、特に、沿線地域全般で小田急線による避難圏域の分断が起こっており、避難活動に対する阻害要因となっていると指摘された。
 (ウ)上記問題点整理の結果、小田急小田原線については、次のような理由から、連続立体交差方式による事業化が必要であるとされた。
 a 踏切25か所の除却による地域内交通等の交通円滑性、安全性の向上
 b 市街地分断による通勤通学路等の安全性向上と市街地の一体性の確保
 c 下北沢駅周辺の広域生活文化拠点としての機能強化や経堂駅、成城学園前駅周辺を始めとする駅周辺での都市活力の向上、都市機能の再整備等と連動した地域、地区生活拠点整備の展開
 d 連続立体交差事業によって生み出される都市空間の道路、駅前広場、駐車場、公園、緑地等への有効活用による沿線地域の環境整備
 e 各駅における駅前広場、アクセス道路整備及び駅へのアクセシビリティ向上
 f 東京圏西南部地域の都市開発の進展に伴う、東京圏の大動脈を担うべき小田急線の輸送力増強や高速化
 (エ)鉄道・側道の設計については、次の条件を線路設計条件の基本条件として設定したが、その理由は本件調査報告書では明示されていない(4―3―1―1(1))。
 a 複々線の運転形式は方向別とし、中線急行、外線緩行とする。
 b 列車の最高速度は120キロメートル毎時とする。
 c ホーム延長は210メートルとし、4線並列区間の急行停車駅については、(経堂を含む)島式2面4線ホーム、急行通過駅については、相対式2面2線ホームとする。
 d 高架形式の線路縦断計画にあたっては、すべての交差道路について原則として、4.7メートルの桁下空間を確保する。
 上記a及びcの条件は、四線並列方式の複々線であることを前提とするもので、これにより、二層二線方式を採用する余地のない条件設定となった。
 (オ)また、基本設計の基本条件として、次の条件が設定されたが、これについても特に理由は明示されていない。
 a 事業化が完了もしくは実施中の次の区間の基本的な構造は変更しない。
 (a)代々木上原・東北沢間高架複々線化完了
 (b)千歳船橋・祖師ヶ谷大蔵間(環8区間)在来線高架化完了
 (c)喜多見・和泉多摩川間高架複々線化実施中
 b 既に鉄道と立体化が完了している幹線道路(環状7号線・環状8号線)に関しては道路縦断の変更等の変更は行わない。
 c 鉄道を横断している次の河川の構造は、付替え・縦断変更を含めて変更しない。
 (a)世田谷代田・梅ヶ丘間    北沢川(2級河川)
 (b)経堂・千歳船橋間      烏山川(2級河川)
 (c)祖師ヶ谷大蔵・成城学園前間  仙川(1級河川)
 (d)成城学園前・喜多見間     野川(1級河川)
 d 鉄道を横断している埋設下水管は移設できるものとする。
 e 現況の駅周辺の商業業務機能の集積を踏まえ、現在の駅出入口の位置変更が伴う駅位置の移動は行わない。
 f 鉄道の最急勾配は27/1000とするが、やむを得ない場合は普通鉄道構造規則に定める35/1000まで拡大して検討を行う。
 以上の基本条件のうち、aの条件の設定により、本件事業区間の全線を通して地下式を採用することはあり得ないこととなった。
 (カ)構造形式の比較・検討に当たっては、幹線道路や鉄道立体化の整備状況及び世田谷区内における地域の特性から、〔1〕東北沢・環7間(2.0キロメートル。下北沢区間に当たるもの。)、〔2〕環7・環8間(3.7キロメートル)、〔3〕環8・喜多見間(2.8キロメートル)の区間別に行うこととされ、下北沢区間については、〔1〕従来の都市計画決定どおりの地平案、〔2〕東北沢のみを地表式としてその余は高架式とする案及び〔3〕同区間全線を地下式(四線並列方式・開削工法)として代々木上原の高架橋に取り付ける案が比較検討されたが、〔1〕案は鉄道による地域分断が解消されないため問題が多く、〔2〕案は事業費及び道路との立体化において優れているものの、井の頭線との交差の関係から下北沢駅付近では一般的な高架橋より12ないし15メートル高くなるため、環境面で不利となり、〔3〕案は既設の踏切はすべて除却でき、環境面で有利であるが、事業費は最も高く(〔1〕案550億円、〔2〕案760億円に対し、〔3〕案は1181億円)、既設の代々木上原高架橋の部分的改築に伴う配線変更が生じるため、帝都高速度交通営団との協議が必要となり、交差道路の付替え等の措置も必要となるという問題があり、いずれの案においても問題が残されており、構造形式の決定に当たっては新たに検討する必要があるとされた。
 (キ)環7・環8間の構造については、〔1〕高架案、〔2〕環7―梅ヶ丘間を地下としその余を高架とする案、〔3〕環7―豪徳寺間を地下としその余を高架とする案、〔4〕環7―経堂間を地下としその余を高架とする案(千歳船橋駅が高架となる)の比較検討がされたが、〔1〕案はすべての踏切が立体化されるのに対し、〔2〕案及び〔4〕案は一部の踏切が支障し、それぞれ梅ヶ丘、千歳船橋の駅位置が移動し、〔3〕案は駅位置の移動は生じないものの交差道路(補助第128号線)が支障するため道路の単独立体化が必要となるといった問題が生じ、〔1〕案は環境面で〔2〕案に比べて劣るが一般的な高架橋の高さであり、既存の側道の有効活用などで影響を最小限にすることができ、〔1〕案は工期・工費の点で〔2〕案に比べて優れているとして、〔1〕案の高架式が適切であるとされた。
 (ク)環8・喜多見間は、〔1〕成城学園前地平案と〔2〕成城学園前掘割案の2案について比較検討が行われ、従前の都市計画決定による〔1〕案は事業費の点で〔2〕案に比べて優れているものの、2か所の踏切が立体化されずに残り、道路の単独立体化の検討が必要となるのに対し、〔2〕案はすべての踏切を除却でき、〔1〕案の事業費に道路の単独立体化の事業費を加えて考慮すると〔2〕案の事業費よりも多くなることから、〔2〕案が適切であるとされた。
 イ 平成5年決定の案の立案・検討(〔証拠略〕)
 (ア)参加人は、本件調査の結果を踏まえ、9号線の鉄道の構造につき、〔1〕嵩上式(一部掘割式)、〔2〕嵩上式(一部掘割式)と地下式の併用、〔3〕地下式の3つの方式を想定して比較検討を行い、その際、以下のとおり、計画的条件、地形的条件及び事業的条件の3条件を設定して検討を行った。
 a 計画的条件
 連続立体交差事業の主たる目的は踏切の除却にあることから、踏切の除却が可能か否かを検討する必要がある。
 また、鉄道駅は、土地利用や交通施設(バス等の交通体系等)に大きな影響を及ぼすものであって、駅の移動は、周辺住民等の経済活動や生活に大きな変化を与え、従前の街の形態を破壊してしまう可能性があることから、駅の移動の有無も検討する必要がある。
 b 地形的条件
 鉄道の線形は、自然の地形や横断する河川の有無等によって決せられるため、これらの条件について検討する必要がある。
 c 事業的条件
 限られた予算の範囲内で最大の効果を出す必要があることから、事業費の額を検討する必要がある。
 (イ)検討結果
 参加人は、平成5年決定の案を検討するに際して、本件事業区間全体にわたって構造形式を改めて検討し、以下の検討結果から、本件高架式事業区間は嵩上式を維持し、成城学園前駅付近は地表式から掘割式に変更するのが相当と判断した。
 a 嵩上式(一部掘割式)
 平成5年決定において採用された方式を想定した。
 (a)計画的条件
 すべての踏切を除却することができる。また、既存の駅の位置を変更する必要がない。さらに、既に高架化されている環状8号線付近の部分との整合性が保たれる。
 (b)地形的条件
 成城学園前駅から喜多見駅までの地形には相当の勾配があることから、当該区間を掘割式又は地下式にすることにより、当該区間の鉄道の縦断勾配を緩和することが可能となる。
 (c)事業的条件
 事業費は約1900億円である。その内訳は、用地費が約950億円、その余の建築費等が約950億円であるが、用地費には、事業(本件線増事業を含む。)のために必要な4万2000平方メートルのうち、昭和63年までに取得した1万8000平方メートルの土地取得費は含まれていない。
 b 嵩上式(一部掘割式)と地下式の併用
 世田谷代田駅付近から環状8号線付近の間を地下式とし、環状8号線付近から成城学園前駅付近の間を嵩上式(一部掘割式)とする方式を想定した。
 (a)計画的条件
 千歳船橋駅と経堂駅との間に存する2か所の踏切及び梅ヶ丘駅と世田谷代田駅との間に存する踏切が解消できない。また、既に高架化されている環状8号線付近の部分との整合性が保たれる。
 (b)地形的条件
 成城学園前付近の地形を利用できる。
 しかし、この場合、鉄道は、現在の千歳船橋駅をはさんで地下と高架に分かれ、地下となってすぐに烏山川(千歳船橋駅と経堂駅間)の下部を通過するため、地上から地下への移行区間の勾配が大きなものとなる。
 既存駅を前提とすると、地上から地下への移行区間における勾配が大きくなり、線路の勾配について規定した普通鉄道構造規則17条に反することから、既存駅のうち千歳船橋駅及び梅ヶ丘駅を小田原方面に移設する必要がある。
 (c)事業的条件
 事業費は約2600億円となる。
 c 地下式
 地下式には、開削工法とシールド工法があるところ、土木学会が編者となって昭和49年11月1日に発行された「新版土木工学ハンドブック中巻」(〔証拠略〕)によれば、開削工法とは、地表面より掘り下がり、地下所定の位置にトンネルなどの構築物を築造し、その上部を土砂にて埋戻し、地表面を元どおりに復旧する工法の総称とされ、この工法は、同書の発行当時において、「最も標準的な都市トンネル築造工法として普及され今日に至っている。地下鉄、地下自動車道路、共同溝、洞道などの送路用トンネルのほか、地下街、地下駐車場、地下変電所などの都市施設に広く用いられている点から見てもわかるように、この開削工法は、主として都市トンネル用として用いられる場合が多い。」ものであった。また、同書によれば、シールド工法とは、トンネル断面よりわずかに大きいシールドという強固な鋼製円筒状の外殻を推進させ、その庇護のもとで、掘削、シールド推進、覆工、裏込注入などの作業を行いトンネルを築造するものとされ、同書の発行当時において、「この工法は、切羽と外周の地山を常にシールドや覆工で支持しており、地山を緩ませることが少なく、安全確実な工法で、軟弱地盤や帯水地盤におけるトンネル技術の高度のものとされて、我が国においても、近年までは特殊条件下における工法と考えられていた。しかし、最近の都市内トンネル工事は、施工時の路面交通の確保、騒音振動など障害防止、各種都市施設(既設地下構造物、管路埋設物など)との立体交差や近接施工などの必要性の増大からシールド工法の採用が急増し、本来は開削工法の分野と考えられていた範囲まで広く適用される傾向にある。」ものであった。
 また、地下式の場合には、一層で四線(複々線)を並列させる方式(四線並列)と二層としてそれぞれの層に二線(複線)ずつを設置する方式(二線二層)とが想定されるが、利用者の便宜、すなわち、同一方向の急行線と緩行線を同一平面で乗換可能なものとする必要があることから、主として四線並列方式を想定して検討した(〔証拠略〕)。
 (a)計画的条件
 都市計画の内容が世田谷代田駅以東は地表式となっているため、梅ヶ丘駅と世田谷代田駅との間で線路が地下から地表に出ることとなり、両駅間に存する踏切が解消できない。また、同様の理由で、線路の勾配を適正なものとするには、梅ヶ丘駅を小田原方面に移設する必要がある。さらに、既に高架化されている環状8号線付近の部分との整合性が保たれず、既設高架部分を撤去したうえ地下化する必要がある。
 (b)地形的条件
 成城学園前付近の地形を利用できる。
 しかし、この場合、鉄道は、仙川(成城学園前駅と祖師ヶ谷大蔵駅間)と烏山川(千歳船橋駅と経堂駅間)の両河川の下部を通過することになるため深度が深くなる(仮に、二層二線シールド工法を採用した場合には、急行線はこれよりさらに深度が深くなる。)。
 (c)事業的条件
 事業費は約3000億円から3600億円となった。その内訳は、二線二層方式の場合には、用地費が約400億円、その余の建設費(工事費)が約2600億円で、その合計が約3000億円となり、一線四層方式の場合には、用地費が約700億円で、その余の建設費(工事費)が約2900億円で、その合計が約3600億円と見積もられた。上記の二線二層方式の用地費には、事業(本件線増事業を含む。)のために必要な2万平方メートルのうち、昭和63年までに取得した7000平方メートルの土地取得費は含まれていない。
 d 小括
 参加人は、以上の結果から、嵩上式(一部掘割式)は、上記の3条件すべてにおいて、他の構造形式よりも優れていると判断し、本件事業区間の構造形式として、嵩上式(一部掘割式)を採用することとした。
 e その他の要素の検討結果
 参加人は、上記の総合検討の結果採用することとした嵩上式について、さらに環境への影響や敷地の空間利用等の諸要素を検討し、その結果、特段問題がないと判断した。
 f 本件調査の結論
 以上のとおりの本件調査による検討の結果、参加人は、9号線の本件事業区間のうち、成城学園前駅付近を除くその余の区間の構造として、嵩上式が上記の3条件すべてにおいて他の構造形式よりも優れていると判断し、成城学園前駅付近については掘割式にすることとし、その上で、構造形式を嵩上式とすることは、環境への影響、鉄道敷地の空間利用等の要素を考慮しても特段問題がないと判断した。
 ウ 環境影響調査(〔証拠略〕)
 (ア)本件調査により選定された嵩上式(高架式)による本件鉄道事業及び本件線増事業の環境面への影響については、本件調査においても一定程度検討されていたが、同各事業が東京都環境影響評価条例の対象事業であることから、本件鉄道事業の事業者である東京都及び本件線増事業の事業者である《A》は、同条例及び東京都環境影響評価技術指針(〔証拠略〕)に基づいて調査を行って、同各事業の環境への影響を予測し、両者において環境影響評価書案(〔証拠略〕)を作成の上、同条例の定める手続に従って、これを平成3年11月5日に参加人に提出した(同条例9条1項)。
 (イ)参加人は、平成4年1月13日に関係地域の範囲及び同評価書案の概要を告示し、同月14日から同年2月12日にかけてこれを縦覧に供し(同条例16条)、同月3日に同評価書案を東京都環境影響評価審議会に諮問し(同条例14条)、意見書の提出(同条例18条)を受けた上で、同年4月9日に公聴会を開催し(同条例20条)、同年7月17日に見解書及びその概要の提出を受け(同条例21条1項)、同年8月に見解書の公示・縦覧をして(同条2項)、これに対する意見書を受け(同条3項)、同年10月に参加人の審査意見を作成して東京都及び《A》に送付した(同条例22条。〔証拠略〕)。これを踏まえ、東京都及び《A》は、環境影響評価書を作成した(同条例23条。〔証拠略〕)。
 上記意見書の中には、「小田急小田原線(喜多見〜梅ヶ丘駅付近間)複々線・連続立体交差事業のあり方について考える専門家の会」の《F》共立女子短期大学教授及び《G》横浜国立大学助教授による平成4年8月26日付けの意見書で、本件の環境影響評価の手順につき、代替案が検討されていない、細切れ評価である等の批判や、内容において影響の予測が不十分である等の指摘をするもの(〔証拠略〕)、「小田急の違法なアセスメントのやり直しを要求する弁護士の会」の斉藤驍弁護士ほか59名の弁護士による意見書で、主として本件の環境影響評価の手続についての批判をするものなどがあり、環境、建築、法律、政治学等の各分野の専門家から反対意見が提出された。
 また、社会工学専攻の《C》法政大学教授による平成4年11月1日付けの意見書においては、東京都による本件調査対象区間の高架式による事業費1900億円の見積においては、用地取得費が950億円で建設工事が950億円とされており、これは側道用地として北側に6メートルの幅の用地を取得することを前提とするものであるところ、環境についての専門家の意見を考慮すれば、鉄道の南北双方に幅13メートルの側道を設置すべきであって、その用地取得費は東京都の見積に加えて1506億円増加することになるから、高架式の場合の事業費は合計3406億円となるべきである一方、本件調査の対象区間を地下化するためには、現行事業用地に加えて4メートル幅の買収が必要なほか、さらに2メートル幅の地上権設定により余裕をみて、これを合計した用地取得費は340億円となって、その他の費用をあわせた二層二線シールド工法による地下式の場合の事業費は、合計1952億円程度であって、東京都の算定する高架式の事業費1900億円とほぼ同じであり、上記の南北の側道の費用を加えた高架式の事業費3406億円を大きく下回るもので、東京都の算定する地下式の事業費の約3000億円ないし3600億円は不当である旨の意見(以下「《C》教授案」という。)が述べられており(〔証拠略〕)、これとほぼ同旨の同教授の意見は、雑誌「経済評論」の平成5年4月号に掲載された(〔証拠略〕)。
 (ウ)上記の手続を経て、東京都及び《A》を事業者とし、「小田急小田原線(喜多見〜梅ヶ丘駅付近間)複々線・連続立体交差事業(対象事業の種類:鉄道の改良)」を対象事業として、平成4年12月18日に作成された上記環境影響評価書(〔証拠略〕)によれば、対象事業が環境に及ぼす影響の評価の結論は、次のとおりであり、東京都は、これに基づき、嵩上式は環境に対する影響が少ないと評価した。
 a 大気汚染
 工事中の工事用車両の走行による排出量の増加割合は、大気汚染物質である一酸化炭素及び二酸化窒素ともに少ない。したがって、周辺環境に及ぼす影響は少ない。
 また、工事中の粉塵に対しては、飛散防止のための散水、シート覆い等の措置を施すため、周辺の環境に与える影響は少ない。
 b 鉄道騒音
 工事完了後の鉄道騒音については、地上2階建て程度の建築物を想定して地上1.2メートル及び3.5メートルの高さでの予測を行ったところ、1.2メートルの高さの現況値及び予測値は次のとおりであり、予測値は現況値を上回る箇所も見られるが、おおむね現況とほぼ同程度かこれを下回っている。(表2)
 環境影響評価書案の記載が以上のようなものであったことから、参加人は、「1 鉄道騒音の予測位置は、鉄道騒音に係る問題を最も生じやすい地点及び高さで行うこと。」、「2 鉄道騒音の評価について「新幹線鉄道騒音に係る環境基準」を上回る場合には吸音効果のある防音壁を設置するなど各種騒音防止対策を講ずることとしているが、追加予測の位置を含め予測地点毎に講ずる対策の種類とその効果の程度を明らかにすること。」などの意見を述べた。
 そこで、環境影響評価書においては、予測地点のうちの1か所における鉄道敷地境界から1メートルの地点における高さ方向の騒音の予測として、次のような記載が付加された。(表3)
 また、事業実施段階での騒音防止対策及びその対策による低減効果として、構造物の重量化、バラストマット、60キログラム毎メートルレール、吸音効果のある防音壁等の対策を講じ、騒音の低減に努めること、これらによる騒音低減効果は、バラストマットにより軌道中心から6.25メートルの地点で7.0ホン、12.5メートルの地点で5.1ホン、25メートルの地点で1.9ホン、60キログラム毎メートルレールにより現在の50キログラム毎メートルレールに比べて軌道中心から23メートルの地点で5ホン、吸音効果のある防音壁により防音壁だけの場合に比べて1ホン程度であるなどの記載が追加された。
 また、工事中の建設機械の稼働に伴う建設作業騒音については、評価の指標を越える騒音が発生することはないので、周辺地域の環境に及ぼす影響は少ない。工事桁の鉄道騒音は、現況とほぼ同程度であり、影響は少ない。
 c 鉄道振動
 鉄道振動の予測値は、高架橋端から6.25メートル離れた位置では62から63デシベル、12.5メートル離れた位置では59から60デシベル、25メートル離れた位置では55から56デシベル、50メートル離れた位置では48から49デシベルであり、48から63デシベルの範囲にある。
 一方、現況値は40から66デシベルで、予測値は現況値を上回る箇所も見られるが、その変化の程度は少ない。
 なお、これらの予測値はいずれも「環境保全上緊急を要する新幹線鉄道振動対策について(勧告)」の指針値70デシベル以内になっている。
 また、建設作業振動については、各工種とも振動規制法及び東京都公害防止条例に基づく勧告基準を下回っており、周囲の環境に及ぼす影響は少ない。
 d 地盤沈下及び地形・地質
 地盤沈下については、地盤等の状況により、必要に応じて剛性及び遮水性の高い土留壁を採用するほか、埋戻しに際しても、良質の土砂を用いて十分な締固めなどを行うため、周辺に与える影響は少ない。
 計画路線の掘割部については、路線の北側では地下水流を阻害することはなく、南側については独立した集水域をもっているため、地下水への影響は少ない。なお、掘削部の南側近接部については、地下水流を阻害するおそれが考えられるが、適切な工法の採用により地下水の連続性を保っていくため影響は少ない。
 e 日照阻害
 高架構造物による日影については、建築基準法及び「東京都日影による中高層建築物の高さの制限に関する条例」に準じ、高架構造物からの等時間日影線が規制値を満足しないところについて、環境空間を設ける。そのため、日照阻害の影響は少ない。
 f 電波障害
 高架構造物の北側において、しゃへい障害が発生すると予測される。しかし、電波障害の対策に当たっては、工事の進捗に合わせ共同受信方式、受信アンテナの改善等、障害の内容及び程度に応じて対策を実施するので、影響は解決できる。
 g 景観
 駅周辺部は、現況の雑然とした単なる乗降場としての駅から、街のシンボルとしての駅舎になり、近代的都市景観が出現する。一方、駅と駅との中間部では、高架化により、朝夕のラッシュ時の踏切遮断時の車の渋滞による閉鎖感から車の秩序ある流れの景観へと向上し、また、沿道の整備などを含め、周辺環境に融和するように配慮するため、高架構造物の出現による違和感は少ない。
 h 史跡・文化財
 計画路線は周知の埋蔵文化財包蔵地を通過するが、文化財保護法の規定に従い関係機関と十分に協議し適切な措置をする。また、工事の施行に際し、新たに埋蔵文化財が発見されれば、文化財保護法の規定に従って対処するため、影響は少ない。
 エ 構造形式の決定
 以上のとおりの本件調査及び環境影響評価による総合的な検討の結果、参加人は、9号線の本件事業区間のうち、成城学園前駅付近を除くその余の区間の構造としては嵩上式を採用すべきであって、成城学園前駅付近については踏切除却のために掘割式にすることとし、その上で、これらの構造形式を採用することは、環境への影響を考慮しても特段問題がないと判断した(〔証拠略〕)。
 オ 都市計画の案の縦覧等
 (ア)東京都、世田谷区及び《A》は、平成3年8月、平成5年決定の案につき、素案説明会を6回開催し、同素案説明会では、本件事業区間における9号線の構造形式についても説明がされたが、これに対する意見を述べた者の中では、9号線の本件事業区間を高架式とすることに反対する意見が多数であった(〔証拠略〕)。
 (イ)参加人は、法17条1項に基づき、9号線都市計画にかかる平成5年決定の案の縦覧について、平成4年1月13日必要な事項を東京都公報において公告し、同日から同月27日までの期間、東京都都市計画局総務部、世田谷区役所で、法14条1項に規定する総括図、計画図及び計画書を縦覧に供した。なお、世田谷区の出張所等においても関係書類を閲覧できるよう措置した(〔証拠略〕)。
 (ウ)世田谷区長は、法17条1項に基づき、本件各付属街路都市計画につき、平成4年1月13日付けで都市計画案を公告し、当該都市計画案を同日から同月27日までの期間、公衆の縦覧に供した(〔証拠略〕)。
 (エ)平成4年1月には、平成5年決定の案及び環境影響評価書案につき、住民に対する説明会が6回、同年4月には、同評価書案に対する公聴会が、さらに、同年8月には、同評価書案についての意見等に関する見解書の説明会が6回、それぞれ開催された(争いがない)。同公聴会においては、27人の公述人が意見を述べ、そのうち1名が9号線の本件事業区間における高架化を容認したが、その他の公述人は、高架化による環境への悪影響や高架施設の景観上の問題や圧迫感の問題等を理由に、高架化に反対し地下化を要求する意見を述べた(〔証拠略〕)。また、同年1月23日から同月30日までの6日間にわたって、本件各事業に関する相談コーナーが設置され、のべ36人が質問等をしてこれを利用した(〔証拠略〕)。
 (オ)参加人は、法18条1項に基づき、関係市町村である世田谷区の意見を聴き、平成4年12月18日、平成5年決定の案を東京都都市計画地方審議会に付議するとともに、世田谷区の本件各付属街路都市計画につき法19条1項の承認をするに先立って、同条3項に基づき、同都市計画を東京都都市計画地方審議会に付議した(〔証拠略〕)。
 (カ)また、世田谷区長は、世田谷区の本件各付属街路都市計画につき法21条1項に基づき変更決定をするに先立って、世田谷区都市計画審議会条例2条1号に基づき、同都市計画を世田谷区都市計画審議会に付議した(〔証拠略〕)。
 カ 平成5年決定等に係る審議(〔証拠略〕)
 (ア)平成4年12月18日の東京都都市計画地方審議会においては、9号線都市計画につき、事業の実施状況として、昭和46年に環状8号線交差部分の在来線の高架化が完了し、昭和53年には、代々木上原付近約2キロメートルにつき複々線化及び高架化が完了していること、和泉多摩川と喜多見の間の区間について当時複々線化及び高架化並びに喜多見車両基地(平成2年変更分)について事業施行中であることを説明の上、今回の付議については、本件事業区間である喜多見駅付近から梅ヶ丘駅付近までの区間につき、関係機関との調整が整って事業化の目処が立ったとして、従前の9号線都市計画の変更を求めるものであること、本件事業区間においては、踏切が17か所あり、ラッシュ時1時間には約50分以上踏切の遮断が続き、交通渋滞を招いているほか、鉄道によって地域が分断されて一体的なまちづくりに支障となっており、また、鉄道輸送において混雑率が200パーセントに達していて、複々線化による輸送力増強が課題となり、早期の事業化が急がれていることが説明された。
 (イ)付議に係る平成5年決定の案の計画内容につき、従来、本件事業区間については、成城学園前付近で地表式で、その他は高架式で都市計画決定がされているところ、今回の変更に当たって、その時点で、改めて立体交差の形式について、河川の位置や地盤の高さの問題といった地形の条件、交差する道路との立体交差の状況、事業費、工期等を総合的に検討した結果、成城学園前付近では駅東西の踏切を解消するため地表式を掘割式に変更し、他の区間についてはそれまでの計画どおり高架式とするものとしたこと、駅については、福祉のまちづくりのため、本件事業区間のうちの6駅についてエスカレーターを設置するなどのため幅員を拡幅していること、経堂駅については二面四線のホームとなっているところを乗客の利便性のために二面五線に変更し、そのために区域を拡張するものであることとの説明がされた。
 また、同審議会には、参加人の決定すべき9号線都市計画の変更に加え、関連案件として、世田谷区が決定すべきものとして、本件各付属街路都市計画及び石仏公園の都市計画の変更が一括して付議され、本件各付属街路事業につき、本件事業区間の9号線の北側に、環境に配慮して日照条例を準用し環境側道としての付属街路、付替え道路としての付属街路及びまちづくりに役立てるための付属街路を設置するものである旨の説明がされ、あわせて、同付属街路の設置に伴って、石仏公園の区域について都市計画の変更を求めるものであることが説明された。
 (ウ)平成5年決定案に対しては、2週間の縦覧期間に、1544通の意見書の提出があり、そのうち賛成意見が74パーセントである1146通で、1303名・8団体からであり、反対意見は359通(23パーセント)で、355名・4団体からであった(なお、その他の意見が39通で3パーセントであった。)として、そのうちのいくつかの意見が紹介され、賛成意見では、よいまちづくりのためには駅や電車がみえることが必要であるとして積極的に高架化を求める意見や、早期事業化を求める意見、高架化に賛成ではあるが環境対策には十分配慮してほしいといった意見が紹介された。反対意見については、高架化に反対して地下化を求めるものが数通紹介されたが、東京都の見解として、前記(ア)の計画的条件、地形的条件及び事業的条件の検討の結果の要点を説明の上、地下式の採用は困難であり、取り分け地下式を採用すると高架式に比べて事業費が1100億円から1700億円増加し、その費用負担が大きな問題となる旨(〔証拠略〕)の説明がされた。また、世田谷区長からの意見として、環境保全対策と住民の理解と協力を得ながら事業推進に努められたいという付帯意見を付して同意する旨の意見が紹介された。
 本件各付属街路事業についての意見書は、40通の提出があり、14通で15名から事業の早期の完成を望む等の賛成意見があった一方で、25通で25名から9号線の本件事業区間の構造を地下式にすれば付属街路は不要となる等の反対意見があった。
 (エ)また、環境影響評価につき、とられた手続を説明の上、評価の結果について、前記の環境影響評価書の内容の要点が説明された。
 (オ)その後、「小田急線の地下化を求める会」の者を含む合計3名から、平成5年決定の案に対する意見陳述がされ、これらの意見陳述においては、9号線の本件事業区間の地下化の事業費が1950億円である旨の代替案(前記《C》教授の説)があるのだから高架化を強行するべきではない、東京都の行った環境影響評価がずさんなもので違法である、二線シールド方式による地下式は優れており、環境面からも四線高架式を採用するべきではないといった理由で、いずれも9号線の本件事業区間の高架化を内容とする平成5年決定の案に対して反対する旨の意見が述べられた。
 (カ)質疑応答及び協議においては、上記意見陳述で紹介された代替案と本件調査による事業費見積の違いや、地下式の採用を求める住民の意見も相当強い中で地下化を採用できない理由、環境影響評価における騒音の測定等について委員から質問があり、幹事から前記の本件調査の内容のうち関連する部分に基づいて回答がされ、委員からは、本件各事業については地元住民の十分な理解と協力が得られておらず、地元住民の試算した地下式についても検討し、相互に理解が得られるようさらに協議すべきであって、付議は時期尚早であったとする意見、本件各事業の実施に当たってはいまだ不十分な点が散見され、十分関係住民との話合いを進めながら、環境保全に留意するよう強く要望する旨の意見、高速鉄道の立体化は地下式で行うのが一般常識で、一日も早く地下化を要望する住民の意見に応えるべきであり、高架化には絶対に納得できず、また、環境影響評価の実施方法についても住民の指摘を踏まえるべきであり、本件調査の結果は公開をして欲しいといった意見が述べられたが、採決の結果、賛成多数で原案どおり決定された。
 キ 平成5年決定
 参加人は、法21条2項において準用する法18条1項に基づき、9号線都市計画を次のとおり変更する平成5年決定をし、これを平成5年2月1日付け東京都告示第105号により告示した(〔証拠略〕)。
 追加する部分 世田谷区祖師谷一丁目、祖師谷三丁目、砧六丁目、砧八丁目、船橋一丁目、桜丘二丁目、経堂二丁目、経堂三丁目、経堂四丁目、宮坂二丁目、宮坂三丁目、豪徳寺一丁目及び梅丘一丁目各地内
 削除する部分 世田谷区祖師谷一丁目、砧六丁目、桜丘二丁目、桜丘五丁目、船橋一丁目、経堂一丁目、経堂二丁目、経堂四丁目、経堂五丁目、宮坂二丁目、豪徳寺一丁目及び梅丘一丁目各地内
 変更する部分 世田谷区成城二丁目、成城三丁目、成城四丁目、成城五丁目及び成城六丁目各地内
 平成5年決定は、都市高速鉄道の利便性の向上、混雑の緩和、踏切における渋滞の解消、一体的なまちづくりの実現を図るために、本件事業区間について、次のとおり、鉄道境域の一部の変更及び成城学園前駅付近の構造の変更を行ったものであった。
 (ア)世田谷区成城二丁目から成城六丁目までの区間につき、構造を地表式から掘割式に変更した。
 (イ)世田谷区祖師谷三丁目から梅丘一丁目までの区間につき、一部区域(駅部を含む。)の変更を行った。
 (ウ)成城学園前駅、祖師ヶ谷大蔵駅、千歳船橋駅、経堂駅、豪徳寺駅及び梅ヶ丘駅について、エスカレーターを設置するなどのため、幅員を拡幅し、都市計画施設の区域の追加を行った。
 ク 平成5年決定時点での構造
 平成5年決定により、本件事業区間付近の構造は次のとおりとなった。
 (ア)世田谷区喜多見九丁目から成城四丁目  約620メートル 嵩上式
 (イ)世田谷区成城四丁目から成城六丁目   約830メートル 掘割式
 (ウ)世田谷区成城六丁目から代田三丁目  約5520メートル 嵩上式
 この結果、9号線都市計画の事業区間全体は、次のとおりとなった。
 起点 世田谷区喜多見九丁目
 終点 足立区綾瀬三丁目
 主な経過地 世田谷区桜丘二丁目、豪徳寺一丁目及び北沢二丁目、渋谷区上原一丁目、代々木神園町及び神宮前一丁目、港区南青山四丁目及び赤坂五丁目、千代田区霞が関一丁目、大手町一丁目及び神田駿河台四丁目、文京区千駄木三丁目、荒川区西日暮里五丁目並びに足立区千住二丁目
 延長   約3万2130メートル
 構造
 世田谷区喜多見九丁目から成城四丁目    約620メートル 嵩上式
 世田谷区成城四丁目から成城六丁目     約830メートル 掘割式
 世田谷区成城六丁目から代田三丁目    約5520メートル 嵩上式
 世田谷区代田三丁目から渋谷区上原三丁目 約1740メートル 地表式
 渋谷区上原三丁目から元代々木町     約1050メートル 嵩上式
 渋谷区元代々木町から元代々木町      約190メートル 地表式
 渋谷区元代々木町から足立区千住旭町  約19020メートル 地下式
 足立区千住旭町から千住旭町        約230メートル 地表式
 足立区千住旭町から綾瀬三丁目      約2930メートル 嵩上式
 (3)本件各付属街路都市計画の決定
 世田谷区は、平成5年1月11日、参加人の承認を受けて(〔証拠略〕)、東京都市計画道路に追加する方法により本件各付属街路都市計画の変更を決定し、法20条1項及び2項に基づき、平成5年2月1日、本件各付属街路都市計画を告示する(〔証拠略〕)とともに、建設大臣及び参加人に対し、法14条1項に規定する総括図、計画図及び計画書をそれぞれ送付し(〔証拠略〕)、世田谷区長は世田谷区役所においてこれらを縦覧に供した(〔証拠略〕)。
 (4)本件線増事業の遂行等
 ア 前記建運協定4条が、連続立体交差化事業のうち、線増連続立体交差化の場合における鉄道施設の増強部分以外の部分に係る事業は、都市計画事業として都市計画事業施行者が施行する旨規定していることからすると、線増部分に係る事業については、鉄道施設の増強部分に係る事業として、鉄道事業者が施行することとなるものと解され、本件においても、鉄道事業者である《A》が本件線増事業を施行することとなった。
 イ 《A》は、鉄道事業法の前身である地方鉄道法(大正8年4月10日法律第52号。〔証拠略〕)13条に基づく工事施行の認可につき、同法施行規則(〔証拠略〕)17条に基づき、代々木上原・喜多見両停車場間を複線から複々線に変更することにつき、昭和45年5月20日付けで運輸大臣の認可(鉄監第409号。〔証拠略〕)を受け、また、同条2項に基づき、昭和48年11月10日付けで、東北沢・豪徳寺間について、昭和60年11月19日付けで、先の区間に加えて豪徳寺・和泉多摩川間についても、それぞれ複線を複々線に変更する旨の工事方法書の変更の認可(73東陸鉄監第599号〔証拠略〕並びに関鉄監第706号〔証拠略〕)を受け、本件線増事業の施行を開始した。
 ウ 日本鉄道建設公団は、その事業として、一定の鉄道施設等の建設及び大規模な改良(以下「大改良」という。)を行うことができるとされ(日本鉄道建設公団法19条1項4号、同法施行規則1条)、大改良には、本線路が複線である鉄道等を本線路が四線である鉄道等とするための改良が含まれている(同法施行令1条1号)ところ、《A》は、運輸大臣に対し、昭和48年11月12日及び昭和60年12月3日付けで、前記地方鉄道法に基づき認可を受けた本件線増事業に関し、同法22条1項に基づき、日本鉄道建設公団において本件線増事業に係る鉄道施設の大改良を行うことを申し出て、運輸大臣は、これを受けて、昭和48年12月7日及び昭和61年1月7日付けで、同条2項に基づき、工事実施計画を定め、工事の完成予定日をそれぞれ昭和52年3月31日及び昭和70年(平成7年)3月31日として、日本鉄道建設公団に工事の実施を指示した(〔証拠略〕)。日本鉄道建設公団が大改良を行う本件線増部分の鉄道施設は、その完成後、《A》が日本鉄道建設公団より有償で譲渡を受けて《A》の資産となることとなっている(同法23条)。
 エ これらによって、本件線増事業は、本件各事業に先立って着手され、《A》及び同公団はその事業に必要な土地を逐次任意買取により取得した。
 なお、9号線と交差する道路については、別途都市計画決定がされており、未整備の都市計画道路については、都市計画道路の事業主体である東京都等において都市計画事業の認可を得て施行することとなるべきものであった。
 (5)本件各事業に対する世田谷区議会等の反応等
 世田谷区議会議員ら及び世田谷区議会議長は、昭和45年12月7日、世田谷区議会は昭和31年以降再三にわたって高速鉄道の地下化を決議し、既に東急玉川線は新玉川線として地下化工事が着々と進められているとして、運輸大臣、建設大臣及び参加人に宛てて、9号線の地下化を求める意見書を提出し、世田谷区議会議長は、昭和48年11月30日にも、運輸大臣及び参加人に宛てて、小田急線の地下化を求める要望書を提出した。その後、世田谷区議会は、昭和61年11月27日、参加人、運輸大臣及び建設大臣に宛てて、下北沢駅周辺並びに成城学園前駅周辺地域の踏切を解消するよう都市計画の変更を求める要望書を提出し(〔証拠略〕)、世田谷区長は、昭和62年10月30日、参加人に宛てて、昭和61年の世田谷区議会の要望書とほぼ同旨の要望書を提出して(〔証拠略〕)、本件各事業の早期実施を求め、さらに、世田谷区長は、平成5年11月15日、建設大臣に宛てて、9号線の本件事業区間の複々線化及び立体交差化の早期実施を求める要望書を提出し(〔証拠略〕)、本件各事業の早期実施を求めた。また、経堂地区町会等は、同年12月22日、建設大臣に宛てて、9号線の本件事業区間の線増連続立体交差事業の早期実施を求める要望書を提出し(〔証拠略〕)、本件各事業の早期実施を求めた。
 (6)本件各認可に至る経緯
 ア 本件各事業及び本件線増事業の進展
 高架式による線増連続立体交差化事業の工事を行う場合、在来線の上に直ちに高架橋工事を行うことはできないから、仮線を敷設するための用地を確保し、当該仮線部分に在来線の移設工事を行った上、在来線相当部分に高架橋工事を行い、当該高架橋工事完成後、線路を元の位置である在来線相当部分に戻し、仮線を撤去した上、さらに、線増部分の高架橋工事を行う方法と、線増部分の高架橋工事を行った上、在来線の仮線を当該高架橋へ設置し、在来線相当部分に高架橋工事を行うという方法が考えられるところ、後者の方法は、前者の方法に比べて、仮線の撤去工事を省略することが可能で、効率的であることから、本件の工事も後者の方法により行われた(〔証拠略〕)。
 したがって、この場合、在来線の仮線の敷設工事は、線増工事と兼ねて行われるものであるところ、本件線増事業は、本件各事業に先行して着手され、その工事完成予定日は平成7年3月31日とされていたにもかかわらず、本件各認可の時点では、それに必要な用地の取得すら完了しておらず、用地取得率は約86パーセントにとどまっており(〔証拠略〕)、本件各認可に当たってこの事業の完成見込時期が具体的に検討された形跡もない(なお、この事業は、工事完成予定日から6年以上経過した本件口頭弁論終結時(平成13年6月4日)においても完成しておらず、わずかに、祖師ヶ谷大蔵駅付近の約1.9メートルの区間が平成12年4月23日に、経堂駅付近が同年6月に完成したにすぎない(〔証拠略〕)。)。
 イ 《乙3》建設大臣と住民らとの話合い
 平成5年11月2日、当時の《乙3》建設大臣と住民との間で、本件各事業等に関する話合いが持たれたところ、その話合いにおいて、同大臣は、地下式、高架式の各事業費の積算に問題があるとするならば、お互いに出せる資料を出して話合いをすれば理解を得られるのではないかとの示唆をし(〔証拠略〕)、東京都では、同示唆を受けて、平成5年12月27日以降平成6年4月6日までの間に住民との間で合計5回の話合いを持ち、東京都による事業費算定の根拠と《C》教授提案の事業費算定の根拠の突合せを行った。
 その中で、東京都による高架式の事業費の算出においては、用地買収費を昭和63年以降の分に限定し、それ以前の既に買収済みの約1万8000平方メートルについては、その取得費を算定に含めていないこと、東京都による地下式の事業費の算出においては、用地取得費において、地上権設定の方法により、買収の場合よりも相当程度用地取得費を低減することが可能であるのに、その検討を行っておらず、また、地下式においても、用地取得費等のかさむ四線並列方式を採用し、又は、二線二層方式を採用するとしても駅部等を中心に開削方式を相当広範囲にわたって採らざるを得ないとし、用地取得費の低減を図ることができる二層二線シールド工法の採用区間を限定していること、他方、《C》教授案においては、高架式の場合の用地取得費において、東京都の立案では設置が予定されていない鉄道の南側の側道の取得費を含んでおり、その分相当程度高架式の事業費が高く設定されていること、地下式の場合のホームの幅を3メートルとして積算しているところ、東京都においては、エレベーターの設置等のために、より広いホームの幅が必要となると考えていて、その分《C》教授案の方が用地取得費が低廉に見積もられていること、経堂駅においては準急線と緩行線の乗換ができるようにし、かつ、列車の運行上必要である経堂駅付近の留置線・保守線を使用する必要があるのに対し、二線二層シールド工法ではこれができないことから、部分的にしろ《C》教授案とは異なる工法を採る必要があることなどが判明し、双方の算出根拠の共通点及び相違点自体については相当程度の共通の認識が得られたが、それ以上に事業費の算定結果がいかにあるべきかについては、結論は得られなかった。
 (7)本件各認可
 ア 本件鉄道事業認可
 (ア)東京都は、建設大臣に対し、平成6年4月19日付けで、本件鉄道事業につき施行期間を平成12年3月31日までとして認可の申請をした。
 (イ)平成6年4月28日には、《乙3》に代わって《乙4》が建設大臣に就任した。同大臣は、次のとおり都市計画事業認可の要件を検討した。すなわち、同要件のうち、都市計画との適合性については、本件鉄道事業の都市計画決定の内容が、総括図、計画図及び計画書によって表示され、計画書には都市施設の種類、名称、位置及び区域その他政令で定める事項として構造が定められていたことから、本件鉄道事業の内容において都市計画に適合すべきもののうち、その位置及び区域については、「事業地を表示する図面」(法60条3項1号)として申請書に添付された位置図及び平面図と計画図を照合し、また、構造については、「設計の概要を表示する図書」(同項2号)として申請書に添付された標準断面図と計画書を照合して、同事業の内容が9号線都市計画に適合するものと判断した(〔証拠略〕)。
 その際、同大臣は、本件鉄道事業が現在在来線が存在する土地部分を立体化して踏切の解消を図ることにあるとして、事業地の範囲が在来線相当部分に限られ、本件線増事業に要する部分は含まれないものとして上記判断をした。
 また、事業施行期間の適切性の要件について、同大臣は、上記申請のとおり、本件鉄道事業の施行期間を平成12年3月31日までとすることが適切であると判断した(〔証拠略〕)。
 そして、同大臣は、上記申請が、法60条所定の必要事項を記載して必要な書類を添付した申請書により行われ、本件鉄道事業の場合、都市計画事業者である東京都が、事業の施行に関して行政機関の免許、許可、認可等の処分を得ることを特に必要としないことから、平成6年5月19日付けで、本件鉄道事業につき、その施行期間を同事業の認可の告示の官報登載の日から平成12年3月31日までとして、これを認可し、平成6年6月3日付けでこれを告示した。
 (ウ)上記の事業施行期間の適切性について、被告は、〔1〕本件鉄道事業の事業施行期間が、本件鉄道事業と同程度の規模の事業における事業期間に照らして均衡を失するものではなく、〔2〕在来線を存置したまま高架橋を建設するための用地の買収が相当程度進んでおり、事業認可後速やかに高架橋本体工事に着手することが可能であって、〔3〕本件鉄道事業においては、本件事業区間6.4キロメートル(環状8号線の既設区間約700メートルを含む。)を工区分け施行することとしていたことから、同大臣が本件鉄道事業につき認可申請期間内の施行が可能であると考えたことは適切であった旨主張する。
 しかしながら、同主張に沿う証拠(〔証拠略〕)をもってしても、〔1〕については、いかなる事業とのどのような比較において本件鉄道事業の事業期間が平成12年3月31日までの6年弱の期間で足りると判断したのかは明らかでなく、〔2〕については、在来線の仮線の敷設工事を兼ねる本件線増事業が、本件各事業に先行して着手され、その工事完成予定日は平成7年3月31日とされていたにもかかわらず、本件各認可の時点では、それに必要な用地の取得すら完了しておらず、用地取得率は約86パーセントにとどまっていたことは、前記のとおりであって、何をもって本件鉄道事業の認可後速やかに高架橋本体工事に着手することが可能であるとするのかは不明であり、〔3〕についても、工区を分けずに施行した場合にどの程度の施行期間が必要であるのに対し、工区分け施行をした場合にどの程度の施行期間の短縮が見込まれるのかといった点について何らつまびらかとなっていないのであって、建設大臣が、本件鉄道事業の施行期間をいかなる根拠により申請に係る期間のとおりで適切であると判断したのかについては、確たる根拠があったものとは認められない。
 ウ 本件各付属街路事業認可
 東京都は、建設大臣に対し、平成6年4月19日付けで、本件各付属街路事業につき、その施行期間を上記の本件鉄道事業の施行期間と同じく平成12年3月31日までとして認可の各申請をし、建設大臣は、平成6年5月19日付けでこれをいずれも認可し、同年6月3日付けでこれをそれぞれ告示した(〔証拠略〕)。
 (8)公害等調整委員会への責任裁定申請等(アないしウにつき、〔証拠略〕。エは当裁判所に顕著な事実である。)
 ア 小田急小田原線の新宿から成城学園前までの沿線において居住、営業等をしている者を中心とする世田谷区の住民ら(一部本件の原告を含む。)は、平成4年5月7日、公害等調整委員会に対し、《A》を相手方として、小田急小田原線の列車から発生する騒音・振動等により、睡眠妨害・会話妨害を中心とする生活妨害の被害を受けた旨主張して、民法709条に基づく慰謝料として申請前の被害につき申請人一人当たり50万円、申請後被害が解消されるまでの被害につき申請人一人当たり日額500円及び遅延損害金の各支払を求めて、公害紛争処理法42条の12に基づく責任裁定の申請をした(小田急線騒音被害等責任裁定申請事件、公調委平成4年(セ)第1号ないし第3号、平成6年(セ)第1号ないし第3号、平成8年(セ)第2号、平成9年(セ)第1号・第2号及び第4号)。イ これに対し、公害等調整委員会は、平成10年7月24日、裁定を下し、結論として、申請人らの請求のうち、将来請求に係る申請を却下したが、審問終結時までの請求に係る申請については、申請人らのうち34名が受けた被害が受忍限度を超えるものとして被申請人である《A》による不法行為の成立を認め、これらの申請人の申請につき、一人当たり14万4000円から31万8000円(合計956万3400円)の慰謝料及び遅延損害金の支払を求める限度でこれを認容し、その余の請求に係る申請は理由がないとして棄却した。
 ウ 同委員会は、同裁定の理由において、侵害行為の状況として、小田急小田原線においては1日に800本近くの列車が午前5時ころから翌日午前1時過ぎまで連日運行されており、これによる騒音・振動が沿線の相当範囲の地域に到達することは自明であるとし、申請人らが居住地等の屋外において暴露されている騒音は、24時間の等価騒音レベル方式の値(LAeq24h)で36デシベルから73デシベル、ピークレベル方式の値(LAmax)で51デシベルから90デシベルであり、振動は41デシベルから74デシベルであるとして、申請人ら各自について睡眠妨害等の生活妨害の被害を認定し、これらの被害と小田急小田原線の列車から発生する騒音・振動との間の因果関係を認め、諸般の事情を総合して考慮した結果、申請人らが受けた被害の程度は、屋外における騒音のレベルに相応するものと判断し、騒音のレベルが24時間の等価騒音レベル方式の値で70デシベル以上の者及びこれに該当しないが睡眠への影響を考慮してピークレベル方式の値で85デシベル以上の者(ただし、非居住者は除く。)が受忍限度を超える被害を受けたものと認め、これによる損害の月額を3000円として居住等の期間に応じて算出した額を損害の基本額とし(ただし、非居住者についてはその4割を減じた額)、審問終結時までの損害の賠償請求を一部認めた。
 エ なお、本件各認可以前に、鉄道騒音被害について訴訟となった著名な事件としては、名古屋市南部の新幹線沿線の住民らが、新幹線の列車の走行に伴う騒音・振動により、頭痛等の被害や会話妨害・睡眠妨害等の日常生活上の被害を被っているとして、日本国有鉄道(当時)に対し、新幹線の一定範囲における侵入・走行の差止請求並びに過去の慰謝料及び将来の慰謝料の請求をした事件(一審・東海道新幹線騒音振動侵入禁止等請求事件、名古屋地裁昭和49年(ワ)第641号、判例時報976号40頁)があり、一審判決では、過去の慰謝料請求が一部認められ(認容合計額は約5億2815万円)、差止請求は棄却され、将来の慰謝料請求は却下された。
 その控訴審(名古屋高裁昭和55年(ネ)第487号・第492号・昭和57年(ネ)第88号、判例時報1150号30頁)の判決では、一審判決同様、過去の慰謝料請求だけが一部認容され、差止請求は棄却され、将来の慰謝料請求は却下されたが、その理由中において、同事件における受忍限度は、騒音につき73ホン、振動につき64デシベル(ともに屋外値)と定めるのが相当であるとされ、請求が一部認容された原告一人当たりの平均認容額は約66万5000円で、認容合計額は約2億9895万円であった。
 同控訴審判決については、当事者双方から上告があったが、その後、要旨として、日本国有鉄道は、住民らに対し約5億円を支払い、昭和64年度末までに騒音を75ホン以下とするよう最大限努力し、住民らは訴えを取り下げる旨の裁判外の和解が昭和61年3月に行われ、同事件は訴えの取下げにより終了した(昭和60年行政関係判例解説[法務省訟務局内行政判例研究会編集]194頁)。
 3 原告らの権利関係について
 (1)原告《甲4》が付属街路第5号線事業の事業地内に建物を所有していること、原告《甲5》が付属街路第9号線事業の事業地内に土地を所有していること、原告《甲6》、同《甲7》、同《甲8》、同《甲9》及び同《甲10》がそれぞれ付属街路第10号線事業の事業地内に土地を所有していることは当事者間に争いがない。
 (2)原告《甲11》は、かつて、本件土地(1)を所有し、本件土地(1)上に本件建物を所有していたが、平成12年11月24日、本件土地(1)のうち本件鉄道事業の事業地内に存する部分を分筆して、本件土地(2)としてこれを東京都に売却し、所有権移転登記手続をした。また、同原告と東京都は、平成12年11月24日、本件建物につき物件移転補償契約を締結し、本件建物の移転期限を平成13年3月31日と定め、同原告は、上記契約に基づき、上記移転期限までに、本件建物のうち本件土地(2)上に存する部分を収去し、本件土地(2)を東京都に明け渡した。同原告は、平成12年11月24日、本件土地(1)のうち本件線増事業の事業地内に存する部分を分筆した土地である別紙物件目録1(3)記載の土地(以下「本件土地(3)」という。)を日本鉄道建設公団に売却して所有権移転登記手続をし、さらに、日本鉄道建設公団との物件移転補償契約に基づき、移転期限である平成13年3月31日までに、本件建物のうち本件土地(3)上に存する部分を収去した上で、本件土地(3)を日本鉄道建設公団に明け渡した(〔証拠略〕)。
 (3)原告《甲12》は、祖師ヶ谷大蔵駅付近の本件線増事業の事業地内とされる地域内に別紙物件目録3(1)記載の建物(〔証拠略〕)と同目録3(2)記載の土地(〔証拠略〕)を所有していたが、平成9年7月6日、日本鉄道建設公団に対して上記土地の一部である同目録3(3)記載の土地(〔証拠略〕)の所有権移転登記手続をした。同原告は、日本鉄道建設公団とその代理人と称する《A》の職員から騙されて買収に協力し後に真実を知ったと主張して、東京地方裁判所において、日本鉄道建設公団との間で係争中である(〔証拠略〕)。しかしながら、上記移転登記の原因となった契約に取消原因があったか否か、取消権が有効に行使されたか否か、同契約がそもそも無効なものか否かといった同契約の効力を否定する事実の有無については、本件全証拠をもっても不明というほかない。
 (4)原告《甲1》は、付属街路第5号線事業の事業地内にある別紙物件目録4(1)記載の土地(〔証拠略〕)を、その所有者である《B》から、普通建物所有の目的で、同原告の夫である《甲13》と共同して賃借人として借り受け、同夫が所有する同目録4(2)記載の建物(〔証拠略〕)に居住して文房具店を経営している(〔証拠略〕)。
 (5)原告《甲14》は、付属街路第9号線事業の事業地内に存する別紙物件目録5(1)記載の区分所有建物(〔証拠略〕)の共有持分権を有しているところ、同建物の敷地である同目録5(2)記載の土地は、同原告の妻《甲15》が6分の1の共有持分を有し(〔証拠略〕)、同人の親族である原告《甲5》が3分の1の共有持分を有しており、原告《甲14》は、同敷地の共有者から、同敷地の借地権の設定を受けている。

 4 争点1(原告適格)について
 (1)行政事件訴訟法9条は、取消訴訟の原告適格について規定するところ、同条にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいい、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、このような利益も上記にいう法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである(最高裁平成4年9月22日第三小法廷判決・民集46巻6号571頁、最高裁平成9年1月28日第三小法廷判決・民集51巻1号250頁)。
 (2)そこで、本件各認可について、上記の観点から検討する。
 ア 本件で取消しが求められているのは、建設大臣が法59条2項に基づいて東京都に対してした本件鉄道事業及び本件各付属街路事業の認可処分である。
 そこで、都市計画事業の認可に関する具体的規定を検討するに、都市計画事業の認可が告示される(法62条1項)と、次のような法的効果が生ずることが規定されている。すなわち、〔1〕事業地内において当該事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更、建築物の建築、その他工作物の建設を行うこと等が制限され(法65条1項)、〔2〕事業地内の土地建物等を有償譲渡しようとする際には、施行者に優先的にこれらを買い取ることができる権利が与えられ(法67条)、〔3〕認可をもって土地収用法20条の規定による事業の認定に代え、上記告示をもって同法26条1項の規定による事業認定の告示とみなした上、都市計画事業を同法の事業に該当するものとみなして同法の手続により土地の収用、使用をすることができるものとされていろ(法69条以下)。これらの規定によれば、都市計画事業の事業地内の不動産に権利を有する者は、違法な認可がされれば、それによって自己の権利を侵害され又は必然的に侵害されるおそれが生ずることとなるのであるから、法59条以下の認可の手続・要件等を定めた規定は、都市計画事業の事業地内の不動産につき権利を有する者個々人の利益をも保護することを目的とした規定と解することができ、したがって、事業地内の不動産につき権利を有する者は、認可の取消しを求める原告適格を有するものと解すべきである。
 イ これに対し、事業地の周辺地域に居住し又は通勤、通学するにとどまる者については、認可によりその権利若しくは法律上保護された利益が侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあると解すべき根拠は認められない。
 すなわち、法は、総則において、「この法律は、都市計画の内容及びその決定手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もって国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする」(法1条)、「都市計画は、農林漁業との健全な調和を図りつつ、健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保すべきこと並びにこのためには適正な制限のもとに土地の合理的な利用が図られるべきことを基本理念として定めるものとする。」(法2条)、「国及び地方公共団体は、都市の整備、開発その他都市計画の適切な遂行に努めなければならない。」、「都市の住民は、国及び地方公共団体がこの法律の目的を達成するため行う措置に協力し、良好な都市環境の形成に努めなければならない。」(法3条)と規定しており、これらの総則規定を見る限りでは、法は、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保するなどの公益保護の観点から都市計画について規定しているものであり、法59条の都市計画事業の認可の制度も、基本的視点としては上記の観点から設けられたものということができる。また、認可等の基準を定める法61条の規定からも、事業地の周辺地域に居住する者個々人の個別的利益が保護の対象とされていることを直ちに読みとることはできない。
 したがって、事業地の周辺地域に居住し又は通勤、通学しているが事業地内の不動産につき権利を有しない者は、認可の取消しを求める原告適格を有しないというべきである(最高裁平成11年11月25日第一小法廷判決・判例時報1698号66頁)。
 (3)ア 原告らは、〔1〕本件鉄道事業認可の前提となる都市計画については、法13条1項柱書き後段が公害防止計画に適合することを要件としているところからみて、当該事業認可を通じて近隣住民の平穏な環境を享受する権利等の個々人の個別具体的利益をも保護すべきものと位置づけている、〔2〕法16条、17条、66条は地域住民の都市計画決定への参加を実質化するために設けられた規定であって、これらの規定からも法59条、61条1項は、当該事業認可を通じて近隣住民の平穏な環境を享受する権利等の個々人の個別的利益をも保護すべきものと位置づけているとみられると主張し、これを根拠に事業地の周辺住民は認可の取消しを求める原告適格を有すると主張する。
 イ しかしながら、法の総則規定である法1条ないし3条や認可等の基準を定める法61条の規定をみても、事業地周辺居住者個々人の個別的利益を保護したものとみることができないことは前記のとおりであって、このことは、都市計画の基準を定める法13条についても同様であり、法は、公益的見地から、都市計画施設の整備に関する事業の認可等を規制することとしていると解されるのであって、これらの規定を通して事業地周辺に居住する住民等個々人の個別的利益を保護しようとする趣旨を含むものと解することはできない。
 ウ 法13条1項柱書き後段は、当該都市について公害防止計画が定められているときは都市計画は当該公害防止計画に適合したものでなければならないことを定めているが、これも、都市計画が健康で文化的な都市生活を確保することを基本理念とすべきであること等にかんがみ、都市計画がその妨げとならないようにするための規定であって、この規定も、やはり公益的観点から設けられたものと解すべきである。
 エ また、法は、公聴会を開催するなどして住民の意見を都市計画の案の作成に反映させることとし(法16条1項)、都市計画の案について住民に意見書提出の機会を与えることとしている(法17条2項)が、これらの規定も、都市計画に住民の意見を広く反映させて、その実効性を高めるという公益目的の規定と解されるのであって、これをもって住民の個別的利益を保護する趣旨を含む規定ということはできない。
 よって、この点に関する原告の主張には理由がない。
 (4)そこで、本件において原告適格を判断する前提となる事業地の範囲について検討するに、前記認定事実によれば、本件要綱においては、連続立体交差事業調査の際の事業計画の作成に当たっては、鉄道と側道は一体的に設計されるべきものとして取り扱われていることが認められ、実際上も、鉄道に沿って住宅地が連続している区間において鉄道を高架化する場合には、高架施設が生む日影により日照阻害が生じ得ることから、特に高架施設の北側において関連側道として空間をあけることにより日照阻害の問題が生ずることを防ぐ必要があり、そうした都市環境の保全に資する目的で、高架施設に沿って付属街路を設置することが必要不可欠である一方で(昭和51年4月28日運輸省鉄道監督局長・建設省都市局長・建設省道路局長通知「連続立体交差化事業の取扱いについて」においては、鉄道の高架化に関連して、都市環境の保全に資する目的で、高架構造物に沿って、住宅の用に供している土地が連たんしている区間に設置される道路(法に基づく幹線街路を除く。)を「関連側道」として、その幅員及び設置に要する費用の都市計画事業者と鉄道事業者の間における負担割合等を定めている。)、付属街路は、高架施設の存在を前提として都市環境の保全に資する目的で設計されるものであり、高架施設を前提としない道路としての付属街路自体で、都市計画施設たる「道路」としての独立した存在意義を有するものとして設計されるものではないから、付属街路を設置する事業だけでは独立した都市計画事業としての意味を持たないものであるということができ、したがって、付属街路に係る都市計画は、主たる都市計画事業である鉄道の高架化事業に付随する従たるものというべきであり(この点については、前記第2、3(2)(被告の主張)ク(ア)のとおり、被告も認めるところである。)、本件鉄道事業に係る9号線都市計画と本件各付属街路事業に係る本件各付属街路都市計画とは、形式的には異なる都市計画ではあるけれども、その実体的適法性を判断するに当たっては、両者が相俟って初めて一つの事業を形成するという実質を捉え、一体のものとして評価するのが相当である(なお、原告の主張する交差道路用地については、理論的にもこのような関係になく、事業者も異なるのであって、これを本件各事業と一体のものということはできない。)。
 よって、本件においては、本件各認可に係る事業の対象土地全体を一個の事業地と考え、同事業地の不動産に権利を有する者が、本件各認可全体につき、その取消しを求める原告適格を有するというべきである。
 (5)しかして、前記3に認定した事実によれば、原告《甲11》は、本件鉄道事業の事業地内の土地建物につき有していた所有権等の権利を喪失したことが認められ、その他の原告が本件鉄道事業の事業地内の不動産につき権利を有することを認めるに足りる証拠はなく、また、原告《甲12》については、祖師ヶ谷大蔵駅付近の本件線増事業の事業地内とされる地域内にある別紙物件目録3(3)記載の土地の所有権を日本鉄道建設公団に譲渡し、その旨の所有権移転登記手続をしたことは認められるが、その登記の原因となった契約の効力を否定する事実を認めるに足りる証拠はない。しかしながら、別紙原告目録1記載の各原告のうち、原告《甲4》が付属街路第5号線事業の事業地内に建物を所有していること、原告《甲5》が付属街路第9号線事業の事業地内に土地を所有していること、原告《甲6》、同《甲7》、同《甲8》、同《甲9》及び同《甲10》がそれぞれ付属街路第10号線事業の事業地内に土地を所有していることは当事者間に争いがなく、原告《甲1》については、付属街路第5号線事業の事業地内にある別紙物件目録4(1)記載の土地につき賃借権を有していることが認められ、原告《甲14》については、付属街路第9号線事業の事業地内に存する別紙物件目録5(1)記載の区分所有建物(〔証拠略〕)の共有持分権を有し、同建物の敷地である同目録5(2)記載の土地につき借地権を有していることが認められ、したがって、別紙原告目録1記載の各原告9名については、本件各付属街路事業のいずれかの事業地内の不動産につき権利を有していることが認められるから、同各原告については、一体としての本件各認可の取消しを求める原告適格を有するものと認めることができ、その余の各原告については、本件各認可に係る事業地の不動産につき権利を有することを認めるに足りる証拠はないから、同各原告につき本件各認可の取消しを求める原告適格を認めることはできないというべきである。

 5 争点2(本件各認可の適法性)について
 (1)都市計画事業認可の適法要件
 本件において、原告らは、都市計画事業の認可である本件各認可の取消しを求めているところ、法61条は、建設大臣が、法59条2項の都市計画事業の認可をする適法要件として、〔1〕認可の申請手続が法令に違反しないこと、〔2〕事業の内容が都市計画に適合し、かつ、事業施行期間が適切であること、〔3〕事業の施行に関して行政機関の免許、許可、認可等の処分を必要とする場合においては、これらの処分があったこと又はこれらの処分がされることが確実であることの各要件を定めているから、都市計画事業認可が適法であるというためには、以上の各要件を満たすことが必要である。
 また、都市計画事業の認可は、適法な都市計画決定又は変更決定がされていることを前提として、その上に積み重ねられる手続であるから、都市計画決定又は変更決定が違法であれば、当然その認可も違法となるものであり、都市計画決定又は変更決定の違法事由は、上記認可の違法事由としてその取消訴訟において主張することができるものと解され、都市計画事業認可が適法であるというためには、その前提となっている都市計画決定が適法であることも必要である。
 そこで、まず(2)において、本件鉄道事業認可の法61条適合性について検討した上、(3)において、都市計画決定の適法要件について、(4)において、本件において違法判断の対象となるべき都市計画決定は何かについて、(5)において、(4)で検討した都市計画決定の適法性について、それぞれ検討する。
 (2)本件鉄道事業認可の法61条適合性
 ア 事業地の範囲について
 法は、事業認可の要件のひとつとして事業内容が都市計画に適合していることを掲げ(61条1号)、事業地を表示する図面を認可申請書の添付書類としている(60条3項1号)。このことからすると、認可申請にかかる事業地の範囲は都市計画におけるそれと一致することを要するというのが法の趣旨と考えられるが、本件鉄道事業認可申請における事業地の範囲は、都市計画で定められた内容から本件事業区間のみを取り出してその対象とすることを前提としても、平成5年決定における事業地の範囲と明らかに一致していない。
 この点について、被告は、本件鉄道事業の目的は現在在来線が存在している土地部分(以下、この項では「甲部分」という。)を立体化し踏切の解消を図ることにあるから、事業地の範囲は甲部分に限られ、平成5年決定で定められた事業地のうちのその余の部分(以下、この項では「乙部分」という。)は、鉄道事業者が別途に認可を受けて行う本件線増事業の事業地であるから、本件鉄道事業の事業地には含まれないと主張する。
 しかし、本件鉄道事業及び本件線増事業の工事は、前記2(6)アで認定のとおり、まず乙部分に高架橋を築造し、これに在来線の仮線を設置してその運行に供し、甲部分の在来線を撤去して高架橋を築造し線路を敷設することにより全体の工事が完成するというものであって、完成後は中央の二線が急行線に、外側の二線が緩行線の運行に供されることが当初から予定されているのである。すなわち、乙部分は、甲部分に高架橋が完成するまでの相当長期間にわたって、在来線の仮線として用いられる上、甲乙両部分に完成した高架橋は、どの部分が在来線でどの部分が線増部分との区別が困難なものである。このことからすると、被告が主張するように本件鉄道事業を行うのは甲部分、本件線増事業を行うのは乙部分というように截然と区分することはできず、甲乙両部分を通じて双方の事業が渾然一体として行われるというべきものである。このことは、被告においても、両事業が合併施行されるものであり、乙部分に築造中の高架橋工事のために本件鉄道事業の経費も支出されていることを自認していることからも明らかである。
 なお、建運協定4条は、前記のとおり、線増連続立体交差化の場合における鉄道施設の増強部分以外の部分に係る事業は、都市計画事業として都市計画事業施行者が施行することを定めており、これを受けた細目協定4条は、建運協定4条による「線増連続立体交差化の場合における都市計画事業の範囲は、第6条第(1)号(ロ)に規定する高架施設費の鉄道既設分と鉄道増強分との比により、連続立体交差化後の構造物横断面を、原則として在来線の線路中心線に近い一端から区分した場合における鉄道既設分に相当する部分とする。」と規定し、線増連続立体交差事業における都市計画事業の範囲とその余の部分である線増部分との区別を示している。しかしながら、そもそも、建運協定及び細目協定は、法律の委任に基づいて定められたものではなく、あくまでも建設省と運輸省との間の取決めにすぎないのであって、都市計画事業認可手続における事業地の意義を決する効力をもつものではない上、細目協定4条は、その内容において、各事業の実体を何ら考慮することなく、各事業における高架施設費の割合をもって事業の範囲を区分していることからして、同条による事業範囲の区分は、建運協定7条及び細目協定6条による都市計画事業者と鉄道事業者との費用負担の区分をする必要上定められた計算上の区分にすぎず、これをもって、都市計画法上の種々の法的効果を伴う事業認可の対象となる都市計画事業の範囲自体を画するものということはできないのであって、細目協定4条の定めをもって、本件鉄道事業の事業地と本件線増事業の事業地が区別し得るものとすることはできない。
 また、前記のとおり、本件においては、在来線の仮線の敷設工事は線増工事と兼ねて行われるものであるところ、細目協定自体においても、その4条2項では、「連続立体交差化工事のため必要となる仮線の敷設及び撤去は、原則として連続立体交差化に関する都市計画事業の範囲に含めるものとする。」と規定しており、同規定によっても、本件線増事業の工事と兼ねて行われる在来線の仮線の敷設工事を行う地域は、都市計画事業である本件鉄道事業の事業地の範囲に含めるべきものと解することができる。
 したがって、本件鉄道事業認可申請における事業地の範囲は、都市計画との適合性の問題を別にしても、実際に本件鉄道事業の一部である工事を行う地域を同事業の事業地としていない点でそもそも過誤がある上、その基となる都市計画である平成5年決定における事業地の範囲と明らかに一致していないといわざるを得ず、本件鉄道事業認可はこれを看過してされた点で違法なものといわざるを得ない。
 また、仮に、被告が主張するように本件鉄道事業と本件線増事業の事業地が截然と区別できるものであるとしても、双方の境界には容易には決し難い部分があると考えられるのであって、本件鉄道事業認可申請に添付された事業地を表示する図面が同事業の事業地を正しく示しているか否かについては相当綿密な検討を要することとなるが、本件鉄道事業の認可に当たっては、そのような綿密な検討がされた形跡はないし、現時点においても、同図面が正しい事業地を表しているか否かは明らかでなく、この点からも、本件鉄道事業認可は違法といわざるを得ない。
 イ 事業施行期間の適切性
 法は、事業認可の要件のひとつとして事業施行期間が適切であることを掲げている(61条1号)。
 この点について、被告は、同程度の事業との比較、用地買収が相当進んでいること及び工区分けによる施行が可能であることを挙げて、申請にかかる施行期間(約5年9か月)を適切と判断したと主張している。
 しかし、これらの点については、前記2(7)アで認定したとおり、確たる根拠があったとは認めがたいし、後記(4)で説示するとおり、被告が本件各認可の基礎となるべき都市計画の経緯すら正しく認識していなかったことを考え合わせると、被告の判断が十分な検討に基づくものか否かすら疑わしいところである。
 さらに、建設大臣は、当時、本件鉄道事業と本件線増事業の事業地は截然と区分し得るとの前提に立っており、そのように考える以上、本件線増事業による高架橋が幾分かでも完成し在来線の仮線を確保しなければ本件鉄道事業には着手し得ない関係にあるし、本件線増事業による高架橋全部が完成して初めて本件鉄道事業全体に着手し得る関係にあったこととなる。そして、本件線増事業は、昭和45年に事業の認可を受けてから既に20年以上経過し、その完成予定日が本件鉄道事業認可申請から1年足らず先の平成7年3月末とされていたにもかかわらず、在来線の仮線として使用し得る高架橋は全くなく、それに必要な用地すら全部は取得せず取得率は86パーセントにとどまっていたのであり、その後の経緯からしても、本件鉄道事業認可による施行期間も経過した後の平成12年4月に至ってようやく1.9キロメートルの区間について仮線として使用し得る高架橋が完成したにすぎない。このように本件鉄道事業と密接な関連を有し、かつこれに先行している本件線増事業の施行が大幅に遅れていたのであるから、建設大臣としては、その進捗について十分な見通しを行い、その結果に基づいて本件鉄道事業の施行期間を定めるべきであったと考えられるところ、建設大臣がこのような検討を行った形跡はないし、上記のような本件線増事業の進捗状況からすると、被告が考えるような同事業とは截然と区分された意味での本件鉄道事業は直ちには着手し得ない状況であったにもかかわらず、施行期間の始期を本件鉄道事業認可の告示の官報登載の日(平成6年6月3日)と定めていることは極めて不可解であるし、そのようにいつ着手し得るかも不明な事業について終期を平成12年3月31日と定めたことも合理的な根拠に基づくものとは言い難い上、このような状況下で認可をすること自体にも疑問があるといわざるを得ない(なお、本件鉄道事業には、高架線の築造工事自体のほか、それに必要な土地の取得も含まれ、そのような用地の取得行為に着手することは仮線の確保とは無関係になし得るものであるが、本件鉄道事業用地は、被告の見解を前提とする限り、大部分が在来線の敷地であって新たに取得する必要のないものであるし、新たに取得する必要のある部分については、事業認可とは無関係に任意買取をすることが可能なのであるから、特段の事情がない限り、このような用地取得のためにのみ事業認可を得る必要はなく、本件においてはこのような特段の事情は見当たらない。)。
 したがって、本件鉄道事業の事業施行期間が適切であるとの建設大臣の判断は、建設大臣自身の本件鉄道事業と本件線増事業との関係についての理解を前提としても、極めて不合理なものというほかない。
 また、前記説示のとおり、両事業が渾然一体としたもので截然と区分し難いとの考えに立ったとしても、結局在来線の仮線を確保できなければ、事業全体の着手にも至れないのであって、その点については本件線増事業が事業認可から既に20年以上経過しているにもかかわらず完成の確たる目処がたっていたとも認められないのであるから、それについての十分な見通しのないまま(建設大臣が本件鉄道事業の施行期間をいかなる根拠により申請に係る期間のとおりで適切であると判断したのかについて、確たる根拠があったものとは認められないことは前記2(7)アのとおりである。)、申請にかかる事業施行期間が適切であるとしてこれを認可したことは、到底合理的な判断とはいい難く、いずれにしても本件鉄道事業認可には、この点において違法に判断を誤ったものというべきである(また、本件線増事業によって仮線部分の工事を行うことは可能なのであるから、その完成の目処も立たない時点において、あえて本件鉄道事業の認可申請を認めることにも疑問があったといわざるを得ない。)。
 ウ そうすると、その余の点はともかくとしても、本件鉄道事業認可は、上記の2点で法61条に適合しないものというほかない。
 (3)都市計画決定の適法要件
 ア 平成5年決定時における都市計画法の要件
 本件鉄道事業認可の前提となっている都市計画は、都市高速鉄道(法11条1項1号)に関するものであり、本件各付属街路事業認可の前提となっている都市計画は、道路(法11条1項1号)に関するものであって、いずれも都市施設に関する都市計画であるところ、法(ただし、平成5年決定時は平成4年6月26日法律第82号による改正前のもの。)は、都市施設に関する都市計画決定の適法要件につき、〔1〕手続的要件として、法15条、16条、17条、18条、19条、20条(変更につき、さらに法21条2項)の各規定を置き、〔2〕実体的要件として、法13条1項(変更につき、さらに法21条1項)の規定を置いていて、法13条1項が次のとおりの実体的要件を定めている。
 (ア)都市計画が、全国総合開発計画、首都圏整備計画、近畿圏整備計画、中部圏開発整備計画、北海道総合開発計画、沖縄振興開発計画、地方総合開発計画、都道府県総合開発計画その他の国土計画又は地方計画に関する法律に基づく計画及び道路、河川、鉄道、港湾、空港等の施設に関する国の計画に適合すること(法13条1項前段)
 (イ)都市計画が、当該都市の特質を考慮して、5号に掲げるところに従って、土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する事項で当該都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため必要なものを、一体的かつ総合的に定めなければならないこと(法13条1項前段)
 (ウ)当該都市について公害防止計画が定められているときは、都市計画は当該公害防止計画に適合したものでなければならないこと(法13条1項後段)
 原告らの主張中には、法1条ないし3条の総則規定をもって、都市計画決定又は都市計画事業の認可の効力要件であるかのように主張する部分があるが、法1条は法の目的を、法2条は都市計画の基本理念を、法3条は国、地方公共団体及び都市の住民の責務をそれぞれ定めたものであって、いずれも、法の解釈及び運用についての一般的指針とはなり得ても、法に基づいて行われる個々の行政処分の効力の適法要件を定めた規定でないことは明らかである。
 また、原告らは、本件第三セクターの事業参加及びNTT資金導入の違法を主張するが、この主張が本件第三セクターが本件鉄道事業の施行者であることを前提とするものであれば、前記認定事実のとおり本件鉄道事業の施行者は東京都であるから、同主張は前提を欠くこととなり、原告の上記主張が、本件鉄道事業の施行者が東京都であることを前提とした上で、本件第三セクターを設立してこれを本件鉄道事業に関与させ、NTT資金を導入することが違法である旨を主張するものならば、都市計画事業の施行者が、その事業の施行に際し、第三者に工事の施工を委託する等の形で第三者を関与させるか否かの判断の当否は、上記の都市計画決定の実体的要件とは関係がないものというほかないから、原告らの同主張は失当である。
 イ 旧法における都市計画決定の要件
 本件において、昭和39年決定は、旧法の施行されていた当時にされた都市計画決定であるところ、旧法は、3条において、都市計画決定の手続的要件として、〔1〕都市計画審議会の議を経ること、〔2〕建設大臣が決定すること、〔3〕内閣の認可を受けることを定め、都市計画決定の実体的要件については規定していないが、旧法1条は、都市計画の定義として「交通……ニ関シ永久ニ公共ノ安寧ヲ維持シ又ハ福利ヲ増進スル為ノ重要施設ノ計画」と定めていることからすれば、この規定に適合することが実体的要件となっていたということができる。
 ウ 都市計画決定における裁量
 法13条1項柱書き前段は、都市計画基準につき、都市計画は、当該都市の特質を考慮して、都市施設の整備に関する事項で当該都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため必要なものを、一体的かつ総合的に定めなければならない旨規定し、都市施設に関し、同項5号において、「都市施設は、土地利用、交通等の現状及び将来の見通しを勘案して、適切な規模で必要な位置に配置することにより、円滑な都市活動を確保し、良好な都市環境を保持するように定めること。」と規定している。都市計画基準としてこのような一般的かつ抽象的な基準が定められていることからすれば、都市施設の適切な規模や配置といった事項は、これを一義的に定めることのできるものではなく、様々な利益を比較衡量し、これらを総合して政策的、技術的な裁量によって決定せざるを得ない事項ということができる。したがって、このような判断は、技術的な検討を踏まえた一つの政策として都市計画を決定する行政庁の広範な裁量にゆだねられているというべきであって、都市施設に関する都市計画の決定は、行政庁がその決定についてゆだねられた裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したと認められる場合に限り違法となるものと解される。すなわち、都市計画決定の適否を審査する裁判所は、行政庁が計画決定を行う際に考慮した事実及びそれを前提としてした判断の過程を確定した上、社会通念に照らし、それらに著しい過誤欠落があると認められる場合にのみ、行政庁がその裁量権の範囲を逸脱したものということが許されるのである。
 エ 都市計画決定の違法判断の基準時
 (ア)取消訴訟において、問題となる行政処分が違法か否かを判断するに際して、行政処分後に法令あるいは事実状態の変化があった場合には、まず行政庁が第一次判断権を行使すべきであって、裁判所がこれを待たずに処分後の法令あるいは事実状態に照らして処分の違法性を判断することは、行政庁の第一次判断権を侵すものであり、行政処分に対する事後審査という取消訴訟の本質に反すると考えられるから、行政処分の違法判断は、当該処分がされた当時を基準とすべきである(最高裁昭和27年1月25日第二小法廷判決・民集6巻1号22頁、最高裁昭和28年10月30日第二小法廷判決・行裁集4巻10号2316号、最高裁昭和34年7月15日第二小法廷判決・民集13巻7号1062頁参照)。
 したがって、都市計画事業認可の取消訴訟における事業認可の違法判断の基準時は、当該行政庁のした当該事業認可の時である。
 (イ)また、前記のとおり、都市計画事業認可が適法であるというためには、その前提となっている都市計画決定が適法であることも必要であるところ、都市計画についても、都市計画決定後に法令あるいは事実状態の変化があった場合には、都市計画決定自体が行政処分ではないとしても、行政処分と同様に、都市計画決定をした行政庁が第一次判断権を行使すべきであって、裁判所がこれを待たずに都市計画決定後の法令あるいは事実状態に照らして都市計画決定の違法性を判断することが行政庁の第一次判断権を侵すこととなることに変わりはないから、都市計画決定の違法性も、都市計画決定のされた時を基準として判断すべきである。
 (4)本件において違法判断の対象となるべき都市計画決定
 ア 本件において、9号線都市計画は、昭和39年決定以後も、数次にわたって変更の決定がされており、本件各認可の前提として違法性を判断する対象となる都市計画決定がいずれの段階の決定であるかが問題となる。
 イ 法21条1項によれば、都市計画の変更は、〔1〕都市計画区域が変更されたとき、〔2〕法6条1項の規定による都市計画に関する基礎調査又は法13条1項13号に規定する政府が行う調査の結果都市計画を変更する必要が明らかとなったとき、〔3〕その他都市計画を変更する必要が生じたときに行われるものとされ、都道府県知事又は市町村は、上記のような場合には、遅滞なく当該都市計画を変更しなければならないものとされている。そして、上記〔2〕の基礎調査は、法6条1項により、おおむね5年ごとに、建設省令で定めるところにより、人口規模、産業分類別の就業人口の規模、市街地の面積、土地利用、交通量、その他建設省令で定める事項に関する現況及び将来の見通しについて行われることとされている。
 このことは、都市計画は、その実施に至るまで年月を要することも少なくないことから、契機あるごとに全般的な見直しを行ってしかるべきものであることを前提として、おおむね5年ごとに、都市計画の前提となる幅広い事項について基礎調査を繰り返し、最低限その調査が行われる度ごとには、当該都市計画の全般的な見直しを行うべきことを定め、その調査の結果等に基づき必要に応じて遅滞なく都市計画を変更すべきものとして、都市計画の内容がその対象の都市の現状と乖離しないようにすべきことを定めているものと解される。
 しかも、そもそも、都市計画は、当該都市の特質を考慮して当該都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため必要なものを一体的かつ総合的に定めなければならないものである(法13条1項柱書き)ことからすれば、都市計画の一部のみを切り離して見直しをすることは、もとより困難であり、かつ避けるべきものといわざるを得ず、上記の規定の趣旨からしても、ある都市計画について、基礎調査等に基づき何らかの変更をすべき場合には、それが軽易な変更でない限り、これを契機として都市計画全体の見直しをすることが求められているというべきであって、見直しによって、結果的には変更すべき部分が一部であったとしても、それは、当該都市計画全体について総合的な見直しがなされた結果にすぎないのであって、変更後の都市計画は、変更された部分のみならず、全体として新たな都市計画となるものと解するのが相当である。
 法は、都市計画の変更の場合に、軽易な変更の場合を除いて、新規の都市計画決定の場合の手続を準用して(法21条2項)、都市計画の案の公告、縦覧、地方審議会への付議、建設大臣の認可といった手続を行うこととしているのも、上記解釈を裏付けるものということができる。
 ウ 被告は、本件各認可の前提となる都市計画として、本件事業区間の構造を決定したのは昭和39年決定である旨主張する。
 しかしながら、前記2(1)で認定したとおり、昭和60年変更以前の9号線都市計画は小田急線の線増事業のみを内容とするものであって、小田急線の在来線部分の連続立体交差化事業、すなわち、本件鉄道事業が都市計画の内容となったのは昭和60年変更によるものと認められる(このことは、前記2(1)エで認定した昭和60年変更の際の審議会での説明及び昭和60年変更とその直近の昭和45年変更との対比からして明らかである。)。被告の主張は、このような経緯を理解せず、昭和39年決定以来、本件鉄道事業が都市計画の内容となっていたという誤った前提に立つものであって、到底採用できないし、このことは、建設大臣が本件各認可に当たって、その基礎となるべき都市計画の経緯すら正しく理解していなかったことを示すものであって、本件各認可が十分な検討に基づいていないのではないかとの疑念すら生じさせるものである。その上、被告は、原告が既に訴状において都市計画決定の違法を主張していたにもかかわらず、本件訴えの提起以来7年にわたる審理の間、昭和39年決定から平成2年変更に至る都市計画の変遷と個々の変更決定の内容を示す証拠を提出しなかったのであり、これらの資料は、当裁判所が職権によって参加させた参加人から口頭弁論終結間際になってようやく提出されたものである。このような被告の訴訟活動は、本件事案の解明を遅延させるものというべきであり、その行政庁としての地位に照らすと、遺憾というほかない。
 また、前記のとおり、本件要綱によれば、連続立体交差事業調査は、単に鉄道の設計を行うのではなく、広域及び周辺市街地の現状における課題を把握し、連続立体交差事業の必要性を明確にした上で、都市計画の総合的検討を踏まえて関連事業計画、高架下利用計画と一体的に鉄道、側道等の設計を行い、さらに計画の総合的な評価を行うため総合アセスメント調査を行うものであるとされ、前記認定事実によれば、平成5年決定の案の作成に当たっては、上記本件要綱の定めに従って、本件事業区間全体について、連続立体交差化の構造の案の検討を含めて本件調査が行われ、その結果、平成5年決定においては、構造を地表式から掘割式に変更した成城学園前付近以外の区間についても、拡幅等の区域の追加・変更も行われていることが認められ、実際に本件事業区間全体について見直しが行われたものと認められる。平成5年決定時に作成された総括図(〔証拠略〕)も、変更区間を赤色、既定都市計画区間を黒色と区別して表示し、計画図(〔証拠略〕)では、既定計画線を白抜き、計画変更新線を赤色、計画変更廃止線を黄色、構造形式変更区間を青色と区別して表示しつつ、総括図においても計画図においても計画全体を表示しており、かつ、計画書(〔証拠略〕)においては、「都市高速鉄道中第9号線を次のように変更する。」として、変更部分について変更前の内容を括弧書きで示した上で、都市高速鉄道第9号線のすべての線路部分を記載しており、法14条1項が、都市計画は総括図、計画図及び計画書によって表示するものとし、これらの図書が建設大臣及び関係市町村に送付され、公衆の縦覧に供された(法20条1項2項)ことが認められる。
 これらの事実からすれば、平成5年決定は、同決定により9号線都市計画を変更した部分に限らず、9号線都市計画全体を対象とした都市計画決定であるというべきであり、本件各認可の前提となる都市計画は平成5年決定にかかる都市計画決定であると解すべきである。
 (5)平成5年決定の適法性
 平成5年決定の適否については、前記のとおり、都市計画に当たっての行政庁が幅広い裁量権を有することにかんがみると、参加人がその決定の際に考慮した要素及びその判断の内容に社会通念に照らして著しい過誤欠落があるか否かという観点から検討すべきものである。
 そこで、このような観点から、まずアにおいて、平成5年決定の考慮要素の適否(考慮要素に著しい過誤欠落があったか否か)、次にイにおいて、平成5年決定の判断内容の適否(判断内容に著しい過誤欠落があったか否か)について検討する。
 ア 平成5年決定の考慮要素の適否(考慮要素に著しい過誤欠落があったか否か)
 (ア)一般に、都市計画を定めるに当たっては種々の考慮要素があると考えられるが、ある地域について都市計画を定めるには、その前提として、当該地域の現状分析を通じて現在存在する問題点を的確に把握し、その問題点を解決すべき必要性の有無程度を見極め、これを解決すべき必要性が高い場合には、新たに定める都市計画においてこれを解決し得るか否かを十分に検討することが必要であると考えられる。
 平成5年決定については、それに先だって前記2(2)ア及びウで認定したとおりの調査が行われており、この調査によって指摘された事項については平成5年決定においておおむね考慮されていることが認められるが、調査によって具体的に指摘がない事項については特段の考慮がされた形跡はない。
 このことからすると、少なくとも小田急線沿線に既に存在する騒音問題については、その解決が切実な問題であるとは考慮されていなかったことが明らかである。しかし、前記2(8)アないしウで認定したとおり、当時小田急線沿線の多数の住民が騒音による公害が発生しているとして公害等調整委員会に責任裁定の申請をしており、前記2(2)ウ(ウ)bで認定した当時における騒音の測定結果からしても沿線の相当広範囲において新幹線騒音に関する国の基準を大きく上回る値が出ていたのであって、昭和60年には、前記2(8)エのとおり、新幹線の騒音に関して名古屋高裁において受忍限度は73ホンとの判断が示され、同事件は同判断を前提として裁判外の和解がされたことから取下げにより終了していることや、現にその後公害等調整委員会は前記申請について《A》の責任を認める裁定をしたことをも考慮すると、通常の常識人ならば、騒音測定結果からして当時の小田急線は相当広範囲に受忍限度を超える騒音を発生させており、いわば違法な状態を現出しているのではないかとの強い疑念を抱くべきものと考えられる。本件鉄道事業の主たる目的は、踏切の解消による交通の円滑化と鉄道輸送力の増強であり、それによって交通渋滞及び電車内の混雑という問題点が解消されることとなるが、これらの問題は、都市計画上重要な課題ではあるものの、所詮は利便性の問題にとどまるのであり、通常はそれが解消されなくても当不当の問題が生ずるのみで違法の問題が生ずるものではない。これに対し、上記の騒音問題は、都市計画法上の都市施設の一つである都市高速鉄道が違法な状態を現出させている疑いをもたれているのであるから、新たに都市計画を定めるに当たっては、この点をこそ第一に検討すべきものと考えられる。そうであるとすると、小田急線の連続立体交差化を図る際には、この疑念を解消し得るものか否かを検討し、その解消ができない場合には、新たな都市計画においてそのような疑念が生じないような状態を目指すべきものであったと考えられる。
 このような観点から平成5年決定をみると、その際には騒音に違法状態が生じているとの疑念をもって検討した形跡はなく、その結果、その解消の検討や都市計画によってこの点を解決しようとの視点も全く見受けられない。
 したがって、平成5年決定の際の考慮要素には、この点において著しい欠落があったというべきである。
 (イ)その上、平成5年決定の考慮要素には、次のとおり、本件要綱との関係においても疑問がある。
 a 前記1(3)によれば、本件要綱においては、鉄道・側道等の設計は基本設計と概略設計の2段階に分けて行うものとされ、基本設計の段階では、連続立体交差化する区間、経済的かつ合理的な線形、施行方法と併せて、おおむねの構造形式を比較検討するものとされ、事前検討を行った上で周辺の関連事業計画等と調和のとれた比較案を数案作成して比較評価を行うものとされ、比較案の評価に当たっては、経済性、施工の難易度、関連事業との整合性、事業効果、環境への影響等について比較し、総合的に評価して順位を付けるものとされ、その上で、概略設計の段階で、比較案から最適な案を選定して詳細に検討を行い、事業費積算のための設計を行うこととなっている。
 b しかしながら、前記2(2)によれば、本件調査においては、特段の理由も示されないままに設定された設計の基本条件により、極めて狭い範囲の比較案しか検討できないこととなって、何らの検討をするまでもなく、本件事業区間を含む調査対象区間全体の地下化や二層二線式を比較検討の対象とする余地がない結果となったもので、このような基本条件の設定には、証人《H》が連続立体交差事業については原則として高架式で行うものである旨証言するように、地下式を極めて例外的な場合にのみ採用するという基本的な姿勢が伺われるのであって、結果として比較案数案の検討はしているとはいえ、特に、環7・環8間については、既存の高架施設を残すことを基本条件としたために、不自然かつ無理のある比較案しか提示できない結果となったのであり、基本設計の段階では、連続立体交差化する区間、経済的かつ合理的な線形、施行方法と併せて、おおむねの構造形式を比較検討するものとする上記本件要綱の定めに実質的には反しているとの評価をせざるを得ない。
 c また、本件調査を踏まえた平成5年決定の立案においては、計画的条件、地形的条件及び事業的条件の3条件の検討により設計の基礎となる構造形式を嵩上式(一部掘割式)と選択した上で、その構造形式についてのみ環境への影響、鉄道敷地の空間利用等の要素を考慮してもなお特段の問題がないかを検討して嵩上式(一部掘割式)を採用しているところ、その判断手法は上記の本件要綱の定めとは異なっている。すなわち、本件調査においては、計画的条件においては、踏切の除去の可否、駅の移動の有無等の点で主として事業効果及び関連事業との整合性を検討し、地形的条件において、主として施工の難易度を検討し、事業的条件において経済性を検討しているが、この段階では上記のとおり本件要綱の定める環境への影響についての検討が全く考慮の対象外となっており、環境への影響は、上記3条件により構造形式が選択された後に、選択された構造形式に問題があるか否かという形で検討されるにすぎない。
 したがって、その判断手法においては、環境への影響が構造形式を選択する際の比較の要素となっていない点で、例えば、ある程度経済性において劣るが環境への影響の点では抜きん出て優れているといった案を選択の対象から外すこととなるのであって、判断要素としての環境への影響の位置付けが上記3条件よりも劣後することとなる。これは、本件要綱において、設計に当たっては、特に、駅周辺の動線計画、街路網計画、駅前広場計画、高架下利用計画、面的整備計画等と並んで、環境対策に十分配慮を払いつつ行うものとしていること(5―3―3項)等本件要綱が連続立体交差事業の環境に対する影響に十分な配慮を払うべきこととしていることに反する面がある。
 イ 平成5年決定の判断内容の適否(判断内容に著しい過誤欠落があったか否か)
 (ア)環境影響評価の参酌
 本件の環境影響評価によっても高架式には次のような問題点が指摘できるのであって、平成5年決定はこれらに対する考慮が十分でないと考えられる。
 a 鉄道騒音については、工事完了後の鉄道騒音の予測値につき、予測値は当時の現況値を上回る箇所も見られるが、おおむね当時の現況とほぼ同程度かこれを下回っているとしている。この点については、当時の現況値自体の問題性を無視していることは前記のとおりであるが、その点をおくとしても、おおむね当時の現況と同程度以下との判断自体に問題があると考えられる。すなわち、上記の結論は、地上1.2メートル及び3.5メートルの地点での当時の現況値と予測値を比較して得たものであるが、そのような地点においては、高架化によって音源が従来より遠ざかる上、高架橋の両端には高さ1.5メートル程度の側壁が設置されるため、これによって音源と隔てられる関係にあるから、高架化によって騒音が緩和される可能性のあることは、わざわざ調査をするまでもなく予想し得ることである。むしろ、高架化による影響が懸念されるのは、これによって音源に近付き、しかも側壁によって音源から隔てられることも期待できない高さ、すなわち、高架橋の高さ(約5メートルから約8.5メートル)に側壁の高さを加えた地上6.5メートルを超える高さである。このような高さの建物は三階建て以上のものであり、現在沿線の大部分を占める二階建ての建物はこれに至らないものであるが、環境影響評価書の写真(図5.7―3ないし15、281頁ないし305頁)によっても線路近くにこの高さを超える建物が散見されるところであるし、昭和62年の建築基準法21条の改正(昭和62年6月5日法律第66号)以降、軒高9メートルを超える一戸建ての建物が増加しているのは公知の事実であるから、この高さへの影響には無視し難いものがある。そして、本件環境影響調査においても、この点への影響は不十分ながら予測されているのであって、その値は、在来線によるより低い高さへの騒音を大きく上回る激烈なものとなることが予想され、その範囲は、必ずしも明確でないものの、より低い高さでの現況値や予測値の距離に伴う減衰の状況と対比すると、相当広範囲にわたって80デシベルをかなり上回る騒音にさらされるおそれが濃厚であったと考えられる。この点については、事業実施の段階では、構造物の重量化、バラストマット、60キログラム毎メートルレール、吸音効果のある防音壁等の対策を講じ、騒音の低減に努める必要があることが指摘されてはいるが、これらの対策による効果の予測は前記認定のとおりであり、それを加味しても、相当広範囲にわたって違法な騒音被害の発生するおそれは払拭できない。
 これに対し、地下式の場合、その深度にもよるが、鉄道騒音は高架式と比較するまでもないほど低いであろうことは、一般的な常識のみならず、そもそも既存の鉄道の地下化の場合には、高架化の場合(東京都環境影響評価条例施行規則3条別表第1の三(二))と違って、同規則において、そもそも環境影響評価の対象である「その実施が環境に著しい影響を及ぼすおそれのあるものとして東京都規則で定める要件に該当する事業」として挙げられていないことからしても明らかである。
 b 日照阻害については、高架式の場合、高架構造物による日影により、高架構造物からの等時間日影線が規制値を満足しないところが生じることとなり、その対策として、建築基準法及び「東京都日影による中高層建築物の高さの制限に関する条例」に準じ付属街路等の環境空間を設ける必要があり、これが事業的条件に大きな影響を及ぼすことは明らかである。これに対し、地下式の場合に日照阻害が生じるおそれがないことは改めていうまでもない。
 c 電波障害については、高架式の場合、高架構造物の北側において、しゃへい障害が発生すると予測されるとの結論が出ており、その対策として、工事の進捗に合わせ共同受信方式、受信アンテナの改善等、障害の内容及び程度に応じて対策を実施する必要があるが、同対策を施すべき具体的範囲、程度は必ずしも明らかでなく、対応が事後的となるおそれもなしとしない。これに対し、地下式の場合に電波障害が生じることを認めるに足りる証拠はない。
 d 景観について、本件の環境影響評価では、駅周辺部が、現況の雑然とした単なる乗降場としての駅から、街のシンボルとしての駅舎になり、近代的都市景観が出現するとしており、その点には一理あるが、これも駅周辺部分に限ったことであって、駅間の高架構造物にはそうした長所は感じられない。同評価自体、沿道の整備などを含め、周辺環境に融和するように配慮するため、高架構造物の出現による違和感は少ないとも記述しており、高架構造物の出現には基本的には違和感があることを当然の前提としているものとみることができる。これに対し、地下式の場合には、駅を全く地下化することも可能であるほか、駅舎建物を地上に置くことも可能と考えられ、住民の評価に沿った対応が可能であるほか、駅間については、既存の鉄道が見えなくなったからといって景観において問題となるような違和感が生じるとは考えにくく、沿線地域を分断することなく、心理的な圧迫感も生じさせないという意味においては、地下式が優位であると評価できる。
 e このほか、地下化により生じた土地・空間については、本件調査において求められているオープンスペースや避難所、緑地への活用も、高架下の土地・空間よりもより柔軟な活用が考えられる。
 以上のような点からすれば、この環境影響評価の内容の当否をさておいて、同評価の結果を前提としたとしても、高架式には、地下式であれば考慮の必要のないような環境への悪影響が予測されているのであって、この点における地下式の優位性は明らかであり、これと逆の結論を導くことは、社会通念に照らしても誤りというほかなく、この点において平成5年決定の判断内容には著しい過誤があるというべきである。
 (イ)計画的条件の検討内容
 本件調査は、計画的条件の検討に当たって、下北沢区間につき、連続立体交差化に当たっていかなる構造を採用すべきかについてはなお慎重な検討を要するものとした上、当時の状況である地表式を所与の前提として計画的条件を検討している。
 しかしながら、連続立体交差事業を行う以上は地表式を維持することはあり得ず地下式又は高架式を採らざるを得ないところ、当時から高架式を採用するには井の頭線との交差の関係から下北沢駅付近で一般的な高架橋より12ないし15メートル高くなるため、環境面で不利となるとの問題があると指摘されており、その後の事情ではあるが、本件口頭弁論終結時には下北沢区間について地下式が採用される見込みであり、その理由としては高架式に上記の問題点があることが指摘されているにとどまることが認められること(〔証拠略〕)からしても、本件調査の当時においても、将来的に下北沢区間につき地下式が採用される可能性は十分考慮すべきだったということができ、この区間が地表式のままであることを所与の前提としたことは誤りというべきである。そうであるとすると、本件事業区間について地下式を採用した場合に踏切の除却や駅の移動が必要となるとの結論を必然的に導き出すことはできないはずであって、本件事業区間につき、計画的条件において高架式が優位であるとはいえなかったのである。
 (ウ)地形的条件の検討内容
 本件事業区間につき地下式を採用した場合に、9号線が仙川と烏山川の下部を通過することとなって、その分深度が深くなり、地下式の中でも二層二線シールド工法を採用した場合の急行線についてはさらに深度が深くなるとしても、本件事業区間に接続する区間との接続において特に問題がなければ、深度が深いこと自体が地形的条件において問題となるものとは考えられず、深度が深くなることに伴う事業費の増加については事業的条件において検討すれば足りることであって、その他に、地形的条件において、地下式の採用につき地下水脈の問題等があることは指摘されていない。かえって、本件事業区間において高架式を採用した場合で、下北沢区間を地下式にした場合には、計画的条件における問題を生ずることが指摘されているのであって、地形的条件においても、本件事業区間において高架式が地下式よりも優位であるとはいえず、むしろ、下北沢区間の地下化を考えれば、本件事業区間についても地下式を採用する方が地形的条件における問題がないといえる。
 (エ)事業的条件の検討内容
 地下式の事業費の算定につき《C》教授案において具体的かつ専門的な対案の提示があり、同案については、ホームの幅の見積が狭すぎる等の問題があってそのままでは採用できないとしても、地下式に関する東京都の考え方を前提として地下式につき改めて算定することも可能であったと考えられ、実際に、基礎となる数値を東京都の提示するものを基本的に採用した上で、地下化により生ずる地上部分の遊休土地を一定の受益として換算し、高架化の場合についても北側側道及び高架下利用分の受益を換算する手法による事業費の比較においては、地下化の場合の投資額が1377億円となるのに対し、高架化の場合には2038億円となるという意見(〔証拠略〕)も出され、算定の方法にもよるが、現在の鉄道敷きの有効利用を含めて考えた場合、地下式の方が経済的に有利となることもあり得るという示唆があり、かつ、都営地下鉄12号線(大江戸線)については、昭和59年8月9日に練馬と光が丘の間の区間について都市計画の変更決定がされたが、その時点で既に駅間においては主としてシールド工法が採用され、その後も、上記以外の区間についても主としてシールド工法により地下鉄工事が進められた(〔証拠略〕)ように、シールド工法による地下化は本件調査の時点でも相当程度普及していたものと認められる上、当時既に地下式で着工されていた京都市営地下鉄東西線の場合は、事業費も高架式と変わらない程度のものであったことがうかがわれること(〔証拠略〕)からすれば、地下式の事業費の算定及びそれと高架式の事業費の比較検討に当たっては、より慎重に地下式、特に二層二線シールド方式による事業費の算出を行ってしかるべきであったといえる。特に東京都の検討においては駅部分については開削式を採らざるを得ないとの前提の下に、相当多額の試算をしているが、上記京都市営地下鉄と同時期に施行されていた大阪市営地下鉄の場合には駅部を含めてシールド方式が用いられていること(〔証拠略〕)からすると、東京都の検討内容には大いに疑問がある。
 また、東京都の高架式の事業費の算定に当たっては、昭和63年より前に既に買収していた土地の用地取得費を積算の対象外としているが、本件調査の時点であるいは平成5年決定の時点で既に買収済みであった土地については、これが東京都が取得したものであれ、《A》又は日本鉄道建設公団が取得したものであれ、地下式の採用により不要となる部分があれば、これを売却等により処分することが可能となるのであって、本件において、買収された土地には、本件の原告らの一部の場合のように、買収前は居住用不動産として所有ないし利用されていた土地が少なからず含まれていたのであるから、売却等の処分の可能性が非現実的なものであるとはいえず、地下式の場合の事業費の検討に当たっては、既に買収した土地で地下式の採用により不要となる土地の処分により収入を得ることの可能性等についても、検討すべきであったし、地下式を採用した場合に必要となる土地についても、その地上部分の利用価値は高架式を採用した場合の高架上下部分の利用価値を大きく上回ると考えられるから、仮に事業費自体について高架式が優位であったとしても、これらの点を減殺した上でその優位さがどの程度のものかを慎重に検討する必要があったというべきである。それにもかかわらず、参加人が、平成5年決定をするに当たって、地下式を採用した場合に地上部分が利用可能となることにつき全く考慮していないことは、参加人も自認するところである(被告は、この点について地下式を採用した場合の地上部分と高架式を採用した場合の高架上下部分の利用価値は等価であるとも主張しているが、このような主張が著しく社会通念に反することは言を待たないところであろう。)。こうした点からすれば、事業的条件においても、高架式が地下式よりも優位であるとは必ずしも言い難いし、仮に高架式が優位であったとしても、それがどの程度のものかは明らかでなかったといわざるを得ない。しかるに、事業費の優位性は、前記2(2)カ(ウ)で認定したとおり、平成5年決定に至る審議において相当重視されており、前記2(6)イで認定したとおり、事業認可の直前においても建設大臣がこの点をめぐって東京都と住民との話合いを示唆したことからも明らかなように、この点は、常識的にみても工事方式を決定するに当たって、先に指摘した騒音問題を除くと、最後の決め手ともいうべき重要な要素と考えられるのであるから、この点について、参加人が平成5年決定の前提として認識していた事実に誤り又は疑問があることは、それだけでも同決定の適法性に疑問が生ずるものといわざるを得ない。
 なお、前記2(2)イで認定したとおり、東京都においては、二線二層方式を採用しなかった理由として、〔1〕利用者の便宜を考慮すると同一方向の急行線と緩行線を同一平面で乗換可能なものとする必要があることを挙げ、また、前記2(6)イで認定したとおり、東京都と沿線住民らとの話合いで、《C》教授案の二線二層シールド工法では、〔2〕ホームの幅が十分でないこと、〔3〕経堂駅における準急線と緩行線の乗換、〔4〕列車の運行上必要である経堂駅付近の留置線・保守線の使用の2点ができない旨指摘されている。このうち、〔1〕の点については、上記京都市営地下鉄東西線において採用されたねじれ式のシールド工法を用いれば、原則的には急行線と緩行線とを別の層としつつ、急行線停車駅においてのみ同一方向の急行線と緩行線を同一の層(同一平面)とするように施工することが可能であるから、この工法の採用を検討すべきであったと考えられる。また、〔2〕ないし〔4〕については、上記大阪市営地下鉄で採用され駅部にも用いられた3連型のシールド機を用いる工法では横断面最長幅17メートルを確保することが可能であるから、これに類する大規模なシールド機を用いることにより、十分なホーム幅を確保しうるか否か、経堂駅付近において緩行線を準急線と緩行線の2系統に分岐することや通常の走行線に加えて保守線を設けることが技術的に可能であるか否かを検討すべきであったし、それが技術的に困難であるとしても、経堂駅付近において、急行線はシールド工法による地下式を採用しつつ、緩行線のみを開削工法により部分的な四線一層とすることにより、準急線と緩行線の乗換を同一平面において可能とするとともに、既存の留置線・保守線につなげることも可能だったと考えられる。さらに、〔3〕及び〔4〕の点は、そもそも、従来の運行方式を前提とする検討であって、複々線化後にもこれを継続しなければならない具体的な事情が全く明らかにされていない以上、この点を地下式を採用しない理由として考慮することは困難である。
 (オ)判断内容の過誤
 以上からすれば、平成5年決定において高架式を採用するに至る判断内容には、環境影響評価の参酌の点のみをとらえても、著しい過誤があった上、その他の3条件の検討内容のいずれにも看過し難い疑問があったというほかない。殊に、高架式採用に当たって特に重視されたと思われる事業費の算出に当たっては、より慎重な検討を行えば、地下式と高架式の差は当時参加人が予想していたほどのものではない可能性が十分にあったことは、上記判断内容の適否を考えるに当たって無視できないものというべきである。
 ウ 平成5年決定の適法性
 したがって、平成5年決定については、社会通念に照らして、その判断要素に著しい欠落があり、その判断内容にも著しい過誤があったと認められるから、それが技術的な検討を踏まえた一つの政策として都市計画を決定する行政庁たる参加人の広範な裁量にゆだねられている事項についての判断であることを前提としても、なお、ゆだねられた裁量権の範囲を逸脱したものというほかなく、参加人のした平成5年決定は違法なものといわざるを得ない。
 (6)本件各認可の違法性
 以上によれば、本件鉄道事業認可自体については、その基礎となる都市計画決定の経緯を理解せず、確たる根拠に基づかずに事業施行期間の適否を判断するなど、十分な検討に基づいて行われたか否かすら疑わしいし、事業認可申請書中の事業地の表示が本件鉄道事業の事業を行う土地の範囲を正確に表示せず都市計画決定とも一致していないにもかかわらず、これを看過したこと、及び事業施行期間についての判断にも不合理な点があることの2点において、法61条に適合しないものである。次に、本件各認可の前提となる都市計画決定(平成5年決定及びこれと一体をなす本件各付属街路都市計画)に当たっての考慮要素には、その当時の小田急線には騒音の点において違法な状態が発生しているのではないかとの疑念が生じる状態であったにもかかわらず、この点を看過し、この疑念を解消し得るものか否かや、それが解消し得ない場合には新たな都市計画によってその解消を図るという視点を欠いていた点において、その著しい欠落があった。また、都市計画決定に当たっての判断内容については、第1に、高架式を採用すると相当広範囲にわたって違法な騒音被害の発生するおそれがあったのにこれを看過するなど環境影響評価を参酌するに当たって著しい過誤があり、第2に、本件事業区間に隣接する下北沢区間が地表式のままであることを所与の前提とした点で計画的条件の設定に誤りがあり、第3に、地下式を採用しても特に地形的な条件で劣るとはいえないのに逆の結論を導いた点で地形的条件の判断に誤りがあり、第4に、より慎重な検討をすれば、事業費の点について高架式と地下式のいずれが優れているかの結論が逆転し又はその差がかなり小さいものとなる可能性が十分あったにもかかわらず、この点についての十分な検討を経ないまま高架式が圧倒的に有利であるとの前提で検討を行った点で事業的条件の判断内容にも著しい誤りがある。
 これらのうち、当時の小田急線の騒音が違法状態を発生させているのではないかとの疑念への配慮を欠いたまま都市計画を定めることは、単なる利便性の向上という観点を違法状態の解消という観点よりも上位に置くという結果を招きかねない点において法的には到底看過し得ないものであるし、事業費について慎重な検討を欠いたことは、その点が地下式ではなく高架式を採用する最後の決め手となっていたことからすると、確たる根拠に基づかないでより優れた方式を採用しなかった可能性が高いと考えられる点において、かなり重大な瑕疵といわざるを得ず、これらのいずれか一方のみをみても、優に本件各認可を違法と評価するに足りるものというべきである。したがって、以上の諸事情を考慮すると、本件各認可については、その余の点を判断するまでもなく違法であるといわざるを得ない。
 (7)行政事件訴訟法31条1項適用の可否
 当事者双方から特に主張はないが、本件各事業のもつ社会的影響力にかんがみ、念のため、行政事件訴訟法31条1項適用の可否について検討する。
 〔証拠略〕によれば、本件事業区間において、在来線である従来の9号線を存置したまま、本件線増事業の高架橋工事は、用地取得済みの箇所について進められており、既に一部区間は完成していて、平成12年4月の時点では本件事業区間の約5割について線増部分の高架橋工事が完成しており、完成区間から順次在来線を完成した線増部分の高架橋に切り替えていて、祖師ヶ谷大蔵駅付近については平成12年4月に、経堂駅付近については同年6月に高架橋への切替えが行われていることが認められるところ、本判決が確定し、本件各認可を取り消すこととなっても、本判決の効力として、本件各認可に基づいて実際に行われた工事の結果につき、行政庁が一般的にこれを除去すべき原状回復義務や工事を差し止めるべき義務を負うものではない。
 もっとも、例えば、公有水面法35条が埋立免許の効力が消滅した場合に工事施工者に原状回復義務が発生することを規定しているように、公法上又は私法上の特別の規定の効果として一定の原状回復義務が発生することはあり得るから、本件につき、都市計画事業の認可が取り消された場合についての実体法の定めについて検討するに、法において、都市計画事業の認可が取り消された場合に、同事業に係る工事施工者等に原状回復義務を負わせるような規定は存在しない。都市計画事業の施行に当たっては、都市計画事業につき法の認可がされ、その告示がされた場合には、施行者は、収用し又は使用しようとする土地が所在する都道府県の収用委員会に収用又は使用の裁決を申請することができる(土地収用法39条1項)などの土地収用法上の効果が生じ(法69条、70条)、施行者がこれらの手続により都市計画事業に必要な土地の所有権を取得することがあり得、また、都市計画事業の施行者が、法の定める先買い権(法67条)を行使することにより、さらには、事業区域内の土地所有者から買取請求権(法68条)を行使されることにより、事業に必要な土地を取得している場合があり得るところ、これらの場合には、都市計画事業の認可が取り消された場合に、既になされた土地取得の手続に法的影響が及ぶと考える余地がないではないが、本件各事業の施行に当たっては、そのような手続により土地が取得されたことはうかがわれないから、この点でも、本件各認可の取消しにより、既になされた土地の所有権の移転やそれを前提とした工事の結果等につき、直ちにこれを覆滅したり、原状回復義務を生じさせるような法的効果が生ずるものとは認められない。また、本件においては、その他の関連法規についても、認可に基づいてなされた工事の結果の原状回復義務といった法的効果を発生させる法律上の根拠を見い出せない。
 したがって、本件各認可が取り消されても、その手続自体又はそれに必要な公金の支出に関与した公務員が何らかの意味で責任を追求されるなどの可能性はないでもないが、これにより、既になされた工事について原状回復の義務等の法的効果が発生するものではなく、その他本件各認可の取消しにより公の利益に著しい障害を生ずるものとは認められないから、本判決において、本件各認可が違法である旨の判断をするに当たり、行政事件訴訟法31条1項により別紙原告目録1記載の原告らの請求を棄却すべき場合であるとは認められない。

 第4 結論
 以上の次第で、本件訴えのうち、別紙原告目録2記載の各原告の訴えはいずれも不適法であるからこれを却下することとし、その余の原告らの訴えにかかる本訴請求は理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、65条1項本文、66条を適用して、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 藤山雅行 裁判官 村田斉志 廣澤諭)


 〔別紙 事業目録1〕
 1 施行者の名称
  東京都
 2 都市計画事業の種類及び名称
  東京都市計画都市高速鉄道事業第9号線
 3 事業計画の概要
 (1)事業地
  収用の部分 東京都世田谷区喜多見九丁目、成城二丁目、成城三丁目、成城四丁目、成城五丁目、成城六丁目、砧六丁目、砧八丁目、祖師谷一丁目、祖師谷三丁目、桜丘五丁目、船橋一丁目、経堂二丁目、経堂三丁目、経堂四丁目、宮坂二丁目、宮坂三丁目、豪徳寺一丁目、梅丘一丁目、代田三丁目及び代田四丁目地内
  使用の部分 なし
 (2)設計の概要
 ア 延長 5666メートル
 イ 幅員
 (3)事業施行期間 平成6年6月3日から平成12年3月31日まで

 〔別紙 事業目録2〕
 1 施行者の名称
  東京都
 2 都市計画事業の種類及び名称
  東京都市計画道路事業都市高速鉄道事業第9号線付属街路第3号線
 3 事業計画の概要
 (1)事業地
  収用の部分 東京都世田谷区祖師谷一丁目及び祖師谷三丁目地内
  使用の部分 なし
 (2)設計の概要
 ア 延長 620メートル
 イ 幅員 6ないし12メートル
 (3)事業施行期間 平成6年6月3日から平成12年3月31日まで

 〔別紙 事業目録3〕
 1 施行者の名称
  東京都
 2 都市計画事業の種類及び名称
  東京都市計画道路事業都市高速鉄道事業第9号線付属街路第4号線
 3 事業計画の概要
 (1)事業地
  収用の部分 東京都世田谷区桜丘五丁目地内
  使用の部分 なし
 (2)設計の概要
 ア 延長 30メートル
 イ 幅員 6メートル
 (3)事業施行期間 平成6年6月3日から平成12年3月31日まで

 〔別紙 事業目録4〕
 1 施行者の名称
  東京都
 2 都市計画事業の種類及び名称
  東京都市計画道路事業都市高速鉄道事業第9号線付属街路第5号線
 3 事業計画の概要
 (1)事業地
  収用の部分 東京都世田谷区船橋一丁目、経堂三丁目及び経堂四丁目地内
  使用の部分 なし
 (2)設計の概要
 ア 延長 650メートル
 イ 幅員 6ないし9メートル
 (3)事業施行期間 平成6年6月3日から平成12年3月31日まで

 〔別紙 事業目録5〕
 1 施行者の名称
  東京都
 2 都市計画事業の種類及び名称
  東京都市計画道路事業都市高速鉄道事業第9号線付属街路第6号線
 3 事業計画の概要
 (1)事業地
  収用の部分 東京都世田谷区経堂二丁目及び経堂三丁目地内
  使用の部分 なし
 (2)設計の概要
 ア 延長 100メートル
 イ 幅員 6メートル
 (3)事業施行期間 平成6年6月3日から平成12年3月31日まで

 〔別紙 事業目録6〕
 1 施行者の名称
  東京都
 2 都市計画事業の種類及び名称
  東京都市計画道路事業都市高速鉄道事業第9号線付属街路第9号線
 3 事業計画の概要
 (1)事業地
  収用の部分 東京都世田谷区宮坂二丁目及び豪徳寺一丁目地内
  使用の部分 なし
 (2)設計の概要
 ア 延長 210メートル
 イ 幅員 7.5ないし8メートル
 (3)事業施行期間 平成6年6月3日から平成12年3月31日まで

 〔別紙 事業目録7〕
 1 施行者の名称
  東京都
 2 都市計画事業の種類及び名称
  東京都市計画道路事業都市高速鉄道事業第9号線付属街路第10号線
 3 事業計画の概要
 (1)事業地
  収用の部分 東京都世田谷区梅丘一丁目地内
  使用の部分 なし
 (2)設計の概要
 ア 延長 220メートル
 イ 幅員 7ないし9.5メートル
 (3)事業施行期間 平成6年6月3日から平成12年3月31日まで

 別紙 本件各付属街路都市計画目録
 (1)東京都市計画道路・区画街路都市高速鉄道第9号線付属街路第3号線
   起点 世田谷区祖師谷三丁目
   終点 世田谷区千歳台一丁目
   主な経過地 世田谷区祖師谷一丁目
   延長 約1250メートル
   構造形式 地表式
   幅員 6.0メートル
 (2)東京都市計画道路・区画街路都市高速鉄道第9号線付属街路第4号線
   起点 世田谷区桜丘五丁目
   終点 世田谷区桜丘五丁目
   延長 約370メートル
   構造形式 地表式
   幅員 6.0メートル
 (3)東京都市計画道路・区画街路都市高速鉄道第9号線付属街路第5号線
   起点 世田谷区桜丘五丁目
   終点 世田谷区経堂三丁目
   主な経過地 世田谷区経堂四丁目
   延長 約1090メートル
   構造形式 地表式
   幅員 6.0メートル
 (4)東京都市計画道路・区画街路都市高速鉄道第9号線付属街路第6号線
   起点 世田谷区経堂三丁目
   終点 世田谷区経堂三丁目
   延長 約100メートル
   構造形式 地表式
   幅員 6.0メートル
 (5)東京都市計画道路・区画街路都市高速鉄道第9号線付属街路第9号線
   起点 世田谷区宮坂二丁目
   終点 世田谷区梅丘一丁目
   主な経過地 世田谷区豪徳寺一丁目
   延長 約920メートル
   構造形式 地表式
   幅員 6.0メートル
 (6)東京都市計画道路・区画街路都市高速鉄道第9号線付属街路第10号線
   起点 世田谷区梅丘一丁目
   終点 世田谷区梅丘一丁目
   延長 約220メートル
   構造形式 地表式
   幅員 7.0メートル
               以上
 〔物件目録〕略


A1 自治体の例規

A2 自治体の情報

B1 国の法令類

B2 国の情報

C 行政関係判例

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